見出し画像

そうだ 無駄話を、しよう【アイディアを生み出す“愛すべき無駄”のつくりかた】

ところで、皆さんは無駄を愛していますか?

私はとても矛盾した人間なので、研修講師やコンサルの立場では無駄を厳しく指摘させていただいていますが、私の人生や価値観は「無駄」でできています。

愛車のミニクーパーで夜な夜な6万Km走り回った20代前半。その歴史を「無駄」と言われればぐうの音も出ません。しかし、私の仕事も家族も無駄から始まっているのも事実。

今日のテーマは「無駄」。それも「愛すべき無駄」がいかに大切かについて考えていきます。

1.無駄がイノベーションを生む

コワーキングスペースやコミュニティの必要性が高まっています。

「オフィスが無駄になった」というのは結果論であり、実は感染拡大の前からコミュニティの必要性は高まりつつありました。

その狙いは【新しい価値をつくる】ためです。

■コミュニティマネジメントの必要性

私の師匠であるコミュニティマネジャーの加藤翼さんは、コミュニティの必要性についてこう述べています。

昔は無駄と思われた他者とのコミュニケーションが、今では価値の源泉になった。社会の評価が変わり、職業が生まれた。
東洋経済2019年4月13日号「新たに生まれる仕事の共通点」

■対話→イノベーションの学術的エビデンス

また、先の5/20【HRカンファレンス】でお世話になった伊達洋駆さんのお話によると、対話はイノベーションの創出に効果があるとのことです。

対話→イノベーションの関係性について
海外88社4418名への調査によると、マネジャーによるメンバーに対するコーチングによって、イノベーション行動が促進されることが示されました。
(出所:Pajuoja, M. and Viitala, R. (2020). Managerial coaching and innovative work behaviour: Different needs in different dimensions. In ISPIM Conference Proceedings (pp. 1-20). The International Society for Professional Innovation Management (ISPIM).)
イノベーション行動は、①アイデア探索、②アイデア創出、③アイデア支持、④アイデア実装の4種類に分類されます。対話は一見アイデア創出に強く影響しそうだと思われますが、実際には、特に④アイデア実装に対して好影響がありました。
つまり、対話はイノベーティブなアイデアを生み出すことはもちろん、その実現を近づけることにも有効であることが分かります。
HRカンファレンス5/20講演より

■事例
「アマチュアスポーツでもプロ並みのカメラワークでボールを追いかけたら、もっとスポーツ観戦が面白いのに」という発想から、NTT西日本×朝日放送×イスラエルのAIベンチャーによるイノベーションが誕生しているそうです。

…「発想」であって、「戦略」ではないのですね。

「戦略」は会議で生まれます。では「発想」は?


そうです。「愛すべき無駄」から始まります。まさに雑談や対話。

一方で職場には「憎むべき無駄」も存在します。ハンコ出社とか。

この2つを混同してはいけないと思うんです。

2.合理主義な「管理」の限界

個人的にとても気に入っている学者さんの一人、大阪市立大の斎藤先生。今朝の日経で興味深いお話しを読みました。

米国の文化人類学者デビッド・グレーバーが指摘したように、最近登場したのはスマートフォンやメール、ビデオ会議など自らの時間を節約し管理する「管理機構的な技術」ばかり。いつでもメールが書け、仕事ができるようになったがタイムマシンのような「詩的な技術」は現れない。
労働生産性や生活の効率が高まるだけで、人生は豊かにならない。むしろ生産性が高まりすぎて、労働者自身も意義を説明できないような必要性が低い仕事が増えた。
管理脱し「詩的技術」狙え 大阪市立大学准教授 斎藤幸平氏
2021年8月2日 日本経済新聞 朝刊

いいですね〜。切れのあるストレートな主張。

つまり、よくも悪くも無駄を排除し続けると「管理機構」ばかりが強くなる。そのせいでロマンとか、詩的な技術が現れにくくなる。

#日経COMEMO #NIKKEI

3.アイディアを潰す上司

今お世話になっているクライアント様で、若手社員が私に訴えてきたことがあります。

新しいアイディアを出せって上司が言うけど、結局「そんなのダメだ」って潰しているのも上司自身なんです。

続けざまにその方が話してくれました。

結局、上司は居心地が良いのだと思います。だから影で人の悪口を言って、自分に忠誠を従う人を見極める。「根回しがない」「私は聞いていない」と言うのは、変化によって居心地が崩れることを恐れているんでしょうね。

もう、あなたがコンサルをやってくれ。手放しで素晴らしい観察と仮説構築でした。

ここから言えることは、居心地の良い上司の皆さん。若手社員はよく見てますよ。そのハンモックのひっくり返し方を。

4.無駄を愛する職場をつくるために−リーダーはボケろ

最後に提言です。

ここまでのまとめとして言えることは次の2つです。

【居心地のいい上司があらゆる無駄を排除した結果、新しいアイディアを潰している】

一方で、

【対話や雑談とはもともと”無駄”だと思われていたこと。しかし、そんな無駄が新しい価値を生んでいる】

この二項対立をうまくマネジメントすることが、未来の組織をつくるのでしょう。

そこで、スタートアップ・ベンチャーを経営している私からのおすすめは、

リーダーよ、ボケましょう

ボケるとは何もギャグを言ったり笑いを取ることだけではありません。(私の場合、笑いを取ることも追求しますが。)

1.敢えてできないことに挑戦して失敗をしてみる

2.失敗をして仲間に助けを求める

3.懲りずにまた挑戦する

これが大事だと思ってます。

例えば私の場合

1.対話の思いつきで研修プログラムをつくったものの、途中で飽きて頓挫する。

2.飽きたため過去に作ったプログラムをはめたところ、さらにゴチャゴチャになって見たくも無くなる。だから、論点の整理がうまい仲間に助けを求める。

3.「言いたいことが一貫していない」と痛いFBをもらい、また新しいプログラムをつくる。

仲間から見ると、私の仕事のやり方が迷惑か迷惑じゃないかと言ったら、微分をすると「迷惑」でしょう。

一方で積分をすると「楽しい」のかなと思います。それゆえ多くのプログラムや新しい実験が行えています。

これをリーダーがボケずに正論だけ言っていたら、「楽しい」要素も消えると思うんですね。こうして管理機構ができるのでしょう。


ですから、ボケて愛すべき無駄をつくることが未来の価値をつくると信じています。

そうだ 無駄話を、しよう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?