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星々ワークショップ第3回(読書会・合評会)開催模様をレポートします

第1回 第2回 第3回 第4回 第5回 第6回

去る11月28日(土)・12月26日(土)に、小説を書きたい人のための読書会&創作合評会「星々ワークショップ」第3回をオンラインで行いました。読書会と合評会2回で1セットの、〝読んで、書く〟ワークショップ。第1回、第2回に引き続き、特別ゲストお2人にもご参加いただいた開催模様をレポートします。

読書会(課題図書『海うそ』梨木香歩)

まず、11月に行われた読書会、課題図書は梨木香歩さんの『海うそ』(岩波現代文庫)でした。「遅島」という南九州の架空の島を舞台に、過去から現在、そしてその更にその五十年後という長い時間の中で、土地に、自然に、人に、起こったあらゆる喪失の姿が、人文地理学者である秋野の視点から描かれていく物語です。

前回までと同じく、参加者の皆さまには、事前に小説家・ほしおさなえさん作成の「読書会の栞」をお配りした上で作品を読んでいただき、予め「本を読んで印象に残った文章3か所の抜き書き」をお送りいただきました。当日はそれをもとに、なぜその部分が印象に残ったかという発表を行いました。第3回ナビの浅井洲(文芸創作ほしのたね)による進行のなか、音声通話で意見を交わし合いました。

意見交換の中では、植物や空気感を始めとした美しく丁寧、かつ生々しい島の自然描写に着目される方が多く見られました。あわせて、作中人物の食事シーンについても何度か言及があり、物語の中で描かれる「生」の姿と、死を含む「喪失」とのコントラストといった点にも視点が向かいました。また、遅島という舞台、盆栽、世界の縮図など、作品の重層的な構図についても意見が交わされました。
複雑で難解な作品という感想も少なからず出ましたが、参加者それぞれの目線から作品を読み、語って共有することで、作品世界とそのテーマについて、より深く踏み込めたのではないかと思います。

合評会(創作テーマ「失うことについて」)

12月に行われた合評会は、「失うことについて」というテーマで、10000字を字数制限とし、それぞれに作品を書いていただきました。提出された作品は予め共有され、気になった作品について、参加者の皆さま、運営それぞれでコメントしていきました。その後、「参加者賞」を選ぶための人気投票が行われました。

第1回、第2回に引き続きご参加いただいた、ポプラ社・森潤也(Twitter)さん、児童文学作家の緑川聖司さん(Twitter)からも作品についてコメントをいただきました。
ゲストのお2人からは、「失うことについて」というテーマについての捉え方、展開や描き方の手法など、今回のみに限らず創作する上で重要なポイントを、プロの立場からお話しいただきました。

最後にほしおさんとナビによって選出される「星々賞」が発表され、mayさんの『棄ロボット譚』が見事受賞となりました。
また、参加者賞はイケウチアツシさんの『消える物語』、奨励賞として、ナヲコさん『箱舟のオルタナティブ』(ナビ・浅井洲推薦)、江口穣さん『札幌、春の雪』(森さん、ほしおさん推薦)が選出されました。

ナビおよびほしおさんから全作品への講評があり、一旦ワークショップは終了となりましたが、その後も参加者全員、そして緑川さん、森さん、ほしおさんを交えて語り合うフリートークタイムに突入となりました。フリートークタイムは皆さんの創作への情熱がほとばしり、作品について、創作について、毎回時間が足りないほどに濃密な語り合いの場となっています。


受賞作はhoshiboshiサイトにてお読みいただけます

星々賞 『棄ロボット譚』 may(めい) Twitter
参加者賞 『消える物語』 イケウチアツシ Twitter
特別賞 『箱舟のオルタナティブ』 ナヲコ Twitter ブログ
    『札幌、春の雪』 江口穣(えぐち・じょう) Twitter ブログ

上記4作品は下記のhoshiboshiサイトにて全文をお読みいただけます(ワークショップ全期間終了後に受賞作をまとめた作品集を発行するまでの期間限定公開)。ほしおさんによる選評もありますのでぜひご覧ください。

提出全作品(順不同)

『グッドクッキング』 灰音ハル Twitter ブログ
『花嫁の父』 海山みどり Twitter ブログ
『好意とソフトウェア修正技術』 古川桃流 Twitter
『妻からの言伝』 ちょっぴぃ Twitter
『死神のマリア』 横井けい Twitter ブログ
『神さまの卵』 ちる
『太陽と月みたいな、きのこと海月みたいな』 岸田大 Twitter
『タイトルなし』3作品 繭

また詳細は未定ですが、来年の夏〜秋には140字小説コンテストの受賞者の方々へもお声がけをして贈賞式を行う予定です。ワークショップはオンラインのみでの開催となりますが、もし一年後に状況が許すのであれば皆様とお会いできることを未来への楽しみとしてhoshiboshiの活動を行っていければと考えています。

次回以降の開催予定・寄せられたご感想など

皆さまのおかげで、星々ワークショップ第3回も無事に開催することができました。
至らぬ点も多々あったかと思いますが、ご参加いただいた皆さま、そしてお忙しい中、今回も特別ゲストとしてご出席いただいた児童文学作家の緑川聖司さん、ポプラ社の森潤也さんに心よりの御礼を申し上げます。

第1回、第2回と重ねまして、今までにいただいたご意見を参考に、運営一同よりよいワークショップを目指して、今回も開催させていただきました。

ナビにとっては、梨木香歩作品は学生時代から卒論、修論と向き合ってきたものであり、今回の題材である『海うそ』も含めて、強い思い入れをもってワークショップに臨ませていただきました。
いろいろな視点をもつ皆さまからそれぞれの発表を聞いたことで、自分ひとりで読んでいる時は得られなかったであろう、思わぬ気づきや新たな知見を得ることもできました。密度が濃く重層的なこの作品において、読書会の場は非常に有意義だったのではないかと思います。
このような機会が皆さまの創作の糧になりますよう、今後も運営一同、ワークショップを開催していきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。


2月・3月開催の第4回(課題図書・『凍土二人行黒スープ付き』(雪舟えま)より「除華のわかれ」、創作テーマ「出会うことについて」)はすでに満席となっておりますが、4月・5月開催の第5回(課題図書・『トリツカレ男』(いしいしんじ)、創作テーマ「語ることについて」)は3月7日(日)にチケット発売の予定です。概要はhoshiboshiサイトに記しておりますので、終了後のアンケートでお寄せいただいた下記のご感想なども参考にお読みいただき、多くの方にご参加いただけることを心待ちにしています。

ワークショップ後のアンケートでお寄せいただいたご感想

課題図書に関して、色々な視点からの意見が聞けて勉強になりました。ありがとうございました!
参加できて大満足でした。栞がなければ完読も無理だったかもしれないので栞にも大感謝です。読む力が10ステップぐらい向上したように思えます。今回の課題作品は難易度が高くて、参加者とは同じ高い山を登った戦友(!?)のようにも思えました。書く人としての参加者の皆さんの洞察力の深さは羨ましく良い刺激になりました。ほしお先生をはじめ、司会、ナビの方々にも深く御礼申し上げます。
毎回ボリュームたっぷりの内容で、フリートークでも沢山のためになる話が聞けてとても満足しています。いつもありがとうございます。


他、多数のご意見をいただいております。
参加者の皆様、ご協力ありがとうございました。

執筆:第3回ワークショップ ナビ・浅井洲

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