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著…NHK「認知症・行方不明者1万人」取材班『認知症・行方不明者1万人の衝撃 失われた人生・家族の苦悩』

 これは10年近く前に出版された本ですが、2023年現在も認知症による行方不明事件が後を絶ちません。

 わたしの身近にも、ご家族による献身的な介護と介護保険サービスや訪問医療を併用しながら在宅で介護をしていたけれど、皆がほんの少し目を離した隙に親がいなくなってしまって半年以上見つからず、憔悴しきっている方たちがいます。

 だから久しぶりにこの本を読み返してみました。

 悲痛な内容なので、読むにはかなりの覚悟を要します。

 この本の中で特に強烈な印象があるのは、認知症の夫が行方不明になって12日後、夫が川で遺体となって発見されたという、イサさんという女性がNHKの取材で語った内容。

 夫とは旅行先でよくスナップ写真を撮影した。

 ところが、夫の死後、遺品を整理していたら、夫の顔だけが黒く塗り潰された写真が次々に出てきた。

 遺影として使えるような写真は、少し若い頃の写真1枚しか残っていなかった。

 …と言うのです。

 「異様な写真を前にイサさんは自分を恥じたという。夫は、認知症となった自分自身が許せなかったのではないか。なにも気づかなかった自分は妻として失格だーー。唯一残った写真を見るたびに今も涙があふれてくるという」

(著…NHK「認知症・行方不明者1万人」取材班『認知症・行方不明者1万人の衝撃 失われた人生・家族の苦悩』 P41から引用)


 失格だなんてとんでもないです。

 本当に失格なら、涙が溢れてくるはずありませんから。

 奥さんが悪いんじゃない、病気が悪いんですよ…。

 また、この本には他にも認知症による行方不明者・死亡者の例が載っています。

 ご家族だけが介護を抱えこむのはどうしても限界がありますし、介護福祉や医療関係者が頑張っても行方不明事件を100%防ぎ切ることは出来ない、と気づかされます。

 様々なサービスを組み合わせたり、GPS機能がある物や氏名と連絡先が分かるものを持ってもらうなどの工夫は出来るとはいえ、ご家族や介護福祉関係者が認知症の人を24時間365日切れ間無く見守るのは難しいです。

 どうしてもちょっとした空白の時間は発生してしまいます。

 わたしがこの記事の冒頭で紹介した身近な人のケースもそうでした。

 関係者全員が辛いですし、行方不明のご本人自身の安否が非常に気遣われます…。

 この本を読む度、わたしは認知症の治療法がより進歩することを願います。

 マンパワーには限界がありますから。

 病気そのものを改善出来るようになりますように…。



 〈こういう方におすすめ〉
 認知症に興味がある方。

 〈読書所要時間の目安〉
 深刻な内容なので、読み進めるペースは遅くなりがちだと思います。
 時折休憩しながら読むと2〜3時間くらいかかります。

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