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人事でChatGPTは使えるのか

こんにちは、HRMOS WorkTech研究所の友部です。今回は巷で話題になっているChatGPTについて、です。ChatGPTは最先端の自然言語処理技術の一つで、文書生成や応答を非常に高い精度でこなすので注目されています。

ChatGPTについて、文書校正や英語学習への応用など様々な使い方が考案されています。実際、ChatGPTが何ができるのか、使い方などは研究者や技術者すら驚くような使い方が報告されています。

では、人事領域においても、ChatGPTは使えるのでしょうか。今回は実際の活用例など含めてお話できたらと思います。

ChatGPTは人事のどんな場面で使えそうか

今回のnoteを書くにあたり、ChatGPTは人事のどんな場面で使えそうか、Web上を賑わせている使い方を参考に、いろいろ考えてみました。

  • 研修を作る

  • 人事に関わる知識に関して調べる

  • 制度を作る・改定する

  • 文書で書かれた経歴から年表を生成する

  • キャリアについて相談する

  • 社歌を作る

これ以外にもいろいろできそうですが、まずは上記の使い方を想定して実際にChatGPTを触ってみたので、それぞれ(現時点で)どれくらい活用できそうなのか、検討してみたいと思います。

研修を作る

人事が用意する研修も、外注するものもあれば内製するものもあると思います。研修の内製も費用面は安く収まりますが、ゼロから作るとなるとひとしきり苦労があるかと思います。そこでChatGPTで研修を作ってみましょう。

新卒マナー研修のメニューを作る

以下は、新卒向けマナー研修のメニューをChatGPTに生成させた例です。職種(エンジニア or 営業)それぞれで作ってもらってます。

新卒向けマナー研修

職種によって、微妙にメニューが違っているものわかります。営業職種だと顧客向けのメニューが入っていたり、一方でエンジニアだとプロジェクト管理におけるコミュニケーションのメニューが入っていたり。

メニューの詳細を作る

研修の各メニューについて、より詳しいことを聞けば答えてくれます。

会議やプレゼンテーションマナーの詳細

具体的にどのような内容を行うのか、について説明してくれます。

研修の台本を作る

内製する場合には具体的に話す内容も欲しいです。その場合には、台本を作ってもらうこともできます。

マナー研修の台本

もちろん、このまま使う、というわけではないでしょうが、台本の叩きという意味では使えそう。ただ、マナーの具体的例がない・・・。

具体例を追加する

以下は、マナーの具体例を追加した台本です。

具体例を入れたマナー研修の台本

身だしなみについて、細かいところまで例が入っているので参考になるかと思います。とはいえ、会社や業態によっては抜け漏れがあるかもしれないので、そのあたりは要チェックです。

台本の雰囲気を変える

台本がちょっと硬いので、フランクにしましょう。

台本をフランクに。

「やぁ」から始まる小粋な台本になりました(笑) また、内容にスマホについての話が追加されました。

ロールプレイを作る

マナー研修では研修生にそれぞれ役割を割り当ててロールプレイをやることもあるでしょう。そのロールプレイの設計もやってくれます。

マナー研修のロールプレイ案

研修について、荒いですが企画書のベースとなるような情報を提案してくれます。全くのゼロベースから作ることに比べれば、労力は少なく済みそうです。

人事に関わる知識に関して調べる

一番活用イメージとして浮かびやすいのは、「人事に関わる知識に関して調べる」というものです。

人的資本経営について調べる・・・が

人的資本経営はどういうものか、ChatGPTに問い合わせてみます。

ChatGPTに問い合わせた人的資本経営・・・だが・・・

いきなり「人的資源」と言っています。「資本」と「資源」は異なるものなので、注意が必要です。文章としては意味の通じているものでもあるし、ニュアンスは近しいものを提示してくれますが、リクエストする側の人間が細かい中身まで理解できていないと、ミスリーディングになってしまいそうです。このあたり、人事における活用においては気をつけたほうが良いポイントです。

特に、自分が専門領域ではないものについては内容を鵜呑みにするのは現段階では危険である、とも言えます。

概要を資料にまとめる

資料等にまとめる場合には、分量などを指定するといい感じにまとめてくれます。

人的資本経営をスライド3枚に・・・だけど・・・

スライド3枚のちょうどよい分量の文章が生成されます。が、人的資本経営の説明にはなっていません。内容的には「タレントマネジメント」を説明している文章に近いかな、と思います。内容によって、得意・不得意はありそうです。

