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2021年10月の記事一覧
Knight and Mist第七章-6 days
顔のないネズミーーネームレス・ワンにすっぽりと覆われ、体の感覚がなくなる。
目の前が真っ暗になり、それからーー監視カメラから覗いているかのように画面が移り変わっていった。
挫折。挫折。挫折。
まだ諦めてなんかいないと何度も頑張る自分。
その度に訪れる行き止まり。
大学受験に失敗して。
留年して。
何もしてなくて。
何か言えるようなこともなくて。
ただこぼれ落ちていくスピードを上げ
Knight and Mist第七章-5 解放
ハッと目を見開き、溺れていた人かのように思い切り息を吸う。
あの不思議な光景は消え去り、元の部屋へと戻っていた。
それは瞬いただけの一瞬の出来事のようにも、一週間ほど経ったかのようにも感じられた。
ピッ、ピッ、生体音を記録するような機械音のような音。
中空に放たれた魔力の光。床を這うコードの束。
(さっきのはいったいーー)
「博士、意識戻ります」
女の声がする。
実験場のような、解
Knight and Mist第七章-4 がんじょうなへや
白い光がおさまると、目の前にはうず高く積まれた巨大な本の山が見えた。
本という本が巨大で、それが四方に積み上げられ、一つの空間となっていた。本の山に囲まれている状態だ。
天井には逆さまに階段があり、上下がどうなっているのか分からない空間で、そして本でいっぱいだった。
(ここはどこーー?)
意識を失い、夢を見ているのだろうか。
それとも緑の薬液をかけられたせいなのか。
あちこちを見渡して
Knight and Mist第七章-3イスカゼーレの闇
ハルカが気づいた時には、手術台のようなものの上にのせられていた。
何本ものコードが地を這うようにして散乱している。
ふと、魔霧の中で見た光景がよぎる。
心臓に杭を突き立てていた女ーー
今台にのせられて、手首と足首をベルトで固定されているのはハルカだ。
薄暗く、部屋の真ん中に放たれた光球が唯一の光源だった。
周囲は清掃が行き届いているようだが、物騒なものがたくさん置いてあった。
手動の
Knight and Mist第七章-2 ダンジョン②
「セシルが戻って来たかな?」
ハルカが音の方を見て言った。
その口をイーディスが塞ぐ。
それから真剣な顔で、
「おい、こいつを戻すぞ。お前は枷を嵌めておけ。静かにな」
イーディスが声を落としてハルカに指示する。
ハルカは音のする方を注意深く見ながら、慎重に枷を嵌めて、鍵はポケットに隠した。
「誰かな?」
「来るのはここに閉じ込めたヤツに決まってるだろ。倒れて意識のないフリをしておけ