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著…岸見一郎、古賀史健『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え

 アルフレッド・アドラーの心理学を「哲人」と「青年」の対話という形で紹介する本。


 単行本版のP7で、

 「人は変われます。のみならず、幸福になることもできます。ひとりの例外もなく、いまこの瞬間から」

 と哲人が断言すると、もともと哲人の思想に懐疑的でありながらもそれまでは割と大人しく哲人の話を聞いていた青年が、

 「ははっ、大きく出ましたね! おもしろいじゃありませんか、先生。いますぐ論破してさしあげますよ!」

 と言い始めます!

 やたら挑発的な青年のキャラ設定にわたしは驚きました。

 おのれ、青年よ。
 本性を現しよったな。
 と、わたしはツッコミを入れたくなりました。

 そんな青年に対して、

 「わたしは逃げも隠れもしません。ゆっくりと語り合っていきましょう」

 と、哲人は正々堂々と返事をしました。

 かっこいいー!

 何だか面白そうなので、わたしはこの二人のトークバトル…じゃなくて、対話を読んでみることにしました。

 哲人は、感情は目的を達成するための手段として捏造されるものだ、と主張。

「いまのあなたが不幸なのは自らの手で〝不幸〟であること」を選んだからなのです」
(P45から引用)

 哲人は言います、

 と。

 人は幸せになれないわけではない。
 変われないわけでもない。
 不幸でいる方が周りの人から大事に扱われて都合が良いから変わらないだけだ。

 という発想に驚かされます。

 この本のイントロダクションで、

「もしかするとあなたは、サングラス越しに世界を見ているのかもしれない。そこから見える世界が暗くなるのは当然です。だったら、暗い世界を嘆くのではなく、ただサングラスを外してしまえばいい」
(P6から引用)

 と哲人が言っていた意味がわたしにも何となく理解出来たような気がします。

 また、哲人が青年に対してアレクサンドロス大王の「ゴルディオスの結び目」を紹介したのも興味深いです。

「彼がペルシア領のリュデュアに遠征したとき、神殿に戦車が祀ってありました。戦車はかつての国王、ゴルディオスによって神殿の支柱に固く結びつけてあり、当地には〝この結び目を解いた者がアジアの王になる〟という伝説があったそうです。腕に覚えのある多くの者どもが〝我こそは〟と挑み、誰にも解けなかった頑強な結び目が。さて、その結び目を前にしたアレクサンドロス大王はどうしたと思いますか?」
(P152から引用)

 アレクサンドロス大王は、結び目を解こうという努力をして無駄な時間を費やす…なんてことはしませんでした。

 結び目が固いと見るや、短剣を取り出し、一刀両断に断ち切ったのだそうです!

 「鳴かぬなら殺してしまえホトトギス」みたいですね。

 解けないなら切ればいい、という大胆な考え方。

 この本を読んでいたら、頭の凝りを揉みほぐされるような感覚になりました。


 ↑続編のレビューはこちら

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