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英国University of Exeter修了(MA in Politics and International Relations of the Middle East) コーカサスについて備忘録的にブログ書いてます

最近の記事

イラン大統領選挙:ペゼシュキアンとは何者か?—予想外な選挙の以外な結果 8号.2024/06/30

予期せぬ事態が起こるイラン大統領選挙 現地時間2024年6月28日、約1年早いイラン大統領選挙が行われた。この選挙は、5月にヘリコプターが墜落し、搭乗していたライシ大統領が亡くなったことに伴う代わりの大統領を選出する選挙である。  イランでは、一応「民主的」な選挙が行われている。民主主義国のように客観的に判断可能な出馬条件を満たすだけでなく、一般に公開されることのない「監督者評議会」と呼ばれる組織による事前資格審査を通過しなければ、出馬することができない。監督者評議会が選

    • イラン大統領ライシ氏の死と、背後に透けるイスラエルとアゼルバイジャンの関係性—7号.2024/06/02

       5月19日、イランのイブラヒム・ライシ大統領を乗せたヘリコプターがイランの東アゼルバイジャン州を通過中に墜落した。ライシ大統領の他に、動機に搭乗していた外務大臣のアブドラヒアン外相、東アゼルバイジャン州の州知事、同州の宗教における最高指導者も死亡した。  イラン憲法第131条には大統領が病気、死亡などにより職務を遂行できなくなった場合、その職責は、最高指導者の同意を得た上で第一副大統領が引き継ぎ、新大統領を決める選挙は、国会議長、司法権長、第一副大統領の三者から成る評議会

      • ニューカレドニアの大規模デモに潜むアゼルバイジャンの関与—6号.2024/05/19

         5月に入りフランスの海外領土であるニューカレドニアで大規模な暴動が発生している。発端は一定の制限を設けつつもフランス系住民の投票権拡大を認める憲法改正をフランス本国の議会が可決したことにある。  これに対し、自分の達の意見が反映されないと人口の約4割を占める原住民族のコナックがデモという形で不満を露わにした。  当初こそ平和的なデモであったが、一部の過激な分離独立派によって暴徒化し、「天国に一番近い島」と呼ばれたリゾート地は、今や街中に黒煙が立ち込め、焦げ付いた車、廃墟

        • 爆発したアルメニアとアゼルバイジャン—5号2023年9月23日

           前回は、2020年の12月12日からアゼルバイジャン側によって封鎖されているラチン回廊とその後に起こった出来事をまとめた。気になる方は以下を参照していただきたい。 https://note.com/embed/notes/nffdfef4d52e3  アゼルバイジャン側が設置したチェックポイントは、ただの境界線ではなかった。ほぼ唯一と言ってよいラチン回廊の通行を許可されていた赤十字の救急車が、15人の患者をナゴルノ=カラバフからアルメニア本国に移送する際、68歳の男性が

        イラン大統領選挙:ペゼシュキアンとは何者か?—予想外な選挙の以外な結果 8号.2024/06/30

          爆発寸前のアルメニアとアゼルバイジャン—4号2023年9月9日

          アルメニアとアゼルバイジャンの関係に地殻変動が起きている。 アルメニアとアゼルバイジャンはナゴルノ=カラバフ(NK)の領土問題を抱えている。1980年代後半から1990年代の初めにかけて大きな軍事衝突があった。その時の衝突でNKを含むアゼルバイジャンの約20%をアルメニアが占領した。 2020年にも軍事衝突が発生した。記憶に新しい第二次NK紛争では、アゼルバイジャンが7つの行政地区(よく緩衝地帯と言われる)とNKの3分の1を奪還した。もう一つの大きな変化は、旧ソ連圏である

          爆発寸前のアルメニアとアゼルバイジャン—4号2023年9月9日

          ナゴルノ=カラバフ情勢を巡る新たな展開—3号2023年4月20日

           ナゴルノ=カラバフを巡る情勢に新たな展開があった。アルメニアの首相パシニャンが係争地をアゼルバイジャンの領土として認める用意があるという趣旨の発言をした。長くナゴルノ=カラバフを巡り争ってきたが、アルメニア側が譲った形となる。  理由は2つあると考えられる。  1つはロシアとアルメニアの関係が悪化していたことだ。パシニャンとロシアのプーチンはウマが合わなかった。外交の多様化を進めるパシニャンはプーチンにとって悩みの種だった。2020年の戦争でもロシアは軍を展開しなかった

