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爆発したアルメニアとアゼルバイジャン

 前回は、2020年の12月12日からアゼルバイジャン側によって封鎖されているラチン回廊とその後に起こった出来事をまとめた。気になる方は以下を参照していただきたい。

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 アゼルバイジャン側が設置したチェックポイントは、ただの境界線ではなかった。ほぼ唯一と言ってよいラチン回廊の通行を許可されていた赤十字の救急車が、15人の患者をナゴルノ=カラバフからアルメニア本国に移送する際、68歳の男性がアゼルバイジャン当局によって逮捕された。それ以降、ナゴルノ=カラバフのアルメニア人にとって、チェックポイントを通過することは、少なからず精神的な圧力を受けることになった。

 ちなみにその男性は、1990年代に起きた戦争でアゼルバイジャン側が言う「コジャリ・ジェノサイド」に加担した容疑で罪に問われていたためだと主張した。その後、心臓を悪くしていたその男性はバクーにある医療施設に搬送された。赤十字のスタッフを男性を訪問し、それを確認している。

 また、同様にナゴルノ=カラバフから学生をアルメニアに移送する際も、同じ場所で3人の学生が拘束されている。(数日後に解放されている。)

 また、5月にはアルメニアのパシニャン首相は衝撃的な発言をした。これまで争ってきたナゴルノ=カラバフの領土を現地のアルメニア人の安全が確保できれば、アゼルバイジャンの領土として認める用意がある旨、発言した。

 さらに、ICCに加盟するための手続きの開始(批准されればプーチン大統領はアルメニア領内で逮捕される可能性がある)、ニコール・パシニャン現アルメニア首相の配偶者によるキーウ訪問、アルメニアと米軍の合同軍事演習、などこれまで親ロシアと思われてきたアルメニアにしては、ロシアの勘所に触れる行動が続いた。これにより、駐ロシア大使のアルチュニャン氏は抗議のため召喚されている。

 さらに、アンネ・ヒダルゴ、パリ市長を中心としてフランスの地方自治体の首長が、孤立しているナゴルノ=カラバフのアルメニア人に物資を届けるため、大型トラック約10台を引き連れて南コーカサス地方までやってきたことは大きな反響を呼んだ。

ヒダルゴ、パリ市長の訪問の次の日、ナゴルノ=カラバフ(アルメニア側のアルツァフ共和国)のトップが辞任を表明した。

その上で、9月上旬にはアゼルバイジャン軍がアルメニア国境に軍を集結させ始めた。その集結具合から、残されたナゴルノ=カラバフの土地を取り返すだけでなく、アルメニア領南部にも侵攻するのではないか、という憶測すら呼んだ。

当初憶測を呼んだアゼルバイジャン側の南部アルメニア領侵攻

 アゼルバイジャン側がアルメニア南部を侵攻する主な理由は、「ザンゲズル回廊」だろう。アゼルバイジャンには飛地のナヒチバンがある。しかし、本土から飛地に行くにはアルメニア領があるので、自由に往来することができない。そこを繋ぐ動線が、イラン国境スレスレを通るザンゲズル回廊なのだ。

しかし、2023年9月19日に起きた戦争では、アゼルバイジャン軍はナゴルノ=カラバフの侵攻のみに留まっており、アルメニアーアゼルバイジャン国境は安定している。

また次回

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