辛島正英(不動山大聖院)

真言宗僧侶・法螺貝が好きで音の研究、身体技法、音の調律(チューニング)を追求中。 法螺…

辛島正英(不動山大聖院)

真言宗僧侶・法螺貝が好きで音の研究、身体技法、音の調律(チューニング)を追求中。 法螺貝の新調依頼や修理・加工の依頼を受けたりしながら、現在は宗派や流派を超えて九州や関西を中心に法螺貝講習会を開いています。 YouTube『立螺』にて色んな法螺貝の音を上げております。

最近の記事

再生

法螺貝の作り方

令和5年3月31日に広島密教青年会さんが企画・主催されました「法螺貝の作り方と吹き方」という講習会の「法螺貝の作り方」の資料を動画にまとめました。 動画の情報だけだと分かりにくい点もあるかと思いますが、何かのご参考になれば幸いです。

    • 法螺貝談義(第64話・おしまい)

      ※少し長いです。 なんとなくの呟きのつもりで始めて、続けていたらあっという間に第64話になりました。(ちなみに今回のnoteでの記事は以前の改訂・推敲版です) コロナ禍でリアルでの法螺貝の講義が出来ない状況が続き、何か法螺貝に関することを発信したいなと思ったのがきっかけでした。 実際の講義では目の前での状況や前後の流れの文脈で、相手によって言葉を選び、お話させて頂くので最初の頃は言葉で具体的なことを表現するのは躊躇いもありました。 ただ逆に、こうして文章にするというア

      • 法螺貝談義(第63話)

        思い通りにならず、うまくいかない事への態度で得られるものはとても大きく、その気付きを与えてくれるのも法螺貝です。 法螺貝は基本は唇の左側か右側のどちらかを使って音を出します。 とにかく最初は違和感でしかありません。 これは最初はこの動作そのものが非日常だからで、自分の唇でさえうまく動かないという事を痛感します。 練習の過程の中で、自分の身体も心も思い通りにならないという気付きがあったりと、得られる事はたくさんあります。 法螺貝を思い通りにしたいという気持ちは、深く追

        • 法螺貝談義(第62話)

          徹底的な執着の勧め。 「執着」と聞くと言葉の響きからしてマイナスをイメージしますが、法螺貝においては音や響きに徹底的に執着することは大切かと思います。 そして執着による「工夫」が大事。 「工夫」という言葉は仏教が由来で、手間隙をかけて様々な思索を凝らす事として重視される考え方です。 この場合、執着がどこに向かっているのかを考察いたしますと、大概の方は、少しでも良い音を聴いてもらいたいという事に繋がっているのではないかと思います。 自分だけ何かを得たいと言うような、た

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          法螺貝談義(第61話)

          鍵と鑰について。 平安時代に生きた空海は数多くの著作を遺しています。 その中に「般若心経秘鍵(はんにゃしんぎょうひけん)」と「秘蔵宝鑰(ひぞうほうやく)」があります。 この二つの著作はセットというわけではありませんが、どちらの著作にも「かぎ」に関する文字が入っています。 それが「鍵(けん)」と「鑰(やく)」の字です。 「鍵」と「鑰」はどちらも訓読みで「かぎ」と読みます。 読み方は同じですが「鍵」はいわゆるキーの🔑事で、「鑰」は錠🔒の事です。 お互いの組み合わせが

          法螺貝談義(第61話)

          法螺貝談義(第60話)

          昔ある方から聞いた法螺貝の面白い話です。 なぜ法螺貝を山で吹くのか?というお話。 これは峯中での情報伝達で使われていたという実際的な理由はありますが、聞いた話では、山は元を辿っていくと大昔に海から始まっています。 海の中での地盤活動や火山活動が何万年もかけて大陸を形成したり隆起したのが山。 では法螺貝は普段どこにいるか? 法螺貝は海にいます。 元を辿れば海から始まった山で法螺貝を吹くのは、何万年の時を経て海に生息する法螺貝(海)と山が再会をするからだと聞きました。

          法螺貝談義(第60話)

          法螺貝談義(第59話)

          法螺貝には深い意味の教義があります。 ただ音を出す事だけではなく、教義を知り意識して吹く事も大切です。 そのためには、先ずは音をきちんと出せる事がとにかく大事と教わりました。 これまで長々と身体面や音の響きといった観察や感覚について書いてきましたが、人というのは先ず〈ある程度〉吹けるようになりませんと、教義への意識に余裕が出てこないのも現実です。 法螺貝を吹く事に身体が馴染んでませんと、音がきちんと出せるかどうかで気持ちがいっぱいいっぱいになりがちです。 それが人と

          法螺貝談義(第59話)

          法螺貝談義(第58話)

          現代では何かを学ぶ際に身体面に触れない事がよくあります。 これは身体が置き去りになり重要性もわからなくなった時代とも言えるかもしれません。 人は体感して納得する生き物です。 思い返すとわかりますが、趣味は趣味になる前に体験が先にあるはずです。 やってみて意外と楽しかったからそれが趣味になったんだと思います。 だから「学ぶ」という事において、意識的なアプローチ〈だけ〉というのはなかなか難しいです。 逆もそうで身体的アプローチ〈だけ〉も同じことです。 もともと心と身

