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030. 好きな日に働くエビ工場・パプアニューギニア海産とは

[ はじめに ]

 1年前に書いた働き方のまとめを短く読みやすく改訂しました。

 その前にこの1年ほどを振り返って一言。

 取材が多くて勘違いしそうな時期もありましたが、その間もいろんなことを乗り越えながら感じていたのは、僕は平凡な日々を大切に生きるために働いているんだということ。

 そして助け合い認め合いながら組織を継続していくのはとても難しいということ。

 『好きな日に働ける』『嫌いな仕事はしてはいけない』といったことは理論的に考えれば大したことではありません。

それよりも人間という生き物の難しさをもっと考える必要があるように思います。それは職場だけの話でなく、地域や子育てや友人との関係や社会の情勢やいろんなことをさしています。

 働き方を考えるのではなく、生き方を考えていきたい、死に方を考えていきたい、そう思う日々です。

パプアニューギニア海産 武藤北斗

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1、 根底にある考え、真意

 自分が性善説なのか性悪説なのか分からないですが、そもそも何を考え、基本にしているかを説明します。もっと詳細が知りたい方は著書「生きる職場」を読んでみてください。

 また工場の雰囲気をみたい方はこちらの2分の動画をご覧ください。

1−1 人は争う生き物

 僕は人を全く信用していないし、自分の居場所や地位やプライドを守るために争う生き物が人間だと思っています。人を裏切り自分の欲を満たすことさえあります。

 だからこそ僕は考えるのです。人が争わないためには、裏切らないためにはどうすればいいのかを。工場で常に考えているのも従業員同士が「争わない」ためにはどうすればいいのか という1点につきます。それさえできれば、心地よい職場も会社としての利益も得ることができると確信しています。

1−2 従業員を信用しているのか

 人は信用していませんが、従業員は信用・信頼しています。これは単に顔を合わせてコミュニケーションをとっているからだと思います。ですから、従業員になった瞬間に信用するわけではありません。

 信頼関係に関しては経営者が本気で従業員の生活や働く環境を考え行動していれば自然と早い段階で構築されると思います。立場の違いが影響しているのは確かですが、傲慢になるのではなく、そんな違いでさえ職場や従業員のために活用できるのが優れた経営者であり上司であると考えます。

1−3 パプアニューギニア海産とは

 少し会社の説明をします。日本の真南にある赤道近くの南国、パプアニューギニアの天然エビを30年以上販売しています。

 パプアニューギニア産の天然エビは日本ではあまり知られていませんが、とても貴重な美味しいエビです。パプアニューギニア産一筋で続けられる理由も実はここにあるのです。

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 船凍品といい、漁獲してすぐに船の上で急速凍結しています。だから鮮度が抜群、そして薬品や添加物を一切使っていません。天然だから当たり前と思われそうですが、鮮度悪化が分からなくなるような薬が船の上で使われるのが一般的なのです。

 価格だけでなく品質や味にこだわる小売店や飲食店は少なくなりましたが、そんな人たちに支えられて僕らは30年以上継続することができています。

 会社は大阪府茨木市の中央卸売市場内にあります。2階が事務所で1階がむきエビやエビフライなどを作る工場になっています。

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 手作業にこだわり、船と同じく工場内でも薬品や添加物は一切使用しません。原材料は子どもからお年寄りまでが名前をみてパッと思い浮かぶようなものだけを使います。例えばエビフライは「天然エビ、小麦、パン粉、水」のみ使用しています。水は徳島県の山の湧水を使うなど、細部にまでこだわります。

 年間の売り上げ金額は約1億円。従業員は代表取締役1名、社員2名、パート従業員16名。実は2011年東日本大震災までは宮城県石巻市で営業していましたが工場もお店も全てが津波で流されました。大阪に移転するも未だ再建の真最中であり、震災後の2重債務さえまだ返済途中です。

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 被災指定地から離れたという理由で頼りにしていた国からの援助は一切なく、再建も思うように進まず、2015年には倒産直前まで追いつめられました。しかしそんな苦しい中で僕らは働き方の改革を始めました。

 どんなに経営状態が苦しくても、従業員が働きやすい職場を目指すことに一歩踏み出してからは何も揺るぎはしませんでした。それは僕らが優しいからではなく、会社としてもプラスの効果があることを早い時点で実感したからです。結果としてこの改革が会社を救ったとも思っています。

 これから話す働き方は16名のパート従業員全員に適用しています。

1-4 非正規雇用は悪なのか

 悪いと思ったことはありまん。うちでは社員になりたいどころか社会保険にすら入りたくないパート従業員が大半です。家族の扶養に入っていれば当然の事と思います。

 もし今の基準のまま非正規雇用がなくなったら働けなくなる人が増えるでしょう。逆にうちのような働き方が増えれば、様々な理由で働けていない人が働ける環境が整い、間違いなく日本の労働人口は増え人手不足などと悩む会社も減るでしょう。

