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お隣にいたはずの、キーウ(キエフ)に侵攻したロシア軍

 約1年ぶりくらいの更新だろうか。もはや、遡るのも億劫になるほど久方ぶりだ。

 さて、ロシアがウクライナに侵攻してから3カ月以上が経過した。

 侵攻する前、2022年の年始からウクライナの国境沿いにロシア軍が、大集結していると報道されていた。一体、どのくらいの規模だったのだろうか?

 筆者は、その規模感がよく分かる記事と出会ったので、今更ながら記しておきたい。リソースは本記事の最後に記す。また、引用した記事はロシア軍の公式発表ではないことを留意いただきたい。

 まず、ロシア軍の超簡単な概要だが、あの広大な土地を5つに分け、それぞれ東・西・南・北、中央軍管区と名付けている。(図1を参照)

図1:ロシア軍の編成地図

 御覧の通り、ロシア軍はロシアの領土を公平に振り分けているわけではない。

 首都のモスクワを管轄に持つ西部軍管区(地図中赤で示される箇所)、チェチェン共和国や、2008年夏季北京五輪の開会式当日に始まったジョージア戦争を戦った南部軍管区(地図中、茶色で示される箇所)は、面積が小さいことが分かる。有事の際、限られた箇所により集中して対処できるだろう。

 一方、東部軍管区や中央軍管区は面積が広く、対処しなければならない範囲が大きい。ちなみに、日本と海を隔て対峙するのは東部軍管区だ。司令部はハバロフスクにある。

 ロシア軍の編成を見ると、ロシアがどこに力を入れているか見て取れる。

 さて、今回のウクライナ侵攻に際し、ロシア軍はウクライナと隣接する西部軍管区、南部軍管区だけでなく、ロシア全土から部隊をウクライナ国境に集結させていた。

 なんと、羽田空港から約3時で行けるハバロフスクから、約1万キロの旅を経てロシアの同盟国、ベラルーシに、東部軍管区の司令部を引っ越ししたらしい。その中に、編成される陸軍の第5軍、第29軍、第35軍、第36軍、海軍で太平洋艦隊に所属する第155海軍歩兵旅団も引き剥がされ、ベラルーシに配置されたとのことだ。

 例えるならば、日本の自衛隊で北海道を管轄する北部方面隊の総監部を丸々沖縄に移動させた、といったところだろうか。

 自衛隊は、日本を5つの区分にし防衛を行なっている。(図2を参照)。

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図2:陸上自衛隊の編成地図

 「方面隊」という構成単位は極めて大きい。ロシアの東部軍管区、司令部の引っ越しがどれくらいの大ごとか分かっていただけただろうか。

 ちなみに、ウクライナの首都キーウ(キエフ)に侵攻したのは、引っ越しした東部軍管区所属の第35軍、第36軍が主らしい。テレビでロシア軍が首都を陥落させるのに苦労していると報じられたが、実は日本のすぐ隣にいた部隊だったのだ。

 文字通り、東を防衛しているから「東部」軍管区なのであって、それを根こそぎ西のウクライナ侵攻のために移動させるのは、もはや意味が分からない。

 つまり、それくらい「本気」ということであろう。

*Roundeli Foundation:https://gfsis.org.ge/russian-monitor/view/3121

*【緊急対談 河東哲夫×小泉悠】ウクライナ戦争 その真実と今後の展開(中編/全3回):https://www.youtube.com/watch?v=_OxX0wL6yqY



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