ほりごん

ほりごん

最近の記事

【日本史】いまは京 むかし鎌倉 しのぶ春

 「あなたはどんな場面でストレスを感じますか?さっ、あまり深く考えずに、思い付いた場面をお手元の用紙にお書きください。」と促されるまま、私は「ワガママを言われる場面」と書く。引き続き「それは、例えばどんな場面ですか?」との問いに対し、「私にとってどうでもいい無関係な話を長々と聞かされる場面」と書き、「もう少し具体的に書くと?」と言われ、「気付くや否や自分で解決したほうが早く済むくらいの瑣事にも拘らず、相手から『こういう問題に私は気付いた』という事だけを宣告され、こちら側に何ら

    • 【美術】ローカルが あってナンボの グローバル

       高校時代の現代文の鬼教師による読書感想文の宿題。時系列は前後するが、その12作目の粗筋は、私の記述によると次のようなものだった。  「一六〇〇年代初期、鎖国中の日本で、キリスト教は大きな迫害を受けていた。そこで、日本の信徒を救い、ポルトガルのイエズス会が派遣したフェレイラ教父の消息を探るため、三人の若い司祭は立ち上がった。しかし、一人は病に伏せ、澳門で日本人・キチジローを見つけ、日本の漁村・トモギ村にひそかにたどり着いたのは、ガルペとロドリゴの二人だけ。しかも、炭小屋に隠れ

      • 【生物】至難なり 文句も言わず 生きるのは

         「いいか、世の中にはオマエたち以外にも色んな生き物がいることを頭に叩き込んどけよ!オマエたち、10代の今だって『あの授業が退屈だ』とか『この先生がイヤだ』とか不平不満ばっかり垂れ流してるだろ。それな、20代・30代になっても変わらないぜ。人と場合によっては悪化するかもしれない。『あの仕事が退屈だ』とか『この上司がイヤだ』とか、そんな感じで死ぬまで文句言ってる。動物は文句を言わず、ただ生きている。生まれながらにして“完成品”の動物は、文句を言う必要が無いからな。馬も鹿も生まれ

        • 【漢文】高校や 予言は的中 好々爺

           これが春の匂いというものか。その匂いを全身で確かめる。まだまだ市街地の目抜き通りにまで雪の残る信州の如月に、いきなり汗ばむ日が襲来した。これでもう4年も奴隷の如き――まあ元来サラリーマンとは賃金奴隷であるからして当然なのだけど、奴隷の如き――営業をさせられて、4月になれば5年目に突入か。それを想像するだけで憂鬱だった。正確に言えば、営業が嫌なのではない。時折、顔や手足が痙攣する程の長時間労働が嫌なのだ。ああ、それと今の仕事が嫌なのは、あの上司に因るところも大きい。彼を見てい

        【日本史】いまは京 むかし鎌倉 しのぶ春

          【現代文】青春を 信濃に偲ぶ 独り酒

           高校時代の鬼教師による読書感想文の宿題。その10作目の粗筋は、私の記述によると次のようなものだった。  「八才の良平は、毎日村外れへ軽便鉄道の敷設工事を見に行った。トロッコを用いた土の運搬作業を見ているうちに、彼は自分も土工になりたい、そして一緒にトロッコに乗りたいと思うようになる。ある日、願いがかなって、良平は若い二人の土工と一緒に、本線を行くトロッコに思う存分触れることができた。しかし、押しては乗り、乗っては押しているうちに遠くまで来てしまい、日も暮れかかる。『優しい人

          【現代文】青春を 信濃に偲ぶ 独り酒

          【地学】男でも 海の底では 役に立つ

           二日酔いで仕事をするのが、この歳になると徐々にしんどくなり、アルコール依存症気味の私でも平日はそれなりに節制するようになった。だが、その反動とやらなのか、とりわけ土日と祝日を含む三連休前の金曜あたり、箍の外れ方が寧ろ以前より荒くなっている気もする。酔い潰れて何処ぞの誰かに迷惑の及ぶような失態は演じないまでも、適量というか、限界というか、「今日の楽しさ」という売上が「明日の苦しさ」という費用を下回り始める“飲酒の損益分岐点”が未だに分からない。自分の躰にも拘らず、否、自分の躰

