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【短編】感動を与えるものの旅


(今回は男の人だ。)

少し硬い肌を感じながら、僕は大きな手に包み込まれた。


この男性で8人目だ。

この人は何日くらいで終わるだろうか。長い人だと忘れ去られて3年も掛かった事がある。



1人目は女性の人だった。僕が生まれて間もなくその人の元に行った。行ったというより、出会ったという表現の方が正しい。

人混みの中で目と目が合ったというのか、僕が目立っていた場所にいたせいかもしれない。僕は彼女を惚れさせたのだ。

彼女は丁寧に僕を扱ってくれた。とても嬉しかった。

しかし彼女との時間は短く、3日間で終わった。途中涙ぐんでいたが最後はやり切ったようで満足した顔をしていた。僕の初恋かも知れない。



その後、彼女の職場の同僚に僕を紹介してくれた。

初めは離れたくなかったが拒否権はない。

僕をすごく褒め、嬉しそうに紹介してくれる彼女の声を聞いたら、僕の役目はサーカス団のように色んな場所に行き、その場で感動を与える存在なのかもしれないと思うようになった。

たまに、僕を口実に仲良くしようとしてるのも知ってるけどね。


そこから色んな旅が始まった。


平日、朝の7:32。鞄から僕を出し、ガタンゴトン揺れる空間で目の前に立ってるサラリーマンの風景を見させてくれる人がいたり、休日の昼間、怠そうに僕を持ったOLからは、微かな酒の匂いを感じたこともある。


色んな人と出会い、色んな風景を見たけど、みんなに1つ共通して言えることは、最後は満足して他の人に僕を紹介してくれることだ。


それだけで、僕は嬉しく、まだ見ぬ人を満足させてあげたい。と、思うのが僕の生きがいだ。



男性は、同僚から聞いたあらすじを思い出しながら期待を膨らませ、1ページ目をめくった。

「あまり本は読まないけど、、しっかり読んで、読み終わったあとはバーで感想を共有するんだ。」


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*後書き

良い小説は他人に紹介したくありませんか?

小説を読みました。その小説は3年前に職場の先輩から貰ったもので慌ただしかった当時は4mmほどの厚さしか目を通せなく。。

この前部屋を整理していたら、その本が出てきて一気に読みました。とても面白く、誰かに紹介したくなりました。

もしかしたら職場の先輩も同じようなことを思っていたのかも知れません。

巡り巡って私の元に来た本は、今度は誰を感動させるのか・・・



そういえば、現在ブックオフが買取を強化しているそうですね。

そんなブックオフに上記を踏まえてこんな広告コピーを差し上げます。

「あなたが感動したその本、責任持ってご紹介します。」


おうwwwww

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