大学は卒論を必修にして、院進者へのサポートを手厚くして、高等教育機関かつ研究機関としての役割に専念してほしい。
大学は就職予備校だという批判
私の大学(関西圏にある私大)は、文系科目が多いせいで、学生をどう就職させるかにかなり頭を悩まされているらしい。
医療系だと、たとえばリハビリテーション関係の学部だと理学療法士や作業療法士、医学部なら医者、看護学部なら看護師といったように、学部で学ぶ内容と就職が直結しているし、食いはぐれる確率も低い。
しかし、文系だとそうもいかない。
たとえば英語学部で英語を学んだからといって、就職先が確約されるわけではない。英文学部で英文学を学んだからといって、それは残念ながら、就職の際にはほとんど直接役に立つことはない。
留学したところで、それを「ガクチカ」に書く学生は多いから、それだけでは差別化できないと、私の同期は言う。
その結果、大学の就職センターが盛んに就活や企業とのイベントを開催し、「こんな職業があるよ」「こんな形で英語やフランス語やスペイン語を使える仕事があるよ」といったイベントを開き、大概それらを参加必須にする。
その結果だろうか、私の大学の就職率は90%を超えている。
補足: これで「じゃあ残りの1割の学生のうちいくらかは院進するのか」というのは早合点である。
「文部科学省における就職率は、「就職が決定した人÷就職を希望した人」で算出されます。 そのため、大学を卒業後、就職を希望しない人はこの割合に入りません。 「就職が決定した人÷卒業者数」ではないので注意が必要です。」
という計算式により計算されているからだ。
でも、よく考えてみてほしい。
大学は高等教育機関であり、研究機関である
大学は国の研究活動の主要な担い手であるが、大学の機能は決して研究活動のみではない。 現代社会の中で大学が担う機能は、1)教育、2)研究、3)社会サービス(臨床医療や地域への 教育サービス、産学連携、施設開放などの多様な活動を含む)の3つに分けて説明される。
https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_3487158_po_20110210.pdf?contentNo=1
日本の大学は教育機関なのでしょうか?それとも研究機関なのでしょうか?それとも両方の役割を担っているの 日本の大学は教育機関なのでしょうか?それとも研究機関なのでしょうか?それとも両方の役割を担っているのでしょうか? 大学を卒業した人のほとんどが就職してしまい、研究者になる人が少ない今日、 大学の意味とは何か考え込んでしまいます。
両方と言うことになっているのだと思います。良い研究をするような人でないと、良い大学教育は出来ないと言うのが建前です。
また、知人の大学教員に聞いたところ、「大学は高等教育機関であり、かつ研究機関である」といった認識だった。
研究をするためには、論文がないといけない。
「ひやっしー」などでやたら揶揄される彼は、正式なルートで学士号を持っていないし、論文を書いていないし、リサーチマップのアカウントを持っていないため、揶揄されるのだ。
彼は所属していた東京大学から学士号を貰っているわけではなく、研究はおろか論文を書いたこともなく、リサーチマップのアカウントすら持っていないのに「科学者」と言ってしまって良いのだろうか。
こんなひとが生まれてしまったのも、論文を書くこと、研究することがここまで軽視されている日本のアカデミアの汚点なのだろうと思う。
それよりも、メディアに出て金になることだけしてりゃええやろ、といったことが、就活重視の大学にもあてはまる。
就職してしまえば、25歳ですでに年収200万円はもらえて、しかもその年収は年々上がるから、ちゃんと食べていける。
アカデミアに進むと、下手したら40代までポスドク。
そういった研究軽視の姿勢は、学部からもう見えている。
卒論が必修でない大学は多い。
就活の邪魔になるから、学生を留学させたいからといったのが建前だが、実質それは研究を軽視することになりかねない。
卒論も出さずに、学士号が貰えてしまう。
あるいは、卒論という名ばかりで、実質レポート課題のようなもので卒業させる。
そもそも論文とは、先行研究を読み、それに批判し、持論を建設する形でないといけない。
「私はこう思います」、あるいは「私はこういう結果を出したいのでそういった角度からしか調査しません」ではだめで、その裏にそれが客観的に見て正しいというデータや調査などをひたすら積み重ねないといけない。
その手順をすっぽかして、見たい世界だけ見ているのが陰謀論者や差別主義者だ。
大学は卒論を必修にすべき
そもそも、卒論を必修にせず卒論を書かなかったひとと、卒論を書いたひとが同じ「学士号」を貰えるのはどう考えてもおかしい。
短大卒と大卒が違うように、学士号の名前を変えるべきだと思う。
そして、就活などの社会の実利に基づく実践的な学習は、専門学校に丸投げすれば良い。彼らは実践教育のプロだ。
学問というのは、実利を気にしてやっていてはいけない。もちろん科研費をとることは必要だ。ただ、科研費のために研究があるわけではない。
大学は院進者へのサポートを行うべきだ
院進者には、ほとんどサポートがない。
内部進学でも外部進学でも、結局教員がほぼボランティアのような形で指導してくれるか、自力でどうにかするしかない。
就活に就職センターがかける労力の10分の1でも院進者に向けてくれれば、みんな志望校に受かりやすくなるだろう。
大学は高等教育機関であり、研究機関だ。
決して就職予備校ではない。
その本質を忘れてはならない。
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