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昼月まひる
2022年4月5日 01:21
まず、謝らなければならない。そのとき、血の気が引くほど動揺してしまったことを。手放しに喜ぶ気持ちになれなかったことを。「可能性は、まだ、あるんでしょうか……」 医師に向けた私の言葉は、語尾が少し震えてしまった。「hcgが21.2出ているので、可能性はありますよ。この表で言うと、ここになります。5人にひとりは、この数値でも出産に至っているわけですから」 目の前の紙の表に書かれている
2022年2月13日 21:03
結婚する意味、たまに考えないでもない。10代20代の頃、結婚する理由はただ一つ、「子どもを産むため」だった。もともと結婚そのものに、あまり憧れがなかったから。じゃあ、もしも子どもができなかったら……? * ストレス。うん、確実にこれはストレス。 このコロナ禍、余計なストレスは一切取り除いてやろうと日増しに感度が高くなっている私のスカウターが、また新たなストレスを感知している。
2021年7月27日 19:45
今日、「胎嚢」という赤ちゃんを包む袋のようなものが子宮の中に見えたら、私たち夫婦の希望は、また少しだけ前進することになる。 着床を確認してから10日、運命の分かれ道になるかもしれない検診日。 この7年間で一度も経験できなかった、正確に言うと血液検査の数値的に「かすりはしたかも」のときが1回だけあったのだけれど、しっかり受精卵が子宮に着床したと「妊娠」の陽性判定がもらえたのは初めてのことだ
2021年7月23日 19:44
「12時40分から飛ぶらしいよ、ブルーインパルス」 ベランダの掃き出し窓をがらりと開け、洗濯ものを干していた私に夫が言った。「えー、どっち? どっちの方向?」「たぶん、あっちかな」「見えるかなぁ」 ふたりで空を見やる。濃い青色をした夏空は、雲ひとつないとはいかずに、ところどころにわた雲が浮かんでいた。 今日は東京オリンピックの開会式だ。夜8時からの式を前に、ブルーインパルス
2021年7月21日 19:19
腹の奥底のほうが、ズキリとした気がする。 嘘だ。たぶん、いつもの思い違い。妊娠の可能性などまったくない、なんでもない日にもときどき起こってきた違和感。妊活であろうが、不妊治療であろうが、自分の子宮を常に気にしてしまう生活をしたことがある人なら、たぶん経験者は多い。 不妊治療を始めて7年目となる今年、奇しくも大波乱の東京オリンピックが開かれようとしているその直前に、私は初めて着床に至った。