          【地学】男でも 海の底では 役に立つ

          【現代文】空の青 海のあをにも 染まりたし

           「白鳥(しらとり)は かなしからずや 空の青 海のあをにも 染まずただよふ」と、鬼は黒板に書くと「これが大正四年四月発表のやつ。」と紹介する。続いて「白鳥(はくてふ)は 哀しからずや 海の青 空のあをにも 染まずたゞよふ」と書き「これが明治四十年十二月発表のやつ。ちょっと違うだろ、フィーリングが。この他にも3つばかりある。つまり、5つの中から吟選したのが大正四年のやつというわけだな。ここまで推敲に拘るのが『歌人』という生き物なんだ。」と紹介する。  「野口英世は医学に貢献し

          【現代文】空の青 海のあをにも 染まりたし

          【物理】我が誇り 屈折しようと 真っ直ぐに

           先輩からお礼のメールが届く。「先日はお世話になりました。やっと職場復帰しました。素晴らしき宴に、はしゃぎ過ぎたせいか、翌日(20日)夕方から、たぶん38度以上の発熱で、フラフラになりながら何とか研修を受けていました。夜、やっと病院へ行き、新型インフルではなく扁桃腺炎と診断され、会社を休んでいたのです。貴君との宴の中で、私の頭に鮮明に残っているのは、本社の諸先輩方が『何故またベルなんかと交流があるのか不思議だ』と貴君へ素朴な疑問を呈しているとの報告です。周囲からの冷ややかなプ

          【物理】我が誇り 屈折しようと 真っ直ぐに

          【生物】弁えず 世の為などと 言うなかれ

           「礼子の部署で、課長から全員へこんなメールが届いたらしいの。見て見て!」と春恵さんから転送メールが届く。この一文のみで、野次馬根性に満ちた彼女の笑みが容易に想像できる。  「昨日より体調は良いのですが、相変わらず声がほとんど出ません。すいませんが、私宛の電話を受けた場合はメールで用件を送ってもらうように相手方へお伝えください。アドレスをご存じない等、どうしようもない際は出ます。よろしくお願いします。」  私がメールを読み終えたのを見計らっていたかのように、春恵さんがわざわざ

          【生物】弁えず 世の為などと 言うなかれ

          【化学】【数学】風吹けば 桶屋儲かる 会社員(その2)

           「盲信できる将来」というものを疾うに失ってしまえば、己の成長が無い分、「つまらなさ」だけが鬱積していくのは必定だということだ。  人生の目標みたいなものは9割達成した。父は早世だったので些か残念だったが、母を天国に送るまではそれなりに孝行できた。孝行といっても、注いでくれた絶大なる愛情の泉のごく一掬に報いたに過ぎぬが、父の借金を返済し、マンションを購入し、そのローンも完済し、一緒に旅行を満喫し、生前に戒名を授かり、墓の不安も払拭し、働きながら晩年を自宅で介護した。私にとって

          【化学】【数学】風吹けば 桶屋儲かる 会社員(その2)

          【化学】【数学】風吹けば 桶屋儲かる 会社員(その1)

           「こんなにもお天気の日に、こんなにもつまらない事を一体どうしてやらなければならないのか?」と問いながら、苦手科目に集中しようとしても、脳も手足もついていかない。そりゃ答えは分かっている。つまらなくても、やらなければ、卒業できないし、進学できないし、就職できない。そうなると、給料が貰えないし、生活に困るからだ。「高校生は勉強が仕事」とは全く言い得て妙なものである。勿論、卒業しなくても、就職しなくても、給料を貰わなくても、何らかの形で飯は食えるのだろうけど、私にはそこまで逞しい

