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「千房(CHIBO)は愛(I)が中心です。」前編 対談者:千房 代表取締役 中井 政嗣様

皆さまこんにちは!ヒューマングループnote 編集担当 朝永です(^-^)

今回のヒューマントークは、大阪のお好み焼きを全国展開されている千房の中井政嗣様との対談をお送りいたします!

まずは中井様と弊社 社長内海との出会いからご覧ください。

中井社長との出会い

中井社長との出会いは、1989年10月に京都で石川洋先生の会でお会いしました。お好み焼きの千房の社長・・・創業者として風格が漂っていて、とにかく話が面白い・・・。ご縁をいただき、大阪に出張するたびにお会いしました。

このトークの出だしで、ピンチはチャンスというけど、ピンチはピンチなんだ・・・。波乱万丈の人生を歩まれた師に間違いありません。

皆さん機会があれば・・・千房のお好み焼き食べに行ってください。

※対談の本文は、2009年8月にヒューマンニュースレターに掲載したトークを当時の文章で掲載いたします。

「千房(CHIBO)は愛(I)が中心です。」前編

note ノート 記事見出し画像 アイキャッチ (18)

千房 代表取締役 中井 政嗣 様
ヒューマングループ 代表取締役 内海 和憲

内海:中井社長との初めての出会いは、今から20年前、1989年10月、京都での石川洋先生の会での席でした。それ以前に、中井社長の本「無印の人間でも社長になれた」を読んで、福岡の千房に行ってお好み焼きを食べたりして、中井社長にぜひ一度お会いしてみたいと思っていましたので京都でお会いできたときは嬉しかったですね。

あれから20年も経ちますが、その間、中井社長は色々なアクシデントが起きながらも、そのたびに強い力を発揮されて頑張ってこられたお姿を拝見させていただき、創業者の強みというのをとても感じました。
今日はその辺のマネージメントマインド(経営の心得)などをお聞かせいただけますか?

中井:そうですね、過去二回大きな倒産寸前を経験しましたね。「ピンチはチャンス」やいうけれども、あんないい加減な言葉はないとその時に思いました。ピンチは誰がなんて言うたかてピンチですわ。ただそのときはやっぱり今の現状ではまったくあかんと思いましたね。まさに、「変」と「チェンジ」ですね。ピンチはあくまでもピンチであって、チェンジしてそこでチャレンジせなあかんかったですね。結果的にそれを克服したときに、それがチャンスやったんやとあとで分かるんです。あの時克服してなかったらピンチはピンチで終わっていたんやなって。

人それぞれ自分の人生ドラマがあります。自分の個人の人生ドラマもあるし、会社のドラマもあるわけです。経営者というのは、会社=自分、経営そのものが自分の人生ですね。自分の人生をドラマ化(映画化)したその中でドンドンピンチになっていくわけですね、見ているお客様にとっては、一番はらはらどきどき、どうなんのやろって・・・。言ってみたらそのドラマの一番おいしいところなんです。ええとこなんです、クライマックスなんです。そのときに、不平不満、愚痴こぼして文句言ってるそんな主人公を見ていて、お客さんはおもしろいですか?能力があるとかないとかに関わらず一生懸命やっている姿に、周りは頑張ってほしいな、って思うわけですね。

このことが、目に見えない後押しをしてくれましたね。坂道を荷車で登っていく時、「誰か押してくれへんかな?」と思ってあてにしてて下でじっとしてたかて誰も押してくれませんね。「押して押して」って言っても「なんで押さなあかんの」ってなことになるんですね。でも一人で、あるいは嫁さんと子供も入れてそれこそ一生懸命坂をのぼっていく、荷車を引っ張っていくこの姿に、周りが知らず知らずに一人二人とみんなが一緒に押してくれる。こういうことは結果的にたくさんありました。ですからピンチになればなるほど、僕は不思議と俄然ファイトが沸いてくるんです。「今ええとこやんか」、「今ここ見せ場やんか」って自分で言って…。

だけど周りははらはらドキドキみたいですけどね。「中井社長はなんでノー天気なんですか」って会社でもよう言われるんですが、でも、「結果的にはすごい運の強い人なんですね」と言われますね。結果的にそうなっていくんで、確かに運は強いと思います。ただくよくよして、文句言って愚痴こぼして、ぼやいて良くなるんだったら、私は誰にも負けません。でもそんなこと言うたかて、何にもならないわけですから、むしろケセラセラ。やることやって「あかんかったらええやんか~!」。心残りはありますけど、悔いのない生き方をしたいですね。

