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「クリエイティヴであり続ける生き方」を保つための、唯一無二の処方箋(菅付雅信『インプット・ルーティン』を読んで)

僕が2020年に、1年間通い続けた「菅付雅信の編集スパルタ塾」。

講師を務める菅付雅信さんの新著『インプット・ルーティン 天才はいない。天才になる習慣があるだけだ。』は、「特別」な人を目指すためのガイドラインである。フルマラソンは、練習なしで走り切ることはできない。否、まぐれで完走はできるかもしれない。

しかし、長くランナーとして活躍するためには、不断の努力が欠かせないわけで。そのためには練習の「質」と「量」を確保しなければならない。

もちろんランナーは比喩だ。菅付さんの記す「質」と「量」は、「クリエイティヴであり続ける生き方」を保つための、唯一無二の処方箋である。その薬は苦いし、ずっと飲み続けなければならない。だけど効き目は抜群だ。

すぐに天才になれるわけではない。でも、少しでも天才に近付きたいのであれば、ぜひ本書を手に取ってほしい。

編集者として、クリエイティヴ教育の担い手として豊富な経験を積み重ねてきた菅付さん。彼だからこそ書ける、クリエイターのための指南書だ。

『インプット・ルーティン 天才はいない。天才になる習慣があるだけだ。』
(著者:菅付雅信、ダイヤモンド社、2024年)



──

You are what you read, see and listen.

編集スパルタ塾でも、その後の飲み会でも、菅付さんが常に言い続けている
言葉。それが「You are what you read, see and listen.(あなたは、あなたが読んだもの、見たもの、聴いたものによってできている)」だ。

金言であり、このたび僕の座右の銘になった。

超一流のクリエイターと接する中で、菅付さんは、彼らの鞄の中身を見せてもらうことがあるという。そのたび「現在並行して読んでいる本や雑誌や資料でパンパンになっていることが多くある。デジタルデバイスで読んでいる人はかなり少ない」ことを実感するのだという。

坂本龍一さんも死の間際に、「読書の時間が1日あたり2〜3時間かな」と言っていたそう。猛烈なインプット、それを長年ルーティンとして続けていくことで、創造的なアウトプットが生まれるのだろう。

その前提として(「インプット・ルーティン」をいったん傍において)、「You are what you read, see and listen.(あなたは、あなたが読んだもの、見たもの、聴いたものによってできている)」という言葉を考えてみる。本当にその通りで、偏ったものを読めば偏る人間になるし、ライトな本ばかり読んでいればライトな読書体験しか得られないだろう。

菅付さん曰く、「時間を無駄にする『暇つぶし』は、英語で『killing time』といい、日常的に暇つぶしを続けることは『killing life(人生を殺す)こと』だ。「今」という時間は、今しかないわけで。そのときにベストなインプットを志さない限り、成長はあり得ないのである。

話がきてからはじめて考え出すようでは、遅い

「インプット・ルーティン」の要諦のひとつは、「備える」ことであると僕は解釈している。

よほどのクリエイターでもない限り、年がら年中、最高の仕事に着手しているわけではないだろう。(もちろん「最高の仕事」をしているという心持ちで仕事に臨むことは大切だが)

だが、ひょんなことから、「こんな仕事できますか?」というオファーがくることがある。

・やったことがない分野
・難易度が高そうな仕事
・思いがけずプレゼンスの高そうなプロジェクト
・いつかやれると良いなと思っていた仕事

尻込みして「No」という人は少ないかもしれないが、報酬をもらうプロとして高いアウトプットを出すことは絶対的に求められるわけで。「はじめてだから」と言い訳せず、相手の期待を常に上回ることがプロだとしたら、オファーがくる前からインプットしていなければ話にならない。(もちろんオファーが来たら、それはそれで超集中的にインプットするわけだが)

正直、僕は最近、映画ばかりに夢中になって、音楽やアートに触れる機会を疎かにしていた。慌てて『ミュージック・マガジン』や『美術手帖』を購入し、インプットを再開している。(久しぶりに読んだら、面白いのなんのって!)

