コツ
蔵書の整理について、世間には二つの流れがある。
一つは、蔵書はあればあるだけいい、積読万歳、というもの。もう一つは、蔵書はこまめに整理して、不要なものは手放す、というものだ。
本好きとしては、どうしても前者の主張ばかりを受け入れて、自分を正当化したくなる。慰めたくなる。ただどう足掻いても、自宅の空間上の限界を無視することはできない。
本棚を当然のように埋め、床のスペースを侵食していく本たち。放っておけば、足の踏み場もなくなりそうである。本を踏んで痛めるという惨事を避けるためにも、本とは定期的にお別れしなければならない。
*
以前、蔵書整理に臨むために、友人から一冊の本を借りた。
沢野ひとしの『ジジイの片づけ』。
借りた理由は、蔵書数を減らすために本を一冊購入する、この行為に矛盾じみたものを感じたからだ(結局、後に購入する)。あと、友人が「それなりに参考になる」と勧めてくれたことも大きい。
「若い頃は部屋をモノで溢れさせるのが喜びであった」。本書の「まえがき」は、この一文から始まる。
部屋の中に置かれたモノは、年を経るごとに「思い出」をまとい、なかなか処分できないものになって、部屋を占領していく。生活空間が窮屈になる。対処するには、定期的に部屋を掃除&整理整頓しようとする、心がけが大切になる。その実践が、本書に纏められている。
上記の文章には、「たしかに……」と唸らされた。
我が家の本棚を見ても、笑えるほど隙間がない。特に文庫棚が顕著で、多少指に力を入れないと、本が取り出せない棚がある。
こうなると、棚に流動性が無くなって、一冊一冊の位置が固定化されていく。埃が溜まるだけのアンティークになってしまう。
最近私が、あまり本棚を購入しないようになってしまったのも、ここに原因があると言っていい。本棚を買うと、どうしても頭の中で何かが分泌されて、「棚が埋まるまで、本が買える!」となってしまう。その結果、床の上にも本が積まれた状況は改善されず、ただ本棚が一つ増えただけになる。
*
沢野のアドバイスに倣い、とりあえずよく手に取る本の先鋭だけを集めて、棚にゆとりのある一画を作ってみた。この空間が自分の読書ライフにどのような影響を与えていくのか。今後が楽しみである。
※※サポートのお願い※※
noteでは「クリエイターサポート機能」といって、100円・500円・自由金額の中から一つを選択して、投稿者を支援できるサービスがあります。「本ノ猪」をもし応援してくださる方がいれば、100円からでもご支援頂けると大変ありがたいです。
ご協力のほど、よろしくお願いいたします。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?