人の誕生というのは予定日がありますから予知できます。でも人の死だけは予定日がないんですね。若いから健康だから長生きするとは限らない。年いってるから、病気しているから早く死ぬとも限らない。いつお呼びがかかっても嫌だとは言ってられないですね。逝かなあかんわけです。だから心残りはあるけども悔いのない生き方をしとかなあかん。毎日毎日を一生懸命生きていくことが大事やねんな。そしてあくる日突然死んだなら、それはもう仕方がないことやんな。あきらめるという言葉がありますが、「あきらめる」という語源を調べましたら、「あきらかにして極めたことをあきらめる」と書いています。

つまり、親が死んだ、これはあきらかで極めたんやから、もうどないも仕方がないことですね。これを「あきらめる」と言うんです。あきらかにもしないで、極めもしていないのに「あきらめる」はないんです。これは「挫折」なんです。やることをやってあかんかったらあきらめがつく、これは悔いがないってことなんです。悔いがないってことはあきらめるってことに繋がるんです。自分の寿命と一緒ですね。やることやってあとは神様にまかせる。丸投げ。だから意外とすっきりしていますね。

私は毎日毎日精一杯生きてきましたから、悩んで悩んで悩みぬいて寝られへんということはなかったですね。どんなピンチのときでも布団に入ったら、「なんて幸せなんやろな、ありがたいな」と思うんです。すぐにスーッと寝れます。朝起きたら別に状況は変わってないんですが、なんか希望がわいてくるんですね。それと、悩みにぶちあたったとき、必ず、必用な時に必要な人がちゃんと前に現れてる。あるいは現れる。解決する人は身近におると信じていたので、「身近に…誰やろ、誰やろ」といつも思っていました。「ああやっぱり身近にいてた」ということはたくさんあります。一番ピンチだった倒産寸前のときのことですが、僕が理事長理事長と大事にお付き合いさせていただいてました信用組合の理事長さんの息子さんが偶然来られてまして、「今どんな仕事していらっしゃるんですか」と聞きましたら、「会社を再生する仕事をしてんねん!」「・・・。それやったらうちの会社みてくれませんか?」と言って、見てもらうことになりました。そこからとんとん拍子に話が進みましてファンドなどそのへんの仕組みも全部お膳立てしてもらいました。だから必要な時には必要な人が身近にいてるんですね。

内海:それは偶然ですか。

中井:そうです。偶然です。だけど解決するまで3年かかっていますね。もう6年前の話です。そういう過去があったから今の千房の展開へと繋がっていくんですが、非行少年・少女を採用するときに、「うちは過去は問わない。なぜならば過去は変えられへんから。でも自分と未来は変えられるやんか。過去の栄光を夢みたところで、今はそういう時代とは違うから、今何をせなあかんの?」って良く言います。未来は変えれるんです。同業者のお好み焼きやで全国チェーン展開されているお店がたくさんでてきました。僕はそれを見ながら、僕らの本当の仕事って言うのはなんやろう。店の数が全てと違うねん、売上がすべてとは違うねん、儲かればいいというもんでもないねん・・・。

新入社員の研修で、「千房は社会に貢献しているんでしょうか?どうですか?お好み焼きを食べなければ死にますか?お好み焼き食べたらなんか儲かりますか? 儲かりも死にもせんような、こういう会社が社会に貢献しているんでしょうか?ほんまのこと教えてください」と聞くんですね。全員が「貢献していない」といいますね。「社会に貢献しないようなそんな会社によう入社されましたね、あなたの勇気に私は敬意を評します」と答えます(笑)。でも、社会に貢献していないお店に、年間300万人のお客様の来客数がある、これはどないことなん、これは何かでやっぱり貢献しているんでしょうね。

われわれ外食産業の目的っていうのは、モスバーガーの創業者が言っておられた言葉ですけれども、「明日への活力の再生産の場」、これが外食産業なんですね。やるぞーという非日常空間を提供するんです。料理にうまい・まずいはないんですね。「千房さん味いかがですか?」「いやわからへん。」「自信ないんですか?」「いや持ってます、でもわからへん。」「なんでですか?」「あんたの口がわからへんから!」なんぼおいしいと自信持って出してもお客さんがまずいと言ったらまずいんですね。つまりその人の口に合うかどうかなんですね。