制度を作る・改定する

新しく制度を作る、またはこれまであった制度を改定する、など人事で動きがあるときには、どういったポイントを押さえればいいか参考にすることができます。

報酬制度を改定するにあたって気をつけるポイントを生成

こちらについても同様ですが、ある程度わかっている人が視点の抜け漏れがないか参考にする、には使えそうです。一方で、初めて制度設計に携わる、等の場合にはこれだけから判断するのは少し危険かと思います。

経歴の文章から年表を生成する

経歴について文章で書かれていることが多いですが、その経歴を年表形式に変換してくれます。

文章で書かれた経歴を年表にする

面談記録など人事にはいろいろ文章が溜まっていると思いますが、そういった文章を構造的なデータへ変換してくれるので、データ活用という点では非常に期待できるのではないか、と感じています。

キャリアについて相談する

キャリアについて悩み相談にものってくれます。まず、ロールを明確にします。

ロールの明確化

次に、実際にキャリアについての相談をします。相談内容は架空のものです。

キャリアについての相談

悩むポイントについて整理してくれているため、参考にはなるかなとは思いつつ、一般論に近いのでどこまで心に届くかは疑問です。最終的にはキャリアコンサルタントに相談しましょう、というのも面白い。

実際に使うとしたら、ChatGPTが出した文章をそのまま使うのではなく、「一般論としてこういう考え方はある。けれども私は〜〜と思う。」というような伝え方をするとよいのかもしれません。

(おまけ)社歌を作る

ChatGPTは歌詞を書くこともできます。今回はWorkTech研究所の社歌(というか所歌)を作ってもらいました。

HRMOS WorkTech研究所の歌

「ハミングを含む音楽が始まる」がとてもワクワク感を演出しています。「働き方」「生産性」などのキーワードが散りばめられ、いい歌ができた…気がします。そして、歌詞だけではなくちゃんとコード進行も作ってくれます。

HRMOS WorkTech研究所 社歌 コード進行

よく見ると、同じコードを繰り返しているだけですが・・・。

荒削りだが、人事で活用できる場面は多そう

ChatGPTの人事での活用例について考えてみましたが、荒削りではあるものの使い方さえ注意すれば活用できる場面は多そうです。特に、専門性や経験を持っている人であれば、ChatGPTが吐き出す結果に関して正しく正誤を判断できるため、研修や勉強会の企画、資料作成など効率的に行うことができます。一方で、知識や経験の乏しい分野については正誤の判断が難しくなるので、ミスリーディングにならないよう注意が必要となります。

また、ChatGPTから期待する回答を得るためにも、どういった聞き方・依頼の仕方をすればいいか、に工夫が必要です。ロールを決めたり、表のカラムを指定したり、指示の上手い下手で出てくる結果は異なります。Webの検索力同様、AIへの指示力のようなものも今後求められてくると思います。

ChatGPTについての説明は、東大の松尾豊先生の資料が非常にわかりやすいです。こちらのnoteから資料をダウンロードすることができます。

特に、松尾先生の資料のP.30、「日本の戦略」の一番最後に書いてあることが印象的でした。

3. ユーザとしての活用を促進する
- DXが進んでいない現状において、言語による指示ができることは、DXの決め手になる可能性はある
- つまり、DXにおけるリープフロッグ。(アフリカに固定電話が入ってないのに携帯が入ったように。)

松尾豊(東京大学教授):「AIの進化と日本の戦略」

人事におけるデータ活用の壁として、「手元にあるデータから判断してしまう」ということを書きましたが、これは人事でデータを蓄積することが難しく、データ量が少ないからでした。なぜデータを蓄積することが難しいのか、というと、データの入力の工数が膨大にかかるから、というのが大きな理由です。

しかし、活用の例で「経歴の文章から年表を生成する」のところでも示したように、人事にある大量の文章から構造的なデータを取り出すことが可能になります。面談情報など、テキストで保持さえしておけば、データの加工など意識せずデータ活用しやすい形で蓄積することができるようになるわけです。

そういう点でもChatGPTが人事におけるデータ活用のリープフロッグになりうるわけで、人事であっても注目しておくべき技術であると思っております。

今回のnoteではChatGPTを人事で活用できる場面があるのか、について検討いたしました。人事におけるデータ活用という観点で大きな影響を及ぼす可能性があるという意味でも、WorkTech研究所では今後も注目していこうと思っております。

人事データの活用や、人事関連の指標の開発、分析の考え方などWorkTech研究所へのご相談やnoteへのリクエスト等ございましたら、引き続きお気軽にお申し付けください!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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