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星々ワークショップ第4回(読書会・合評会)開催模様をレポートします

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去る2月16日(土)・3月13日(土)に、小説を書きたい人のための読書会&創作合評会「星々ワークショップ」第4回をオンラインで行いました。読書会と合評会2回で1セットの〝読んで、書く〟ワークショップ。今回も特別ゲストにご参加いただいた開催模様をレポートします。

読書会(課題図書『凍土二人行黒スープ付き』より「徐華のわかれ」雪舟えま)


まず2月に行われた読書会、課題図書は歌人でもある雪舟えまさんの『凍土二人行黒スープ付き』(筑摩書房)より「徐華のわかれ」でした。
この作品は、海に近く暑い国から、寒暑厳しい山と荒野の国に里子に出された少年・リョクと、そこで文字通り身を削って人々に恵みをもたらす神様(もしくは心惑わせ狂わせる怪物)として一定の信仰を集める生き物「キン」が出会うことで始まる、どこか遠い星の、遠い国で起きた出来事を綴った物語です。

前回までと同様、参加者の皆さまには事前に小説家・ほしおさなえさん作成の「読書会の栞」をお配りした上で作品を読んでいただきました。そして、当日はあらかじめご提出いただいた〝本を読んで印象に残った文章3箇所の抜き書き〟をもとに、なぜ印象に残ったかの発表を行いました。第4回ナビの横井けい(文芸創作ほしのたね)による進行のなか、音声通話で意見を交わし合いました。

意見交換では、現代日本が舞台ではない作品ということもあり、作中での設定の提示方法がどうなされているかという点や、世界観を補強する架空の食べ物や栄養素などの固有名称に着目されている方が多く見られました。
また、独特で魅力的な比喩表現が巧みに折り込まれた身体の表現を通し、孤独感や悲しみ、愛おしさといった登場人物の心情や、それに触れた読者の心に喚起される感情について、数多くの言及がありました。
参加者の皆さんがご自身の視点から、矯めつ眇めつしながら作品を読み、またその成果を共有することで、再発見できたことや気づきが得られた会だったのではないかと思います。

合評会(創作テーマ「出会うことについて」)

3月に行われた合評会では、10,000字を上限に「出会うことについて」というテーマでそれぞれ作品を書いていただきました。参加者の皆さま、及び運営メンバーは事前にお互いの作品を読み、当日はひとりずつ、気になった作品についてコメントしていく形で発表を行いました。全員の発表を終えた後、「参加者賞」を選ぶための人気投票が行われました。

前回に引き続きご参加いただいたポプラ社・森潤也さん(Twitter)からも作品へのコメントをいただきました。
今回は、小説を書く上での「視点」の置き方と物語の構成について、商業小説に携わるプロの観点から、新人賞の選考にも通じる大変貴重なお話をいただきました。

最後に、ほしおさんとナビにより選ばれる「星々賞」が発表され、イケウチアツシさんの『かげろうの向こう』が見事受賞となりました。そして、参加者賞には大場さやかさんの『天国か地獄』が選出されました。また、森さん推奨の奨励賞をナビである横井けいの『ピルグリム』が受賞しました。

その後、ナビとほしおさんから全作品への講評があり、ワークショップは終了となりました。恒例ではありますが、その後のフリートークタイムとして、希望された参加者の方々と、森さん、ほしおさんを交えて語り合う時間を設けています。毎回、フリートークタイムでは発表時間内に言えなかった感想を作者に直接伝えたり、森さんやほしおさんに個別に質問をしたり、参加者同士で熱い議論が交わされたりして、大変濃く、そして密度のある1時間になっています。

受賞作はhoshiboshiサイトにてお読みいただけます

星々賞  『かげろうの向こう』 イケウチアツシ Twitter
参加者賞 『天国か地獄』 大場さやか Twitter pixiv
特別賞  『ピルグリム』 横井けい Twitter ブログ

上記3作品は下記のhoshiboshiサイトにて全文をお読みいただけます(ワークショップ全期間終了後に受賞作をまとめた作品集を発行するまでの期間限定公開)。
ほしおさんによる選評もありますのでぜひご覧ください。