 方法は簡単で社員がうらやむくらい、パート従業員が自分の生活を大事にした働き方にすればいいだけです。

 この発言に顔をしかめる経営者は少なくありません。しかし月給の社員と時間給のパート従業員を明確に区別するのはよく考えれば当たり前の話です。

1-5 社員とパート従業員は同じ仕事をするのか

 もちろんします。言い方を変えれば、社員は全ての作業ができるようにパート従業員の仕事をあえてやっています。更にはパート従業員の誰が休んでも問題ない体制にしていますし、全員が休んだとしても社員だけでその日最低限やる必要のある仕事は完結できます。

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 パート従業員の出勤いかんで大慌て、通常営業に大きな問題が生じる、そんな会社は社員とパート従業員の比率が崩れているのではないでしょうか。時給のパート従業員にそこまで求めてはいけないし、その過重負担は効率を落としているはずです。必要以上に社員を減らすことは結果的には会社にとってプラスになっていないばかりか、ブラック企業に片足を突っ込んでいるはずです。

1-6 非正規雇用は会社のためにあるのではない

 生活のために収入が必要だが、社員として働けない人は世の中にたくさんいます。どうしても体や心が動かない日もあるでしょう。介護や子育てをしている、夢を追いかけたい、そんな人たちのために時給という働き方があるように思っています。決して会社が安い賃金で利益を出すためではありません。

 結果としてそのような恩恵が会社にあるならば受け取ればいいですが、基本は会社のためでないことを認識しなければ、働き方改革など絵に描いた餅になってしまうでしょう。

1-7 パート従業員は何を求めているのか

 ここはとても重要なのに経営者が勘違いしやすいところです。笑顔のあふれる楽しい職場でしょうか。やりがいにあふれた職場でしょうか。従業員同士の親睦を深めることでしょうか。

 僕は全部違うと思っています。時給という働き方を選んだ人が、会社に楽しさや笑顔や、クラブ活動のようなことを求めているとは思えません。

 ましてや僕(上司や社員)と親しく楽しく話すことであるはずがない。

 そりゃそうだと大半の人は思ったかもしれません。しかし「どうやったら従業員と近づけるのか、親しくなれるのか」と講演で質問されることは多く、それが世の中の経営者が考えていることなのです。

 では何を求めているのか。

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 「自分の生活を優先でき、争いやもめごとの無い淡々とした日々を過ごせる職場」と考えています。簡単なようで難しい。争いやもめごとの無い職場がこの日本にどれだけあるでしょうか。

 この一点突破を目指して、笑顔や楽しい雰囲気などにわき目を振らず、あえて交流の少ない道をこれからも進もうと思います。

2、具体的な実践例

 ここからは僕らの実践例をお話しします。何も考えずに真似るのだけは絶対に止めてほしいと思っています。現場に則していない一歩もどきこそ従業員のモチベーションを下げます。大切なのは従業員が働きやすい職場になること。自分たちの職場にあった方法を探し、考え、実行することです。

2-1 好きな日に出勤、欠勤

 朝起きて「今日は働こう」と思えば出勤すればいいし、「休みたいな」と思えば欠勤すればいい。工場が稼働している朝8時30分から17時までの間であれば、好きな時間に出勤して、好きな時間に帰ることができます。だから、朝は行きたくないと思っても、お昼を食べて元気が出たから「よし働きに行こう」でもよいのです。

 そして重要なのは、一切の連絡が必要ないこと。メールも電話もいりません。会社はタイムカードを見て出社したかを判断して給料を支払うだけです。

 退勤時間は工場入口のボードに毎日好きな時間を申告します。自分の名前が書いたマグネットを退勤時間に貼りつけるだけ(1か月のタイムカードを表にた記事はこちら)。

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 ついでに今日の体調がよいか、悪いかも申告。悪くても特に免除される仕事はないけれど、みんなが無意識にちょっと優しくなれるのは実は大切なことです。

2-2 嫌いな作業はやってはいけない

 メインの作業約30種類について、作業が「好き」か「嫌い」かのアンケートを数か月に1度とっています。嫌いと申告した作業はやってはいけません。「やらなくてもよい」ではなく「やってはいけない」。禁止であることが重要で、もしもやったら僕に怒られます。

 この表は休憩室と工場内に掲示してあります。経営者や社員だけが知っているのではなく、全員が把握するからこそ意味があります。

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 人の好き嫌いが完全に一致することなどない。と、言い切れるほどにバラバラです。しかし、もし全員が嫌いな作業がでたらどうするのか。難しく考える必要はありません。平等に分担すればよいだけです。ただ一つ注意すべきは嫌いが偏ったときは何か作業上の問題がある可能性が高いということ。対策を検討する目安にしています。

