著…石川結貴『ルポ 居所不明児童 消えた子どもたち』

 この世に生まれてきたことは間違いないはずなのに、どこの機関からも居所を把握されていない子どもたちについての本。

 学校に通えず、病院に行けず、児童手当を貰えず、乳幼児健診や予防接種を受けられず、生活保護も受給出来ない…。

 そんな目に遭わされている子どもたちが果たして無事に生きているのかどうか心配になります…。

 「居所不明児童0」と発表しているような地域も、実際には子どもが居所不明になっていることに誰も気づいてさえいないのかもしれないので、よく精査することが必要です。

 さて、この本には「亮太」(仮名)という、かつて居所不明だった子どものエピソードが紹介されています。

 鬼畜な母親とその周りの輩たちのせいで、この本をただ読んでいるだけのわたしでさえも胃がギリギリと痛んで吐き気を催すくらい悲惨な目に遭わされた亮太。

 亮太がそんな中でも自殺したりせず生き抜いていてくれて嬉しい反面、亮太をやがて刑事事件の加害者になってしまうほど追い詰めたその母たちのことをブン殴りたくなります。

 もしかしたら母たちには母たちなりの事情があったのかもしれませんが、だからといって虐待をして良い理由には一切なりません。

 この本の著者が拘置所で亮太と面会して「本やマンガを差し入れるので読んでみませんか」と声をかけた時、

 「できれば学園モノみたいな内容が読みたいです。学校に行けなかったから、文化祭とか、修学旅行とか、そういうこと知らないし。学校がどうなっているのか、すごく知りたいんです」
(P63から引用)

 と答えた時の亮太の気持ち。

 また、厚木市の斎藤理玖くんの事件を新聞で知って、

 「何の罪もない子がどうして」
(P73から引用)

 と涙した亮太の気持ち。

 そして、弁護士から「これから記者会見を開くけど、何か言っておきたいことはありますか」と尋ねられて、

 「僕のような存在を作ってはいけない、そう伝えてもらえますか」
(P88から引用)

 と話した時の亮太の気持ち。

 …様々な想いを想像すると、どんな言葉でも表現しようのない気分になります…。

 しかし、亮太のような、そして斎藤理玖くんのような子どもたちは、今この瞬間もどこかに必ず居るのでしょうね…。

 この本にも、悲惨な目に遭わされている子どもたちが他にも紹介されています。

 辛すぎるけれど、この現実から目を背けるのが一番いけない事。

 「救われるべき局面で、亮太は誰からも救われないままだった。教育から、福祉から、おとなたちから見捨てられつづけた。母親や義父のみならず、ひとりの子どもをここまで放置したこの社会に、一切の責任はないのだろうか」
(P86〜87から引用)

 という、著者から読者に投げかけられる問いに、わたしは「ないはずがない」と答えたいです。

 社会全体で取り組まなければ子どもの命を守ることは出来ません。

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