提出全作品(順不同)

『アリスモドキの悪夢の国』 ちる 
『ある人魚の死』 ゴメズ 
『そろばん侍』 ちょっぴぃ Twitter
『再会日和』 may Twitter
『出会ってないだけ』 ナヲコ Twitter ブログ
『真昼の星空』 岡本 ブログ
『廃校にて〜りおちゃんの不思議体験〜』 キイチ Twitter
『白い涙が零れる前に』 星蔦藍 Twitter
『僕のまだ書いていない推理小説を巡る物語』 海山みどり  Twitter ブログ
『有効期限が過ぎています』 古川桃流 Twitter ブログ

また、詳細は未定ですが、今年の夏〜秋には140字小説コンテストの受賞者の方々へもお声がけをして贈賞式を行う予定です。ワークショップはオンラインのみでの開催となりますが、もし状況が許すのであれば、皆様とお会いできることを未来への楽しみとしてhoshiboshiの活動を行っていければと考えています。

次回以降の開催予定・寄せられたご感想など

皆さまのおかげで、星々ワークショップ第4回も無事に開催することができました。
至らぬ点も多々あったかと思いますが、ご参加いただいた皆さま、そしてお忙しい中、今回も特別ゲストとしてご出席いただいたポプラ社の森潤也さんに心よりの御礼を申し上げます。

早いものでワークショップも後半に差しかかってきましたが、今回も頂いたご意見を参考に、運営一同より満足度の高いワークショップを目指して開催させていただきました。

今回課題図書を選ぶにあたって、はじめに収録されている「とても寒い星で」と二番目の「徐華のわかれ」のどちらにするか大変迷いました。
どちらの物語も二人(?)の登場人物の出会いが描かれていますが、前者は出会いと二人のこれからの旅路を想起させるもので、後者は出会った二人が別れてしまい、きっとまた会えるという強い予感はあるものの、現実に叶うかどうかは分からないままです。
でも、だからこそ「再会」が噛みしめるような印象を残しながらも希望として爽やかな読後感を醸成するのかなと思いますし、最初の「出会い」の意味合いも大きくなってくるのかなと思います。そんなことを考えながら、課題図書として「徐華のわかれ」を挙げさせていただきました。
今回参加された皆さまの感想を聞いたことで、自分で読んだ際に「そういうもの」として呑み込んでしまっていた箇所が釣り針の返しのように立ち上がってきた感覚がありました。このワークショップという場で、参加者の皆さまにもそんな体験をしていただけたのなら、これ以上嬉しいことはありません。
今後も運営一同、皆さまの充実した創作活動の一助になればとの思いでワークショップを開催していきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。

次回、4月・5月開催の第5回(課題図書・いしいしんじ『トリツカレ男』、創作テーマ・「語ることについて」)はすでに満席になっております。
最終回になります第6回は、ひと月空いて7月・8月開催の予定です。
現在、グランドフィナーレに向けて諸々調整中ですので、課題図書、創作テーマ、チケット発売日は後日Twitter及びhoshiboshiサイトにて発表いたします。楽しみにお待ち頂けますと幸いです。
終了後のアンケートでお寄せいただいた下記のご感想なども参考にお読みいただき、多くの方にご参加いただけることを心待ちにしています。

ワークショップ後のアンケートでお寄せいただいたご感想

皆さんの書き抜きや意見を聴かせていただくことで、自分では見落としていたり、考えなかった点に気付くことができて、とてもためになります。いろいろな読みができる自由さのある文章をけたなら、と感じました。
いろいろな意見を聞きながら1冊の本をじっくりと読むという機会があまりないため、とても有意義だったと感じました。読み方の異なる方々の作品を読むのも楽しみに思っております。
今回、全作品、ほしお先生からの講評がいただけたのがとてもよかったと思います。やはり他の人の作品の、自分では気付かない良さや改善点を知られるのも学びだと思うので。とても勉強になるワークショップの開催、いつもありがとうございます。

他、多数のご意見をいただいております。
参加者の皆さま、ご協力ありがとうございました。

執筆:第4回ワークショップ・ナビ 横井けい

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