          法螺貝談義(第58話)

          法螺貝談義(第57話)

          一大事の法螺貝。 一大事と聞くと大事件みたいなニュアンスで使われていますが、この言葉は仏教が由来です。 法華経という教典の中に「一大事因縁」という言葉が出てきます。 これは、この世に釈尊が現れた理由(目的)のことを指します。 不安や迷いを感じやすい現代において、釈尊の身体を通した実践の教えは世界中で注目を浴び見直されています。 一大事とは、その智慧を教え(開)、示し(示)、理解させ(悟)、納得して自ら道を実践する(入)ことであり、開示悟入という偉大な事柄(釈尊の目的

          法螺貝談義(第57話)

          法螺貝談義(第56話)

          法螺貝は少しく失った身体を取り戻してくれます。 現代は数字や数値を見て、ものや身体を判断する時代でもあります。 これはいかに人が感覚を無視するようになったかという事です。 体重も血圧も「適正」があるそうですが「適正な体重」や「適正な血圧」って、正解がそもそもあるのかが疑問です。 極端は別として、体重も本人が快適と思うところがあるはず。 骨の太さも、筋肉量も、太りやすさも、心臓の強さも何もかも人によって違います。 「人間とはこうである」とわかっているつもりになってい

          法螺貝談義(第56話)

          法螺貝談義(第55話)

          法螺貝の音色は瞬間の一点物です。 「主人公」と言う言葉がありますが、これは仏教が由来の言葉です。 現在では、物語の主役とか中心人物といった意味合いで使われています。 本来は、外側の何かと比較した自分ではなく本来の自分ということ、主体的に本心に沿って生きると言う意味合いになります。 よく我々は「同じ」という言葉を使います。 概念で括れば、アタマの中では「同じ」はあります。 例えば、「人」とか「花」などのカテゴリーはアタマの中の概念です。 「人」というカテゴリーで括

          法螺貝談義(第55話)

          法螺貝談義(第54話)

          法螺貝には音符がたくさん存在します。 法螺貝は古くから峯中での情報の伝達手段に使われていました。 いろんな吹き方の組み合わせで構成され、それぞれの音符には様々な意味合いがあり、宿に着いた合図や、宿を出る合図など、場面に応じてかなりの数が存在します。 当時はケータイ電話もありませんし、今でも山中は電波の届かないところもありますから大事な伝達手段の一つです。 それから、護摩や法要の合図、進行などにも応じて使われており、各本山や宗派によって、吹き方も違い、奏法や音符は様々で

          法螺貝談義(第54話)

          法螺貝談義(第53話)

          法螺貝の吹き口はたくさんの種類があります。 銅製や金属製、木製のもあったり、中には脱着式タイプもあったりと様々です。 中心に真鍮パイプを入れているものもあります。 どれが良いとか、悪いとかはありません。 どの吹き口でも、全ての遍数や音符は吹けます。 加工が法螺貝に合い、そして自分に合うものを選ばれると良いかと思います。 写真以外にも法螺貝の吹き口はまだまだたくさんの種類があります。 法螺貝は個体もそうですが、吹き口だけでもこんなにバリエーションがありますし、音色

          法螺貝談義(第53話)

          法螺貝談義(第52話)

          なかなか見ることのない法螺貝の内部。 よく考えたら誰が法螺貝を最初に吹こうと思ったのでしょうか? 一番最初に思いついた人に感謝。 YouTube「立螺」

          法螺貝談義(第52話)

          法螺貝談義(第51話)

          安心感、安定感のある法螺貝。 呂律(ろれつ)が回らないという言葉があります。 現在では、言葉が詰まって上手く言えないとか、酔っ払って何を言っているのかわからないみたいな意味合いで使われています。 この「呂律(ろれつ)」というのは声明(仏教音楽)が由来と言われています。 日本音楽の源流の声明(仏教音楽)に音調として「呂(ろ)曲」や「律(りつ)曲」などがあり、雅楽の音階名にも呂音階や律音階があります。(呂、律の詳細は割愛します) 本来は、これらの使い分けや違いが上手く出

          法螺貝談義(第51話)

          法螺貝談義(第50話)

          今回は甲音の一番上の甲3のコツについてです。(よく揺りで使われる音階) 甲3の練習で最も大事なのは、基本となる甲1の音。 なので甲3に注目するよりも、まずは甲1の音を観察します。 甲1をしっかり完成させておけば、そこからの派生の甲2、甲3が簡単に出来ます。 では、どこを観察するのか? それは甲1の音を吹いているときの一瞬の〈返し〉に注目。 返しの瞬間がきちんと甲2の音階に当たっているかを確認します。 返しの一瞬の音が、次の甲2のベースになるためです。 甲2をベ

          法螺貝談義(第50話)