 この表が重要なのは「嫌いなことをやらない」ことではなく、自分の意思を表明し、それを尊重できることです。

 パート従業員は社員として働けない理由があります。僕の勝手な思い込みかもしれませんが、家に帰ってからも立ち向かうべきこと、嫌だけどやらなければならない事も多い気がします。現にパート従業員は仕事が終わってから子どもを迎えに行ったり、ご飯の用意を考えたり、好きか嫌いかは別にして忙しそうです。見ていてここからが本番のように感じる事さえあります。

 せめて会社では嫌いなことをやらず、好きなことを優先させてほしい。どうしても抵抗がある人は、自分の嫌いから逃げるわけではなく、好きな人に譲ってあげると思えばいいのです。

 全員が僕のように考えるとは限りません。「自分は立ち向かいたいのだ」という人もいるかもしれない。その時は嫌いな作業に「〇」をつければいい。思う存分仕事に立ち向かう選択もできます。自分で決断し意思を尊重できるのが大切なのです。

2-3 ルールの作りかた

 僕らの会社には細かいルールが山ほどあります。例えば挨拶のタイミングとか作業とは直接関係のないことも。実は影で会社が従業員を縛っていると思われがちだけど、そうではありません。

 ルールを作るかは「従業員同士の争いが起きるか?起きないか?」で判断します。いたってシンプルです。最近ではココは曖昧だからルール化してほしいと従業員からお願いされることも多いです。

 出勤日など自分の生活に関わることは自由ですが、工場内での細かなことは逆にルール作りをする。これが僕たちが無意識に作り出した争わないための重要なシステムです。

2-4 ルールのかえ方

 一度作ったルールは絶対に守らなければなりません。実際に運用したらあまりにも効率が悪かったとします。それでもその場で勝手に変えたり、元に戻してはいけません。そんな時は必ず社員に報告し今後どうするかを検討します。変えないわけでなく、勝手に破らない事、手順を踏んで変えることが大切です。

 各々の物差しで判断が始まると収拾がつきません。権力争いすら起こりかねません。うちでの最終的な物差しは工場長。みんなの意見を吸い上げながら良い形に変えていくのが工場長の腕の見せ所です。ここも争わないためにはどうするかを考え、結果として一つの物差しがよいと判断したにすぎず、工場長が偉いとかそういうことではありません。

2-5 休憩時間の重み

 例えば12時から休憩のとき、作業を終了するのは5分前の11時55分としています。その間の5分間は手や前掛けを洗ったりします。もちろん5分もかかりませんが、終われば工場を出て休憩に入ってよいことになっています。この数分は心地よく休憩に入るための日々のボーナスのように考えています。

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 この数分がもったいないと考えるか、意味のあるものと考えるか。

 経営者が思っている以上に休憩というのはパート従業員にとって重要なものです。時給で働いているからこそ時間には敏感であり、休憩後の仕事はもちろん、長期的な人間関係にも大きく影響します。

 例えばこの数分がなければ、休憩時間を損するという意識が働き、手を洗う順番の争いが始まります。力関係も見えやすい。

 しかし、このゆとりの5分間があることで人は少し寛容になり、協力する仲間になれると実感しています。とても大切な数分です。

2-6 時給一律、パート長なし

 1日目の人も、何年も働いている人も時給は一緒です。エビを剥くのが早くても遅くても一緒。出勤日数が多くても少なくても一緒。今なら950円。一生懸命、集中して仕事をしていれば評価は一緒です。

 一生懸命でなければ社員に注意されます。働きやすい職場作りと仕事への厳しさは別の問題で、そこを混合してはいけません。

 細かい作業の良し悪しで評価の差をつけるよりも、会社の業績がよいとき、何か頑張った時にみんなで一律に時給が上がった方が争いはおきないし、個々の得手不得手などを尊重しやすいのです。

 そもそも作業技術だけが会社の利益に関与しているわけではありません。雰囲気作り、丁寧さ、人への思いやり、指導力、聞く力、話す力、発想力、ルール作り、包容力、お客様への対応、自分の欠点の把握、もう色んな要素があります。それらは全て作業効率に関わり、会社の利益へと直結します。トータルで考えればみんなプラスだらけ、マイナスだらけの人間同士です。

 同様にパート長も作りません。パート従業員間の力の差は争いに繋がります。パート長として権力を持ったばかりに嫌な性格になってしまった人を見たことはないでしょうか。その人が悪いわけではなく、人間が暴走するようなきっかけを作った会社が悪いのです。