          ナゴルノ=カラバフ情勢を巡る新たな展開—3号2023年4月20日

          サウジアラビとイランの国交正常化交渉!両者の思惑と中国の仲介の真相はいかに—2号2023年3月16日

           3月10日、イランとサウジアラビアが2ヶ月以内にお互いの大使館を再開させることに合意したという報道がされた。  世界ではライバル関係にあった両者が関係改善に合意したことだけでなく、それを中国が仲介したことも世界を驚かせた。  米国の中東へのプレゼンス低下が指摘されると同時に、中国の影響力が大きくなっていると報道されている。それらの報道は誤ってはいないだろう。しかし、両者の仲介を中国が最初から施していたわけではない。  イランとサウジアラビアは2019年頃から関係改善を

          サウジアラビとイランの国交正常化交渉!両者の思惑と中国の仲介の真相はいかに—2号2023年3月16日

          ナチス側として戦った人と、反ナチス側として戦った人が共存する国、ウクライナ

           プーチン政権によるウクライナ侵攻から4ヶ月が経過した。  東部では激戦が繰り広げられる様子が報道され、停戦の面影は見えない。  今回は、ロシアがウクライナに侵攻した際、プーチンが口実の一つとした「ウクライナいるネオナチ」について、歴史的背景から記したい。  そもそも「ネオ(新)ナチ」とは、ヒトラー率いるナチス党によるユダヤ人の虐殺などを正当化しよとする人々や考え方、というのが簡単な説明だろうか。   プーチンはウクライナ侵攻に際し、「ウクライナの政権はネオナチである

          ナチス側として戦った人と、反ナチス側として戦った人が共存する国、ウクライナ

          核問題か?政治問題か?イラン核合意の行方—1号2022年6月19日

           前回は、英国の首相ボリスジョンソンが首相の座に居座り続けることができ、なんとか首の皮い一枚繋がった、というブログをお届けした。  このブログも常に、筆者の継続意欲が首の皮一枚の状況だが、今回もなんとか書き上げることができた。  今回は、筆者の専門(自称)中東についてお届けしたい。  イラン核合意だ。  今回は2月7日に筆者が自身のFacebookに投稿した、「【イラン核合意総括】」を加筆・修正するかたちでお届けする。  ソースについてはあまりにも膨大なため、今回は

          核問題か?政治問題か?イラン核合意の行方—1号2022年6月19日

          首の皮一枚つながった、英国のボリス・ジョンソン首相

           英国の首相、ボリス・ションゾンが窮地に立たされている。  6月8日、自身が党首を務める与党保守党(ニュースではよくトーリーパーティーと呼ばれる。これは保守党の前身に当たる党名が由来)で、全下院議員(日本でいう衆議院)による不信任投票が行われた。  事の経緯はこうだ。  2020年の年末、英国全土で2度目のロックダウンが敷かれる中、英国の総理官邸、通称ダウニング10(Downing10:ダウニング街10番地にあることから、総理官邸を指す代名詞として用いられる)で、飲酒を

          首の皮一枚つながった、英国のボリス・ジョンソン首相

          お隣にいたはずの、キーウ(キエフ)に侵攻したロシア軍

           約1年ぶりくらいの更新だろうか。もはや、遡るのも億劫になるほど久方ぶりだ。  さて、ロシアがウクライナに侵攻してから3カ月以上が経過した。  侵攻する前、2022年の年始からウクライナの国境沿いにロシア軍が、大集結していると報道されていた。一体、どのくらいの規模だったのだろうか?  筆者は、その規模感がよく分かる記事と出会ったので、今更ながら記しておきたい。リソースは本記事の最後に記す。また、引用した記事はロシア軍の公式発表ではないことを留意いただきたい。  まず、

          お隣にいたはずの、キーウ(キエフ)に侵攻したロシア軍

          アフガンのカブール空港近郊で自爆テロが発生!政治学者・高橋和夫氏の解説を文字起こし

           8月27日までに、世界のメディアが同時に、アフガニスタンの首都・カブールの国際空港近郊で、爆発があり、多数の死者と負傷者がでていると報じた。  この爆発は自爆テロであり、アフガニスタンで活動するIS系の組織「ホラサン州」の犯行であることがわかってきた。  アメリカのバイデン大統領は、このアフガンでの自爆テロをうけて、26日に国民に向けて演説を行っている。  8月27日、筆者が、日々聞いているTBSラジオの「荻上チキSession」に出演した政治学者の高橋和夫氏は、この

          アフガンのカブール空港近郊で自爆テロが発生!政治学者・高橋和夫氏の解説を文字起こし