試行
自分の好き嫌いに関係なく、色々な物事にひとまず関心を向けてみる。それを容易にしてくれるのが、本・読書だ。
……ただ、そこで見知ったことを足がかりに、次は実践へ、と気軽に一歩進めるかというと、そこには大きなハードルがある。知らないよりはましだと肯定的に捉えることもできるが、あえて「頭でっかち」だと否定的な評価もできる。私自身は、「もう少し、実践もしたい」と思っているが、なかなか行動には移せていない。
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我が人間関係を眺めると、まずはとりあえずやってみる、と頭より身体が先に動く友人が当然いる。
例えば、中学時代の同級生で、理工系の大学に進学した友人Yは、実践を重ねていけば、いずれどんな物事も好きになれるだろうという思考の持ち主で、実際にそれを達成してきた強者である。時々会って話をすると、何かしら新しいことへのチャレンジを始めていて、変化が目まぐるしい。そして、それまでしてきた実践も継続しており、少しだけ摘み食いして捨てるといった下品さもない。
あるとき、こういう実践人間にも、金言としているような本の中の言葉があったりするのだろうか、と気になって、質問してみたことがある。
高名な実業家の言葉を拝聴することになるかな、と偏見まじりに身構えていたところ、教えられたのはある映画監督の言葉だった。
参照元の本も知らなければ、発言している映画監督のことも知らない。ただ、言葉そのものには、極めて納得感があった。内容の鋭さもさることながら、それを友人Yが金言としていることそのものに。
何が捕まるかは分からないが、何かが捕まる状態にはしておきたい。この友人の姿勢には、「手当たり次第」という言葉よりも「汎用性」という言葉の方が見合う。様々な実践を通じて、それらに一貫して流れる思想を汲み取り、それを次の実践にも応用していく。
自分は、特定の魚ばかり目で追っていながら、結局その魚さえ捕まえることができていないのではないか。友人のこの能動性を目の当たりにするたびに、私はそんな風な反省をしてしまう。
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