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著…桂望実『ボーイズ・ビー』

 70歳と12歳の友情を描いた小説。


 ※注意
 以下の文は、結末までは明かしませんが、ネタバレを含みます。


 園田栄造は70歳。
 結婚歴はなく、一人暮らし。
 靴をオーダーメイドする職人。
 昔ながらの職人気質。
 はっきり言って口が悪いです。
 自宅からアトリエまでアルファロメオで通い続けていて、ファッションにもかなりのこだわりがあります。
 人との交流を嫌い、お客とも最低限の会話しかせず、気に入らない人間は誰だろうと容赦なく追い返します。
 内心、年を取ったことで「靴作りの腕が衰えたのでは…」と憂鬱になっています。

 川畑隼人は12歳。
 小学6年生。
 母を亡くしたばかり。
 父と弟・直也との3人暮らし。
 父親からは直也にとって良きお兄ちゃんであるよう期待され、学校では良き学級委員として期待されています。
 「どうやったら幼い直也が母の死を受け入れてくれるのだろうか」という悩みや、「おばがやたらと出しゃばってくる」という悩みを抱えつつも、父親に心配をかけたくなくて相談できずにいます。
 自分だって母を亡くしたばかりで辛いのに、つい、頑張りすぎてしまいます。

 そんな2人がアトリエの前で偶然出会いました。

 はじめ、もともと口の悪い栄造は「この仕事場にあるもんに勝手に触ったら、殺すぞ」と隼人を脅しました。

 それどころか、栄造がタバコをポイ捨てしたのを隼人が注意したため、栄造は苛立ちました。

 これじゃどっちが子どもか分かりません!

 しかし。

 栄造は、隼人を哀れむわけでも、かといって甘やかすわけでもなく、対等に接してくれました。

 隼人の悩みを聞いて、表現は荒っぽいけれども、しっかりとアドバイスをくれました。

 隼人は栄造と話していると、気持ちがスッとするようになりました。

 また、栄造もいつの間にか、隼人が喜ぶと自分も嬉しくなるようになりました。

 栄造は隼人のことを「ガキンチョ」、直也のことを「チビガキンチョ」と呼び続けます。

 その口の悪さはちっとも直る気配はないけれど、なんと栄造もだんだん他人と関われるようになっていきました。

 隼人のためにプリンの作り方を他人に聞きに行ったり、皆と一緒にプリンを作ったり、といったことまで栄造はするようになったのです。

 …以上がこの小説のあらすじです。

 栄造が周りの人たちに支えられてまた納得のいく靴を作れるようになるのか?

 隼人は父親に自分の苦しみを打ち明けられるようになるのか?

 この小説の結末は、ぜひ自分で読んで確かめてください。

 わたしは最後まで読み終えて、とても清々しい気分になりました。




 〈こういう方におすすめ〉
 かなりの年齢差がある友情物語を読みたい方。

 〈読書所要時間の目安〉
 2時間くらい。

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