【厳選7本】芸術家の生き様を描いた映画
クリエイティブな仕事にかかわる人にとって、偉大な芸術家たちの生きざまから学べることは多いはず。
そもそも創作とは何か。アーティストの生きざまとは、矜持とは、といった問いに対して、彼らの人生は新しい視点を提供してくれます。
なかでも、彼らを描いた映画は、彼らの日常生活や葛藤を描きだしており、得られるものは莫大。
本日は、芸術家の生き様を描いた映画を7本紹介します。
『ジャコメッティ 最後の肖像』(2017)
1964年のパリ。ジャコメッティは旧友のジェームズ・ロードと偶然再会。
突然、創作意欲が湧いたジャコメッティは、ロードに肖像画のモデルになってくれないかと頼み込みます。
ロードは申し出を快く承諾。
しかし、数日で終わる予定の肖像画の製作は、完成する気配は一向に見えず、ロードはいつになったら解放されるのだろうか、というストーリー。
画家とモデルの関係性がおもしろく、肖像画を描くことは、簡単には答えの出せない、一種の哲学的な営みであることに気づかされます。
なによりも、主役であるジェフリー・ラッシュの演技がすばらしい作品で、ジャコメッティのアトリエのセットも圧巻です。
『キル・ユア・ダーリン』(2014)
第二次世界大戦中の1944年、コロンビア大学に合格したアレン・ギンズバーグ。
文学の授業内容をはじめ、旧態依然とした大学の有り様に幻滅し、自由奔放な学生・ルシアンに強く惹かれるようになります。
ルシアンの仲間であるウィリアム・S・バロウズやジャック・ケルアックとも交流を持ちはじめると、彼らの生き方や「文学革命」の思想に引き寄せられていくというストーリー。
ビート・ジェネレーション旗手達の若かりし頃を描いている作品ですが、彼らの中心的存在・ルシアンを演じるデイン・デハーンのカリスマ性と、妖艶さに魅せられます。
『エゴン・シーレ 死と乙女』 (2016)
20世紀初頭に活躍し、28歳の若さで早逝した異端の天才画家、エゴン・シーレの半生を描いた伝記ドラマ。
彼の生涯のうち、ウィーン美術アカデミーを中退して仲間たちと「新芸術集団」を結成した1910年から1918年に病死するまでを、モデルとなった2人の女性との濃密な日々を中心に、病死直前の数日間の姿を交えながら描いています。
静かなムードと、鬼気迫るシーンで、シーレの作風ともうまくマッチした映像でした。
『炎の人ゴッホ 』(1956)
アーヴィング・ストーンの小説をベースにした、ゴッホの伝記映画。
ゴッホが絵を描き始め、オランダ、パリでの生活を経てアルルでゴーギャンと共同生活を営むものの関係が悪化し、耳を切り落とす事件を起こし、精神病院への入院を経て死を迎えるまでを描いています。
ロケ地はほぼ現地の、オランダ、アルル、パリ、そして、美術館や所有者からゴッホ作品を借りてきて小道具として使用するほどの意気込み。
感情の起伏が激しく、時に狂気にかられるゴッホを見事に描ききっており、芸術家の辿る道の非情さを深く感じさせられます。
『ある画家の数奇な運命』(2018)
現代美術界の巨匠、ゲルハルト・リヒターの半生をモデルに、ドイツの「歴史の闇」と「芸術の光」を描いた作品。
舞台はナチ政権下のドイツ。
少年クルトは叔母の影響から、芸術に親しむ日々を送っていました。
ところが、精神のバランスを崩した叔母は強制入院の果て、安楽死政策によって命を奪われることに。
終戦後、クルトは東ドイツの美術学校に進学し、そこで出会ったエリーという女性と恋におちます。
じつは、元ナチ高官のエリーの父親こそが、叔母を死へと追い込んだ張本人。
しかし、誰もその残酷な運命に気づかぬまま二人は結婚。
「真実はすべて美しい」という叔母の言葉を信じ続けるクルトは、ベルリンの壁が築かれる直前に、エリーと西ドイツへと逃亡し、創作に没頭するのですが...
歴史の暗い面、そして、「真実の美しさ」について考えさせられます。
『アイ・ウェイウェイは謝らない』 (2013)
世界中の美術館や国際展がこぞって展示を熱望する中国現代芸術家、アイ・ウェイウェイ。
彼の作品が多くの人の心を打つ理由は何か。
本作は、本人のインタビューを交え、家族や友人の証言、過去の作品などからその秘密にせまるドキュメンタリー。
自国に疑問を抱きながらも、思考力を奪われ太刀打ちできない中国の一般市民の代弁者として政府に挑み、挑発し続けるアーティストの刺激的な生きざまを通して、中国において、反体制派アーティストであることの意味について考えさせられます。
『世界で一番ゴッホを描いた男』 (2019)
著名な芸術家の生きざまを描いているわけではないのですが、芸術家と職人の違いを知るためにもリストに加えました。
複製画制作において、全世界の半分以上のシェアを誇る油絵の街・中国の大芬(ダーフェン)。
出稼ぎでこの街にやって来たチャオは独学で油絵を学び、20年以上ゴッホの複製画を描き続けています。
絵を描くのも、食事も寝るのもすべて工房の中。
そんな彼の夢は、ゴッホ美術館へ行き、本物の絵画からゴッホの心に触れること。
その想いは日増しに募り、ついにオランダのアムステルダムを訪れますが...
豊さとは程遠い生活をおくるチャオは、自身の境遇を呪うわけでも、環境のせいにするわけでもなく、ただただ祖先に感謝し、前向きにたくましく生きる姿に胸を打たれます。
彼の生きざまと油絵から「ホンモノとは何か?」を問いかけてくる映画です。