例えば10人いらっしゃったら、究極の味を極められている方が2割、何食べてもうまいっていう味音痴の方が2割。あと6割が普通の方なんですが、ここで味を極めている2割の方の意見を聞きすぎると味はガタガタになります。味音痴2割の方と普通の方6割で支持される味がいいんですね。むちゃくちゃうまい味つくったらあかん。このむちゃくちゃうまい味つくったらあかんというのは実は逆に採算がとれないんです。材料にこだわっていたり水になんやかんやこだわりすぎるとそれにこしたことはないのですが、微妙に違うのは違います。でもこの違いは素人にはわからないんです。
われわれは素人を相手にするんです。創業当時、設計士に設計をしてもらったのですが、図面を見ながら「これはあかんで~こういうふうにしたほうがええでぇ~」と私がアドバイスしてたんですね。そしたら設計士が、「中井社長これはどない考えてもだめです。これがいいです」と言うんですね。でも「ちゃうなあ」と僕は反発するんですね。そうしたら設計士が「中井社長申し訳ないんですが、中井社長は素人です。私はプロですから任せといて下さい、大丈夫ですから」といったんですね。

普通だったら「ああそうかそんなら任せておこう」となるんですけれども、私は「いいや!ちゃう。任したらいかん。うちはどんなお客さんが来てはるか知っている?うちはプロのお客さんが来てはると違うねん、うちは素人のお客さんを対象にやってんねん。あなたみたいな設計のプロばかりきはるのと違いますよ。素人が好むようなお店を作らなあかん。私はお客さんを代表してお客さんの声として言っているんです。私がオーナーやから、社長やからで言っているんではないです」と言うことで設計を訂正させていただいたことは何度もあります。妥協できることと、できないことがあります。妥協できることに関しては、素人か玄人か、徹底的に素人でいきたいですね。
私は経営者であっても、社長であっても、徹底的に社長であると同時に一人の人間として生きたい。たまたま社長しているだけであって、ひとりの中井政嗣という人間、この人間の感性であり、生き方であり、これが千房という会社をひとつの道具として表現しているということだけですね。千房は、ハラハラドキドキ波瀾万丈の会社です。そういう会社だから、テレビ東京のカンブリア宮殿や、NHKの番組に登場させてもらったんですね。ただ単なるお好み焼き屋ではないんですね、生き方なんです。生き方がクローズアップされたんだと思います。

(後編に続く)

中井 政嗣氏 プロフィール
千房株式会社 代表取締役
株式会社ナカイコーポレーション 代表取締役
昭和20年奈良県生まれ。中学卒業と同時に乾物屋の丁稚奉公に出る。
昭和48年お好み焼き専門店「千房」開店。大阪のお好み焼きを全国展開、海外にも出店。昭和61年40歳にして高等学校卒業。自身の体験を踏まえた独特の持論で社会教育家として注目を集め、全国各地で講演を行う。平成20年6月、テレビ東京「カンブリア宮殿」にて「部下を必ずやる気にさせる人材育成術教えます」が放送され、大反響を得る。
著書:できるやんか!(潮出版)

朝永のつぶやき

最後まで読んでいただきありがとうございます!ここからは担当が今回のトークを読んだ感想をまとめたプチコーナーです(*^o^*)

今回は全国的に展開されているお好み焼きチェーン店「千房」の代表取締役 中井 政嗣様とのトーク前編をお送りいたしました。

中井様の波瀾万丈な経験談は読んでいるだけでもハラハラドキドキとした様子が伝わってきましたね!

私は今回のトークを読んでいて、中井様の「徹底的に素人でいきたい」という言葉がとても心に残りました。

どうしても専門的な知識や技術が身に付いてくると、その力を身につける前の感じ方や悩みを忘れてしまいがちですよね…。こうした方がいいのに、なぜしないんだろう。とつい今の自分と同じ目線で考えてしまいます。

お客様だけでなく人に何かを伝えるときは、自分目線でなく相手目線で考えなければいけない。いつまでも初心を忘れてはいけないと感じました!

それでは今回はこの辺で!また次回お会いしましょう♪

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