note末尾にも記しているが、本書は菅付さんがセレクトしたメディアガイドがいくつか紹介されている。それを眺め、取り入れるだけでも、質の高い「インプット」の入り口に立てるであろう。

「特別」な人になるための習慣を

編集スパルタ塾に通っていたとき、菅付さんが僕らに語りかけてくれた言葉がある。

「クリエイティブな世界に“普通”の人はいらない。“特別”な人になれ」

ナンバーワンよりもオンリーワン。個性が尊重される時代になっていて、僕はそれを全く否定しないし、その通りだとも思っている。だが、「オンリーワン」がだんだんと“ありのまま”の肯定だとズレて伝わっているのが現在のような気がしている

人間は怠惰な生き物だ。すぐにサボってしまう。

新しいことを学ぶのは面倒くさい。時間もとられる。だったらXでバズるポストを捻り出した方がコスパがいいかもしれない。だが菅付さんは「それではダメだ」と一喝する。

すぐに使えそうなアイデアやテクニック、時流にピッタリ合ったクリエイティヴのトーン&マナーというのは、賞味期限が悲しいほどに短い。
いま流行っているTikTok動画や、ヒットしているポップ・ミュージック、最新のファッション・トレンドを勉強して、それらのフォロワー的なアウトプットを出すようなもので、二番煎じがある程度の売り上げを占めることはよくあるが、二番煎じを続けていてクリエイティヴの第一線で長年活躍することは、評価の面はもちろん、商業の面でもむずかしいだろう。

(菅付雅信(2024)『インプット・ルーティン』ダイヤモンド社、P8より引用)

朝井リョウの『何者』では、主人公の二宮拓人や宮本隆良という人物が、大した努力もせずに他者を蔑むように批判して、結局「何者」にもなれないことに絶望する姿が描かれていた。

もちろん、努力を重ねて、結果的に「何者」にもなれないことはあるのだろう。だが死に際になって、努力を重ねて「何者」にもなれなかった自分と、努力を重ねずに「何者」にもなれなかった自分とを比べたとき、どちらが誇らしく息を引き取ることができるだろうか。

「どうせ何やっても『何者』にもなれないんだから、コスパ良く生きてラッキーだったわ」。少なくとも僕には、そんな死に際は全く想像ができないし、したいとも思わない。

やっぱり、今からでも、いつからでも、僕は、特別な人になりたい。せっかくだから、自信を持って納得できるものを世の中に遺しておきたい。

ということで、特別(天才)になる習慣を、今日からコツコツと続けていきたいと思います。

──

インプットのひとつのガイダンスとして、菅付さんがまとめた以下のリストも非常に参考になります。

  • クリエイションを学ぶための100冊(美術、音楽、デザイン、建築、映画、写真、批評・評論・サイエンス、ポップカルチャー、広告、歴史、文化人類学、テクノロジーのジャンルから100選)

  • 菅付さんが定期購読しているファッション&カルチャー系の雑誌(ファッション、カルチャー、デザイン/インテリア、写真、アート)

  • クリエイティヴ・インプットとしての映画ベスト100(1910年代から2020年代まで100選)

  • クリエイティヴ・インプットとしてのアート・写真ベスト100(1900年代から現在に至るまで100選)

  • クリエイティヴ・インプットとしての音楽アルバムベスト100(現代音楽、ジャズ、日本のロック/ポップミュージック、ロック、エレクトリックミュージック、クラブミュージック、ブルース、ヒップホップ、レゲエ&ダブ、映画音楽、ワールドミュージック、ラテン/ブラジルのジャンルから100選)

  • 口のインプットの参考図書13冊

こうして「何をどんなふうに取り上げたのか」と箇条書きにするだけで、菅付さんの「編集」の意思を感じます。

どんな営みにも、必ず「編集」という意思を込める。僕もそうあらねばと再認識した読書体験でした。多くの方のインプット・ルーティンの一助になりますように!

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菅付さんの私塾「菅付雅信の編集スパルタ塾」に通ったこと、それからの自分自身の気付きについてnoteでもまとめています。

本書に関心のある方、ぜひご参考までに。

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