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SNS時代に自我を見失ってしまわないように、対面の世界を生きる。オンラインで代替できることも多いが、新しい世界に偶然入る喜びを味わいたい。

国際結婚した友人の体験談

早速だが、友人の話を聞いてほしい。

昔見ていた「世界の日本人妻は見た!」という番組にあこがれ、彼女はちいさなころから国際結婚をして、ハーフのこどもを産むことを夢見ていた。

最初は、「こどもに日本と世界のある国というふたつの選択肢をあげたい」「こどもを狭い島国の狭い価値観で育てたくないし、広い世界を見てほしい」「この地球には約200の国があるのに、日本人だけに将来の伴侶の可能性を絞りたくない」といった思いから国際結婚にあこがれていた彼女だったが、次第にそれは「欧米在住の白人の容姿端麗のひとと結婚して、ハーフのこどもを3人産んで、現地の市民権を得て、現地に永住する」という夢に変わっていった。

彼女の言う「欧米」とは、アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、ドイツ、イタリアだった。「スペインは良いけど、スペイン語圏のひとと仲良くなろうとすると『私はメキシコ生まれのスペイン人です、とかいうはずれくじ』が当たっちゃうと嫌だから。ドイツも移民が多くて嫌」と彼女は言っていた。

彼女自身も、ドイツに住むとしたら移民になるし、アメリカ合衆国にも移民は多いのだが、そういうことではないらしい。彼女いわく、「アメリカ合衆国の移民は『棲み分け』がちゃんとされていて、黒人が白人の手を汚すことはないでしょう」ということだった。ちなみに、「手を汚す」とは、結婚してハーフのこどもを産むという、まさに彼女が求めていることそのままなのだが…。

このようにどこからどう見ても差別主義、もっと言うと「純血のひと以外その国のひととは認めません」「白人以外認めません」という純血主義や人種主義なのだが、それに彼女が気付いたのは結婚してからだった。

彼女は「世界の日本人妻は見た」に出るのを夢見ていた。そして、そこに出てくるのは決まって日本人女性と白人男性、そしてハーフのこどもと決まっていた。その価値観のままインターネットを見ると、実際インスタなどで人気のフォロワーが多いアカウントにとっての「国際結婚」とは、日本人女性と白人男性、そしてハーフのこどもと決まっていた、と彼女は言う。

国際結婚したことで、国際結婚したひとのコミュニティに属して、そこではじめて「黒人と結婚する」「アジア人と結婚する」という選択肢があったことを体得したと彼女は言う。

彼女は昔から億秒で、私にトイレで「私って臆病なのよ」と言ってきたこともあるくらいの、なんともいえない性格をしているのだが、

そして、彼女に病気が発覚し、こどもを産めなくなった。そこでSNSから距離を置くようになった。SNSを開けば、可愛い白人とのハーフのこどもがたくさん流れてきてしんどいから、という理由で、かつ異国で病気になったことで不安になった彼女は、国際結婚のコミュニティに参加した。そのコミュニティはZoomを使って行われたが、入ってみてはじめて、「見えない国際結婚」をしている、SNSを使わないひとの存在が「見える」ようになったという。

SNSでは見えなかった世界が見えるから、対面の世界はなくならない

SNSは、見たいものだけを見ることがいとも簡単にできる。

それ自体は悪いことではないのだが、ひとは知らず知らずのうちに、それを「世界」だを思ってしまう。

SNSは見たい情報を選んでいる。

意識しているかしていないかは別として、世界の色を自分で選んでいるのだ。

テレビなどの時代はまだ、見たくない情報を偶然見させられるリスクはあっても、見ようとも思わなかった世界を見て、そこが案外綺麗だと気付く気概もまだ多かった。

本もそうだ。

本屋さんを適当に歩いていて、読んだことはないしなにも知らないけれど、面白そうだなという本に出合う機会は多かった。

Amazonで本を買うと、そういった「偶然の出会い」はほぼなくなった。ほしい本だけに直行して、その他を見ないといったことは、本屋さんではあまりないはずだ。本屋さんのあの独特の雰囲気のなかで、新しい世界への扉はすぐそこにあった。

そういったことがなくなると、見たいものだけを選んで見る世界では、そこに映らない世界はなかったことになる。

世界中の貧困や戦争や災害の悲しさにつぶされそうな当事者のひとたちが、「私達を忘れないで」としきりに言っているのは、そういったことなんだろう。

私達を映すカメラがありますように、そしてそれを誰かが見てくれますように、と、彼らは願っているのだろう。

対面で働き、対面で大学に行き、対面でバイトをして、対面でお店に行く。

そういったことが技術的にはすべてオンラインで可能だとしても、それがなくならないのは、やはり人間は対面の世界を、そしてそこから得られる偶然の美しさを、大事にしているからだろう。

新しい世界に偶然入るということは、人生の醍醐味だ。

偶然目の前を歩いていて見つけた美味しそうなお店。

それだけで、人生は楽しい。

たとえ、そのお店が不味かったとしても、食べログで「安定の80点」を求めるよりは、100点かも0点かもしれない出会いをたいせつにしたい。

出会い系アプリ(マッチングアプリ)もそうだ。

あれは世界を広げると言うが、実際はただ自分の好みの上位互換を探ししぐて疲れてしまうのが落ちだ。

留学資金などに使います。ご支援よろしくお願いします。 また、私が欲しい本を集めたほしいものリストも公開しています。 https://www.amazon.co.jp/hz/wishlist/ls/9WBR0K7KWYX8?ref_=wl_share/