【読書録#03】『ビジネス教養としてのアート』
『ビジネス教養としてのアート』著 岡田 温司
1.本書について
本書は、アート作品について経済・歴史・思想・テクノロジー・技法の5つの観点から解説し、読者に「アートから何かを感じるためのヒント」を与える一冊である。
2.クリスチャン・ラッセンはなぜ日本で高評価なのか
キラキラした南国の風景にイルカが特徴的な絵といえば、クリスチャン・ラッセンを思い浮かべる人が多いだろう。
日本では、人気の高いラッセンの絵画🐬
しかし、海外において彼の作品は無名に近いことをご存知だろうか。
アートの歴史はキリスト教の歴史と密接な関係にある。
そのため、キリスト教的な要素のないキラキラなラッセンの絵画は
「ペラペラで中身がないもの」と評価されてしまう。
では、なぜ日本で彼の作品が人気になったのか…?
それは、日本人にとってのアートは「海外からもたらされるもの」だから。
キリスト教の伝統を持たない日本では、アートを「意味はわからないけど癒しを与えてくれる良きもの」として受け入れる。従って、アート作品に癒しを求める日本人にとってラッセンは魅力的なアーティストであったのだ。
3.着物の変化
古来から日本人に慣れ親しんできた着物。
その服装は、鎌倉時代に大きな変化を迎える。
平安時代までの着物は、十二単のように衣の重なりで色彩の美しさを表現していた。だが、鎌倉時代になると服装の軽装化が図られ、布の色柄そのものを楽しむようになった。
友禅染や西陣織などの優れた技法がどんどん生み出され、現在の着物に通じる絵画のような着物が誕生した。
4.奈良美智の作品をどう見るか
日本を代表するアーティスト奈良美智。
彼の描くやわらかいタッチの子どもの作品は、世代を問わず「可愛らしい」と人気がある。
しかし、その一方で彼の描く子どもが「怖い」という意見もある。
こうした反応の差異は、心理学の知見でみれば自然なことと考えられる。
起こる事象(例えば、絵画作品を見たときなど)にどのような反応をするかは、個々人の内面による関与が大きい。
よく「アートの解釈はその人の自由だ」と言われるが、このことからアートは心理学とも深く繋がっていることが分かる。
5.感想
今後の仕事で参考になるかと思い、手に取った一冊。
大学時代に芸術学部に所属していたこともあり、「ギリシャ美術」、「イコン」、「レディ・メイド」など聞いたことのある言葉もちょこちょこ出てきて懐かしさを感じた。
アート作品の見方ではなく感じ方にフィーチャーした本作は、アートを経済・歴史・思想・テクノロジー・技法といった複数の観点から考える。
ついつい今までの経験や自分の考えに偏ってアート作品を観ることが多いため、自分の考えだけでなく、より広く社会的な要素からアートを観る方法を知れることができた。本書を読んだことで、以前より「アートとな何か」を見つめられるようになった気がする笑
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