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スポーツのテレビ放送の終わりの始まり

日本代表が久し振りに招待されたコパアメリカでは日本国内でのテレビ中継がありません。

【セルジオ越後】コパ・アメリカを放送しない民放とNHKに「失敗したな」って思わせたら勝ち!
https://www.soccerdigestweb.com/news/detail/id=59055
だって国内の親善試合は民放で放送するのに、コパ・アメリカは民放でもNHKでも放送しないんだ。試合時間が午前8時という通勤・通学の時間帯に重なったのもあるかもしれないが、あまりネームバリューのない五輪の選手たちでは、数字は取れないってことかな?

個人的には選手選考ではなく単に時間帯の問題だとは思いますが、ただ今のデジタル放送ではサブチャンネルで放送する選択肢もありますから、単純に時間帯だけの問題でもないでしょう。おそらくは放映権料と見込まれる視聴率(民放ならそこから得られるCM収入)を検討して割に合わないと、テレビ局側が判断したのだと思います。

アメリカ大陸で行われる試合の場合、時差によって日本での中継時間帯がどうしても午前中になってしまいます。土日ならともかく平日では・・・ということでしょうけれど、その「見込みが無い」コパアメリカをDAZNが独占放送することになりました。

日本代表戦も「DAZN」で! コパ・アメリカ2019全試合独占ライブ配信決定
https://www.soccer-king.jp/news/japan/national/20190522/939854.html
スポーツ・チャンネル「DAZN(ダゾーン)」は22日、日本時間6月15日より開催される南米王者決定戦、コパ・アメリカ2019の日本戦を含めた全試合を独占ライブ配信すると発表した。サッカー日本代表が出場する一大会の全試合をデジタルプラットフォームで配信するのは国内で史上初となる。

DAZNはどんどんコンテンツ内容を充実させていっていますが、本当に経営的に大丈夫なのかな、と心配してしまうくらい、値上げもせずに放送される量を増やしていき続けています。

今の時代はネットで簡単にニュース・速報を見ることが出来ますので、テレビでのスポーツ中継も基本的には生中継でないと、先に結果を見てしまって興ざめするケースが出てきます。

サッカーはファンの主張が強いからかどうか分かりませんが、ディレイ放送や録画放送はほぼありません。バレーボールやフィギュアスケートではゴールデンタイムにディレイ放送や録画放送が行われていますが、そのうちDAZNが生中継での時間帯の放映権を獲得するのではないでしょうか。

テレビはどうしても視聴率が取れる時間帯での放送にこだわるでしょうけれど、そうなるとコアなファンはDAZNで生中継観戦、ライトなファンはテレビでゴールデンタイムに録画放送を観戦するような、二極化の状態になってしまいます。

そうなると、ゴールデンタイムの直前の時間帯に放送されるニュースでは、既に出ているそのスポーツの結果を報道できないことになります。

こうなるとテレビの意味や価値が問われかねません。紙媒体のメディア(特にニュース)をテレビが圧倒できた原因の一つが速報性だったはずですが、その速報性を自ら捨ててしまったらテレビは何が出来るでしょうか。単に利用者が無料で閲覧できるだけのことになるのであれば、YouTubeのようなCM込みのウェブメディアで済むことになります。

ドラマやバラエティ番組ならともかく、テレビがスポーツ中継を生放送で実施せず、ニュースでも結果を伝えないとしたら、テレビにおけるスポーツ中継・スポーツ報道の存在意義が問われることになります。

今回の、コパアメリカのテレビ中継無しという事例は、スポーツのテレビ放送の終わりの始まりになるかも知れません。

と、ここまで書いていたら、こんなニュースがありました。

天心ダウン場面がCM突入で映らず非難、苦情殺到のフジRIZIN生放送不手際はなぜ起きたのか?(THE PAGE)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190603-00010000-wordleafs-fight

民放テレビ局であればCMはどこかで必ず入れないといけないですし、ラウンド間よりはラウンド中の方がそのCM中の視聴率は高いのは間違いないでしょう。そういう算段での「治療中にもCMを入れる」というルール決めだったのでしょうけれど、さすがに60秒ではなく15秒にするべきだったんでしょうね。格闘技にしろ球技にしろ、CMを入れやすいのは休憩のタイミングです。しかしそれは視聴者にとっても休憩にもってこいのタイミングですから、競技中よりもCMの方が視聴率が落ちるという、民放としては存在自体に立脚する根源的な問題があります。

だからこそ、こういったCMまたぎの苦肉の策が生まれたわけですが、多用することでかえってテレビ離れを招くという、薬物濫用の副作用のような悪循環に陥る罠が待っていました。

不愉快な「CMまたぎ」が今も流行 それでも止めない民放テレビ局の見識
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190528-00562384-shincho-ent
テレビの「CMまたぎ」がなくなる日 “減らして効果を上げる”奇策とは (1/4)
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/1902/21/news015.html

しかし、ドラマやバラエティ番組のような、あらかじめ筋立てが決まっている番組であればCMまたぎも可能ですが、スポーツ中継ではいつ決定的場面が訪れるか分かりません。競技中のCMまたぎをそれでもあえて行うと、今回のRIZINの悲劇が待っているわけです。

それでも民放でスポーツ中継を行うのなら、選挙や災害の時のようなL字型のテロップの箇所にCMを流すしかないでしょう。放送法的にOKなのか知りませんが。それがダメなら、少なくとも民放テレビ局でのスポーツ生中継は遠からず絶滅すると思います。

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