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首の皮一枚つながった、英国のボリス・ジョンソン首相

 英国の首相、ボリス・ションゾンが窮地に立たされている。

 6月8日、自身が党首を務める与党保守党(ニュースではよくトーリーパーティーと呼ばれる。これは保守党の前身に当たる党名が由来)で、全下院議員(日本でいう衆議院)による不信任投票が行われた。

 事の経緯はこうだ。

 2020年の年末、英国全土で2度目のロックダウンが敷かれる中、英国の総理官邸、通称ダウニング10(Downing10:ダウニング街10番地にあることから、総理官邸を指す代名詞として用いられる)で、飲酒を含むパーティーが複数回開かれていたという。

 当時、英国では屋内での2人以上の集まりは「業務上必要な」ものを除いて禁止されていた。

 この事件を受け、警察による捜査に入った。

 結果は黒だった。

 ジョンソン自身に罰金は課されなかったものの、ジョンソンの妻キャリーと、側近で財務相のリシ・スナークは£50(約8000円)の罰金を課された。

図1:英国財務相リシ・スナーク

 しかし、ジョンソンにとって失ったものは「お金」なんかよりもはるかに大きかった。

 野党労働党だけでなく、自身の与党保守党からも総追及された。

 さらに、スー・グレイ第二事務次官による事件の調査報告書、通称「スー・グレイレポート」も報告された。

 その中には「これらの集まりの多くで行われたこと、そしてその展開の仕方は、当時のコロナのガイダンスに沿ったものではありませんでした(*1:筆者訳)」と記されていた。

(*1)「What took place at many of these gathering and the way in which they developed was not in line with Covid guidance at the time」

  さらに、この問題について議会で事実と異なる発言を行なったとして、更なる追及の火種にもなっている。

 そんな中、保守党の議員による組織、通称1922委員会(1922 Committee)の委員長グラハム・ブレイディはぶら下がり会見を行い、保守党全下院議員359人うち15%、つまり54票の不信任が集まったとして、保守党下院議員によるジョンソンへの不信任投票を行うと発表した。

図2:1922委員会議長(Chair, 1922 Committee of Conservative), グラハム・ブレイディ

 6月8日に行われた投票の結果は、信任が211票、不信任が148票だった。

 過半数に届かなかったため、ボリス・ジョンソンの総理残留が決まった。

 しかし、4割の議員が不信任票を入れるなど、党内でも批判の声が大きい。

 長らく追及されているこの問題は、途中、ロシアによるウクライナ侵攻により、一旦は落ち着いた。

 しかし、しばらくするとぶり返してきた。

 今後も追及されることだろう。

 ジョンソンが窮地を脱したとは言えない。

 今回の「信任」は数字的な勝利に過ぎないのだ。

UK Prime Minister Boris Johnson to face vote on leadership - BBC News:https://www.youtube.com/watch?v=tDNPBNiqIFU

*Boris Johnson survives leadership vote but 41% of his MPs have “no confidence” - BBC News:https://www.youtube.com/watch?v=E2aeUIrHiYw&t=207s

*What Sue Gray’s partygate report means for Boris Johnson - BBC News:https://www.youtube.com/watch?v=APxYaBTkmuA&t=35s

*ジョンソン首相、ロックダウン中にパーティで飲酒の写真 警察の対応に疑問の声も:https://www/bbc.com/japanese/6156094

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