          【化学】【数学】風吹けば 桶屋儲かる 会社員(その1)

          【古文】仰ぎ見る 巨塔と月と 我が恩師

           「古典」は退屈だったが「古文」の授業は面白かった。面白かったといっても、あのスパルタ高校なので、「次に挙げる全ての助動詞について、表記してある通りに暗記して下さい。1週間後に口頭試問または筆記試験を行います。古文解釈の上で非常に重要ですから完全に覚えて下さい。未然形接続/る・らる・す・さす・しむ・ず・む・むず・じ・まし・まほし・り(サ変のみ)。連用形接続/き・けり・つ・ぬ・たり(完了)・けむ・たし・・・」といったプリントが毎週のように配付され、まさに「けむ・たし(煙たし)」

          【古文】仰ぎ見る 巨塔と月と 我が恩師

          【日本史】働いて 産んで育てろ そりゃ酷だ

           「でもよ、『強い奴が勝つのではない。勝った奴が強いのだ。』って、あれ、披露宴のスピーチで言うネタか?新郎の仕事に対する激励とかかなあ。」と夏川さん。「そんなオツム良さそうな上司には見えんかったですよ。あれは『美人が結婚できるとは限らへん。結婚できた奴が美人なんや。』って、新婦に対する暗示とちゃいます?」と春恵さん。他人の披露宴とは、結局のところ儀礼的に出席するイベントに過ぎず、心から愉しむ方法が見つからない――この点において相変わらず三人の価値観が合致しているものだから、そ

          【日本史】働いて 産んで育てろ そりゃ酷だ

          【社会科見学】忠犬や 春の主人を 慕う鍋

           「女は自分を映す鏡。ミラーだらけの部屋で映すのは躰だけじゃないの。男は定期的に自分の『存在』を映すために、高い授業料を払ってソープへ行くの。『大した男ではないこと』『結局マスターベーションが最も気持ちいいこと』、主にこの2つを復習するためにソープへ行くの。ベッドの横にも天井にも張り巡らされたピッカピカの鏡を見ながら、自分って男はしょうもない存在なんだって確認するの。でもね、鏡だけじゃないのよ、アナタを映しているのは――。艶めかしい風俗嬢の反応が、アナタの“オトコとして価値”

          【社会科見学】忠犬や 春の主人を 慕う鍋

          【物理】長髪を 切って挑発 してオクレ

           無論その声に耳を傾けるには傾けているのだけど、いざ感想を求められると返答に窮してしまうといった題目は、世の中に溢れている。「ねえ、ちょっと、私の話、聞いてるの?」「へぇ?聞いてるよ、けど、どう思う?って訊かれてもなぁ…」という奴だ。ごく稀に、食事に頓着しないという人に出会うけれど、そのタイプの人へ「そうそう、駅の反対側に出来たお店、ローストビーフが美味しいらしいよ」と世間話を始めたところで、いまひとつ反応が薄い。三度の飯など適当で構わないという生活様式が私には信じ難いものの

          【物理】長髪を 切って挑発 してオクレ

          【現代文】先に立つ “航海”も無く 旅に立つ

           高校時代の鬼教師による読書感想文の宿題。その9作目の粗筋は、私の記述によると次のようなものだった。  「人口千四百の小島・歌島に、山川運送の船主・宮田照吉の娘・初江が老崎から戻る。母と弟・宏と三人暮らしの漁師・久保新治は、美しく心やさしい初江と恋に落ちる。しかし、観的哨で待ち合わせた嵐の日、二人が体を乾かすことから互いに裸になったのがきっかけで、村中にあらぬ噂が立った。初江の聟候補の青年会支部長・川本安夫は、この噂に怒り、深夜に村の水汲み当番で泉に来た初江を犯そうとして失敗

          【現代文】先に立つ “航海”も無く 旅に立つ