選ばれる側・呼ばれる側だけではなく、選ぶ側・呼ぶ側になること

6月初めから中頃までフランスで行われたトゥーロン国際大会において日本代表U22チームが準優勝という結果に終わりました。最後の決勝はブラジル相手にPK戦の末の敗戦でしたので惜しかったですが、過去最高の結果ということで一定の評価は出来るでしょう。

第47回トゥーロン国際大会 2019
https://www.jfa.jp/national_team/u22_2019/toulontournament_2019/schedule_result/

このトゥーロン国際大会というのはそれほど「格の高い」大会ではありません。サッカーの世界では、ワールドカップ・大陸別選手権・オリンピック・年代別ワールドカップなどに比べると一般的な知名度は劣ります。しかし、1967年から行われているそうですので、サッカーファンには意外と知られている大会です。日本代表は2000年から参加し、2001年からはU21やU22などの代表を派遣しています。

しかし、今年は例年になく日本において注目された感があります。NHKがBS1で全試合生放送しましたので、見ていた人も結構な数になるのではないでしょうか。以前は生放送なんてなかったと思うのですが。コパ・アメリカをどのテレビ局も放送できないことの埋め合わせ的な感じなんですかね?

スポーツのテレビ放送の終わりの始まり
https://note.mu/hrsgmb/n/n2e64b1f899ce

先日上記投稿にも書きましたが、コパ・アメリカはサブチャンネルでの放送もしないのに、トゥーロン国際大会を放送するというのもなんかバランスが取れてない気もしますが・・・。

それはともかく、アンダー世代の有望選手は同じくこの6月に行われたU-20W杯と、行われるコパ・アメリカの代表に結構持っていかれていますので、このトゥーロン国際大会に参加した代表選手は結構あまりなんというか目立たないというか控え的なBチーム的なというと語弊があるかも知れませんが、大会前には正直そんなに注目されていなかったようなメンバーでした。いわば事前予想を覆すような成績でした。コパ・アメリカでどうなるか分かりませんが、東京五輪世代の選手達が国際経験を積み続けるのは良いことだと思います。

さて、そういったチームの強化、選手の強化ももちろん大切ですが、トゥーロン国際大会のようなイベントを固定化して実施していくのもサッカーという文化の強化につながるはずではないでしょうか。

先にこのトゥーロン国際大会は「格が高い」大会ではないとはいいましたが、FIFA公認大会ではあります。こういった若い世代の国際大会を半世紀以上継続して開催し続けるフランスという国の、若手育成にかける思いと国際サッカーへの貢献する気持ちというのは賞賛されるべきものです。

決して儲けるためとか経済効果だとかを目的にしているわけではないでしょうし、あるいはただ単にお金をかけてやっている、ということでもないでしょう。こういったことはその国、その地域においてその文化が根付いているかのバロメーターでもあると思います。

また、ほぼ同時期にリスボン国際という大会にU18日本代表が参加していました。

第25回リスボン国際トーナメントU18
https://www.jfa.jp/national_team/u18_2019/lisbon_international_2019/schedule_result/

トゥーロン国際大会よりもさらに知名度が低い大会ですが、これも結構続いている大会です。

では日本ではどうかというと同じくU-18世代ですが、SBS杯国際ユースサッカーという大会が毎年開催されています。

SBS杯国際ユースサッカー
http://www.at-s.com/youth_soccer/

SBSというのは静岡放送というテレビ局のことですが、1977年に静岡放送の創立25周年記念事業として始まったそうです。これも40年以上になりますし、かつてはロナウジーニョやクライファートもプレーしたそうですので、歴史と伝統ある大会と言えるのではないでしょうか。

静岡ではサッカーが盛んということはほとんどの日本人が知っていることだと思いますが、有名選手を多数輩出していることとか、高校の強豪校があることとかだけではなく、こういった大会を毎年継続して開催していることこそが「サッカーどころ」として誇れることなのではないでしょうか。

そしてそれはサッカーだけ話ではなくて、例えば外国での映画祭とか文学賞とかで日本の作品が受賞するのは日本人としてはもちろん嬉しいことですが、選ばれる立場だけではなく選ぶ立場にもなってこそ、その文化が定着して盛んになっている、と言えるのではないかと思います。

文学作品や映像作品などについては日本語の壁もありますのでなかなか難しい面もあるかも知れませんが、スポーツでは言葉の壁を容易に越えられます。特にサッカーのように世界中ほぼどこの国でも盛んで、世界的に統一ルールで実施されているスポーツであれば、モンテネグロだろうがソマリランドだろうがセントビンセントグレナディーンだろうが世界中からチームを招待することが理論上可能です。

大会だけではなく選手についても同じですが、Jリーグから選手が出ていくだけではなく海外から優秀な選手がJリーグに来る方向も盛んになるべきでしょう。そして今のJリーグも少しずつはそうなっていると思います。神戸が連れてきたVIPトリオだけではなく、チャナティップやティーラトンなどのタイからの選手も所属しています。Jリーグからタイに移籍する日本人選手も昔に比べると多くなりました。韓国人選手は言わずもがなですね。

選手獲得のレベルで、すぐにJリーグが欧州のトップクラスに追いつけるとは思ってはいませんが、トップクラスに行きたい選手、欧州2番手グループに行くまでのステップアップやあるいは欧州でのプレーが難しくなってきた選手達の選択肢として選ばれるようになれば、もっとJリーグのプレーレベルも上がるでしょうし、さらに指導者も同じように行き来するようになれば戦術面ももっと深まっていくでしょう。

FC東京の久保建英選手がレアルマドリーに移籍することが発表されました。彼の才能・実力を評価されてのことで素晴らしいことです。

一方、ビッグネームがJリーグへ移籍してくるのは、ヴィッセル神戸のここ数年の補強のように大金を積んで呼ぶのが条件になってしまいがちですが、お金や治安などだけではなくJリーグのプレーレベルに魅力を感じて移籍してくる選手(あるいは指導者)が増えてくれたらと思います。


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