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著…長田弘『誰も気づかなかった』

 飾らない言葉でありながらも、心を打つ詩集。

 まるで清らかな水の流れのよう。


 わたしが特に好きなのは、

 微笑みがあった。
 それが微笑みだと、
 はじめ、誰も気づかなかった。
 微笑みは苦しんでいたからである。

 苦しみがあった。
 それが苦しみだと、
 周りの、誰も気づかなかった。
 苦しみは無言だったからである。

(著…長田弘『誰も気づかなかった』P6〜7から引用)


 という詩。

 詩というものは考えるものではなく感じるものであるとわたしは思いますが、この詩にはまいりました…。

 うまく言えないのですが、日々あくせく働いていて大事なことを見失ってばかりの己の足を立ち止まらせてくれるような、そんなメッセージが伝わってきたように思います。

 普段、声の大きなものや、パッと目を引く派手なものに意識を向けてしまいがちですが、大切なものは悲しいくらいに静かだと気づかされます。

 また、

 見えない木は存在するのだ。記憶のなかに。それは雨風のひときわ激しい日にだけ、束の間、雨風に煙って、もとのまま現れる。現実だけが世のぜんぶなのではない。

(著…長田弘『誰も気づかなかった』P83から引用)

 という言葉も素敵で、思わず見入りました。



 〈こういう方におすすめ〉
 美しい詩集を探している方。

 〈読書所要時間の目安〉
 30分くらい。

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