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爆発寸前のアルメニアとアゼルバイジャン(1)

アルメニアとアゼルバイジャンの関係に地殻変動が起きている。

アルメニアとアゼルバイジャンはナゴルノ=カラバフ(NK)の領土問題を抱えている。1980年代後半から1990年代の初めにかけて大きな軍事衝突があった。その時の衝突でNKを含むアゼルバイジャンの約20%をアルメニアが占領した。

2020年にも軍事衝突が発生した。記憶に新しい第二次NK紛争では、アゼルバイジャンが7つの行政地区(よく緩衝地帯と言われる)とNKの3分の1を奪還した。もう一つの大きな変化は、旧ソ連圏であることからロシアの「裏庭」と位置付けられていた地域に、トルコやイスラエルといった地域大国が台頭してきたことや、結束が固いと思われたアルメニアとロシアの関係が大きく変化していることだった。

また、極めて不安定な状況で停戦を迎えたことも後に遺恨を残すことになる。アゼルバイジャンは、かつてNKでアゼルバイジャン人が多数派の最大街で、NK第二の街としても知られるシュシャを奪還した。アルメニア本土から、NK最大でアルメニア人が多数派の街、ステパナケルトに辿り着く道中にはそのシュシャが位置している。世に知られるラチン回廊である。

停戦合意の内容には、ラチン回廊と残りのNKはロシア軍の平和維持軍が監視することになっており、実際に南部軍管区、第2親衛戦車軍、第15独立親衛自動車化狙撃旅団が派遣されている。

事の始まりは2022年12月12日、予想を裏切る事なくアゼルバイジャン側がラチン回廊を封鎖した。名目はNKでの環境破壊を許さない環境活動家とのことだが、当局も関与した組織的なものとされる。それにより、ステパナケルトへの物流が滞った。

さらに、2023年にはアゼルバイジャンが、アルメニア側から輸送されてくる違法な武器等を防ぐ趣旨としてチェックポイントを設立し、アゼルバイジャン軍が管理し始めた。

アゼルバイジャンが設置したチェックポイント

この頃、ラチン回廊の長引く封鎖にNKのアルメニア側支配地域の住民にも影響が出始めた。あらゆる物資が足りなくなった。スーパーには空の棚だけが残り、ガソリンも底を付き自動車を動かすこともできず、薬も足らない状況に陥った。既に1人が餓死、3人が栄養失調で死亡しているとも報道されている。

眠いので明日へと続く


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