友の仕事の幸せ
友の転職が決まった。
60歳を目前にしたいことができる
仕事場の試験を受け採用されたのだ。
純粋で木訥で愚直なまでに
コネも使わずに真正面から挑んだ。
でも、それが彼の最高の魅力であり
最大の武器なのかもしれない。
クラシック音楽が大好きで
指揮者になりたかった。
音楽教育を受けるでもなく
その夢は夢として終わり、
仕事しながら小説を書いていた。
でも音楽を題材にしたものが多く
音楽への愛情が溢れていた。
新しい職場では自分が好きな
音楽の本を作ることができる。
最も好きなブラームスの本を
きっと作るのではないだろうか。
それともずっと参加している
合唱曲の本を作るのだろうか。
いずれにせよ情熱は成就される。
彼の今の、未来の幸せを感じると
私まで心底幸せになってしまう。
それはなぜなのだろうか。
歳を取ったからなのだろうか、
彼の情熱を知っているからだろうか。
でも、とにかく嬉しい。
今日の晴れ渡った青空のように。