音も味のうち
ロックグラスは持っていた方がいい。酒を飲もうが飲まないが。
グラスと氷がぶつかると何とも言えない音がするからだ。
「いい音」
ロックグラスに梅酒を注ぎお客様のもとへ運ぶと、そんな第一声が聞こえてきた。いま、私の宿ではお泊まりいただいたお客様には、島で採れた梅や甘夏を漬けた果実酒をお出ししている。
ただ私自身は自家製酒に関して、島のおばちゃんたちのように長年の勘が磨かれているわけではない。そのため、本当にこの酒に満足いただけるのであろうかと疑心暗鬼でもあった。氷砂糖や黒糖はしっかりなじんでいるのだろうか、アルコールの匂いが強すぎやしないかなど考えれば考えるほど、味に関する不安要因は浮かんでくる。
だからこそ、せめて見た目だけでもと思い、ロックグラスに氷を入れ、酒を注ぐ。つまり、私が想像する味というのは、舌の味蕾を刺激する何かであったり、視覚や嗅覚に迫るものであったということだ。
しかし、最初に酒がくすぐったのはお客様の聴覚だった。もし文字にするならば、カランコロンという音だったのだ。
その後もお酒を飲みながら、グラスを回して音を楽しむ姿がそこにはある。
あぁ、なるほど、音も味なのか。そんなことを私は思った
今思えば、料理には音がつきものだった。炭酸がはじける、肉が焼かれる。なんならレストランの奥からリズミカルに包丁が鳴ると、それだけでも期待は膨らむ。私自身も経験してきたことが、音が味だと気づいた瞬間、一気に脳裏に駆け巡ってきた。
だからこそ、ロックグラスは持っておいた方がいい。
酒だろうが、コーラだろうが、そのグラスのもたらす音が味をより良いものにしてくれる。
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というわけで、最近は普段からロックグラスを使うようになりました。
ノンアルコールでも少しリッチな気分になれますね!
というわけで、本日はこれにて。
ご清読ありがとうございました。
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