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畜産は悪? 牛・人・地球が共生できる未来を目指す宝牧舎の取り組み

 はじめまして、宝牧舎ブランディングチームの茂手木佐和子です。縁あって、彼らの活動を宝牧舎代表・山地をはじめとした牛飼いの皆さんとともに発信していくことになりました。

 宝牧舎は、大分県別府市の山奥にある牧場で、約80頭の黒毛和牛を放牧にこだわって育てています。モットーは、「牛の幸せを考え続ける」。牛たちがイキイキと、のびのびと生きられるように放牧をしているわけですが、環境問題やアニマルウェルフェアといった社会課題が議論される昨今、畜産業にいいイメージを持っている人は少ないかもしれません。

 宝牧舎が目指すのは、牛と人と地球が共生する未来。では、どうすれば実現できるのでしょうか。彼らもまだ発展途上ではありますが、これまでの畜産における“当たり前”を変えていくことで、見えてきたものがあるそうです。今回は、宝牧舎の3つの主な取り組みと、それらを実際に行なっている牛飼い3人をご紹介します。

1. 自然放牧で牛の健康度を高める

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 牧場は大分県の別府と久住に2つ。いずれも山奥にあり豊かな自然に囲まれています。一般的に牧場というと、広くて平らな牧草地で、牛舎やトラクターがあるところをイメージする人が多いと思います。一方で、宝牧舎の牧場は傾斜のきつい山にあり、牛舎もないので、訪れた人は皆「こんなところで牛が飼えるんですか?」と驚きます。でもそうした場所で牛を飼うことこそが、宝牧舎のこだわり。
 通常肉牛は生涯牛舎で育てられることがほとんど。その理由に、日本では赤身肉よりも脂ののった肉の需要/価格が高いことや、牛たちを効率よく管理できることなどがあります。宝牧舎が目指すのは、牛たちがなるべくストレスの少ない環境で、“自然”に生きられるようにすること。自由に移動する牛たちを広大な牧場の中で見つけるのは骨の折れる仕事ですし、牛たちのお肉はたくさん歩く分筋肉質になります。それでも、こうして健康的に育った牛のお肉が本当に“美味しい”とされる未来を実現したいと考えています。

2. 手放された廃用母牛を育てる

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 経済動物として扱われる母牛は、妊娠できない/できなくなったと判断されると「廃用母牛」と呼ばれ、とても低い価格で取引されます。それまでたくさん子牛を産んでくれていたとしても、「廃用」と呼ばれ、安いミンチ肉になるか、再肥育されて通常の黒毛和牛のお肉より低い価格で販売されるのが現状。宝牧舎はそうした牛たちを迎え入れ、育てます。母牛は宝牧舎の牧場で開放的に暮らすことによって、90%以上が再び子牛を産める健康的な体に(宝牧舎の実績データ)。また、黒毛和牛の子牛は人工授精を経て生まれてくるのが一般的ですが、宝牧舎の子牛は自然交配という形で誕生します。「牛の幸せ」を考えたとき、人や経済にとって役立つかどうかで牛の価値を決めるのではなく、尊い命を宿した生きものとして接することが、それに繋がると彼らは信じているからです。

3. 耕作放棄地を牧場として有効活用する

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 かつて牧場や農地として使われていた土地は、畜産業や農業の担い手の減少に伴い放置され、その多くが荒地になっています。現に農林水産省の統計では、2019年度の全国耕作放棄地の面積は28.4万ヘクタールにまで達しており、その数字は東京都の面積を上回ります。長い間耕されずにいた土は栄養を失い、多様な植物が育つ機会さえ奪います。宝牧舎の牧場があるのは、そんな耕作放棄された山の一部。放牧された牛たちが歩くことで土が耕され、牛たちの糞尿で豊かな土壌が育ち、やがて牛たちが食べられる牧草が生えてきます。耕作放棄地での放牧は、自然の循環を取り戻す一つの方法であり、牛たちの幸せを考えた宝牧舎の選択なのです。

宝牧舎の牛飼いはこんな人

 ここまでは主な取り組みをお伝えしてきましたが、ここからは宝牧舎のメンバーを紹介します。

 宝牧舎の牛飼いは3人。正直なところ、前述した取り組みをこの少ない人数でやるのはかなりの重労働だそう。広大な牧場の整備やどこにいるか分からない牛たちの健康チェックなど、日々のタスクは山積み。でも、牛たちが幸せに生きられる未来を目指して彼らは挑戦しています。

宝牧舎の発起人で社長・タツ(山地 竜馬)

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2007年、サラリーマンをしていたところから鹿児島の小離島・口永良部島への移住をきっかけに牛飼い人生をスタート。それまで農業や畜産の経験はもちろんゼロ。現在は、牛たちの体調管理や牧場の整備、経営に関わる全てを統括しています。

健康管理のスペシャリスト・カナ(山地 加奈)

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もともと看護師として働き、タツとの結婚をきっかけに牛飼いに。命について誰よりも考えるカナは常に生きものを思いやり、牛たちが懐くのもとても早い。妊娠中の母牛や子牛の体調管理、雌牛の発情期を見極めるなど、牛たちが健康でいられるのは彼女の仕事があってこそなのです。

牛飼いの新星・アンドー(安藤 大峻)

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2021年、東京で勤務していた不動産会社を辞め突如として牛飼いになった異色のミレニアルズ。体力と声の大きさ、行動力には誰もが驚きます。宝牧舎では牧草を刈って運んだり牧場の設備を作ったり、頼り甲斐のある男としてもうすっかり宝牧舎のメンバーとして馴染んでいます。(東京から別府に移住した彼のリアルな暮らしは自身のInstagramでもチェックできます。@andohirotaka36

 牛飼い一人ひとりのストーリーや、宝牧舎の詳しい取り組みについては、今後このnoteでお伝えしていきます。牛たちの暮らしぶりや日々の出来事はInstagram(@houbokusha)で発信しているので、そちらもご覧いただけると嬉しいです。今後も宝牧舎の取り組みにご注目ください。


[文]茂手木佐和子 (IG @sawoasis
[写真]松平伊織 (IG @iori_matsudaira
[統括・編集]萩野格(TW @kak_uku

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