バランスボールを置くこと 〜私は旅の「偶然」を破壊してしたのか?〜
宿を営んでいると、偶然の存在に唖然とする。
たとえば、お客様が実は庭師だったり、助産師だったり。辞書的にその職業の存在を知っているだけで、会ったことなど一度もない。俗的に考えれば、ナンパした異性が庭師や助産師である確率はおそらく極めて低いだろう。そう思うと、やはり偶然とやらはとても貴重なもので、一種のロマンすら覚えざるを得ない。
「旅の偶然をロマンで終わらせたら研究者はダメだよね」
大学院時代、とある先輩はそう私に言った。もう4年も前の話だが、なぜだか妙に心に残っている。