 そもそもパート長というのは社員が楽をするためのルールに感じます。

2-7 その他もろもろ

 「忘年会、新年会の廃止」「工場での私語をどうするか」「感謝しすぎない」など書き出すときりがありません。著書「生きる職場」を参考にしてください。

3、その効果

 その結果どんな効果があったのか。これで会社が不利益を被っているなら、うちもこんなに注目されていないと思います。いくつか効果をお話ししよう。前提として知っておいてほしいのは、解雇はしていないこと、売り上げは一定であること、そして欠品も一度もないということです。

3-1 パート従業員の人件費が下がった

 フリースケジュールを始めた当初は13人ほどだったパート従業員が3年後は9人になりました。旦那さんの転勤もあれば、僕とのやり方があわないと退職していった人もいます。ところが、それでも工場は問題なく稼働していたのです。

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 13人でやっていた仕事を9人でやっていますから、人件費の削減になっています。3割以上の人件費カット、金額にすれば年間300万円以上になります。1億ほどの売上の会社にとっては大きな数字です。ちなみに時給は年々上がっているのにです。

3-2 メディアでの紹介

 2016年に新聞への投書が掲載され、それがネットで拡散されてからは天狗になってしまいそうなほどメディアの取材がきました。この1年半でテレビ、新聞、雑誌とそれぞれ10回以上は紹介されています。昨年は賞まで頂いきました。おのずと知名度はあがり、取り組みを多くの人に知ってもらうことで会社の評判は上がっています。

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3-3 従業員がやめない

 人員が落ち着いてからは退職する人がとても少なくなりました。私はこの会社でずっと働きますと話してくれる人が何人もいます。とても嬉しいことです。

 人が辞めなければよい連鎖が生れます。例えばこんな感じです。

 辞める人がいない → 新しい人を雇用しない → 新人教育がない → ベテランが仕事に集中できる → 一人一人のスキルが上がる → スキルが上がった従業員同士が協力する → 効率も品質も上がる。

 実に単純なことですが、この連鎖が人件費削減につながっていると考えられます。

3-4 求人広告費0円

 昨年は従業員を9人から16人に増やしました。実はパプアニューギニア現地との取引がよい流れになり、正直に値下げをしたおかげで人手が足りなくなったのです。新人を教える手間は増えましたが、増員なので仕方ありません。

 7人雇用したわけですが、ホームページに「求人募集」を掲載するだけで募集が後を絶ちませんでした。この4年半の求人広告費は0円です。あまりにも応募があるので「700字の作文」を義務付けたら少し落ち着きました。それでも応募や問い合わせが止まることはありません。世の中が人手不足だといいますが、全く実感がありません。

 ちなみに今は募集していません。募集の際はホームページに1週間は掲載するのでチェックしてください。

4、よくある質問

 最後によくある質問に答えて終わりにします。

4-1 いくら冷凍とはいえ欠品しないのか

 働き方を変えてから欠品したことは一度もありません。そのような危機になりそうなことはありましたが、それは働き方が原因ではなく原料不足が原因でした。

 ここで皆さんに頭を柔らかくしてもらいたいのです。この「欠品しないのか」と心配することが既に頭が固いのです。「パート従業員が好きな日に出勤してよい=(イコール)出勤日数が減る」と考えていると思うのですが、実際はそんなことにはならないのです。

 みんな自分の生活に必要な金額があって就職したと思います。特にパート従業員は時給ですから、自由だからといってむやみに休むようなことはないのです。

 それが腑に落ちていないから欠品を心配する。フリーにしようがしまいが、週や月の出勤総数は変わらないのだから欠品の心配などする必要はないのです。

4-2 繁忙期はどうするのか

 隠さずに「ここから1か月はたくさん来てほしい」とか、逆に忙しくない月は「無理して出勤しないで、どんどん休んで」などと本心を伝えています。ミーティングで話したり、連絡ノートに書いたりします。

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 そうすると自分の生活にあわせた中でみんなが少しづつ調節してくれます。16人が少しずつ調整すれば、人を数人雇ったり解雇したりと同じような状況になるのです。

 会社にとっては繁忙期に短期の新人を入れるよりも、ベテランが出勤日数や時間を増やしてくれる方が効率がいいのは言うまでもありません。また、短期の人が入ることで職場の人間関係が乱れるような心配もなくなります。

 そして繁忙期には時給をアップしたりと金銭的なプラス面も付加したりします。

4-3 誰も来なかった日は?

 「そんな日は1日もない!」と言えないのが僕らしい。2019年1月現在で2回ありました。

 1回はまだパート従業員が9人、出勤・退勤時間が自由でない時に1度。その日は工場を休みにして日々行う発送作業などを社員でこなして終了。祝日が一日増えたような感覚です。

 もう一回は2018年の2度目の台風で市に避難指示が続出し学校も休校になった時。でも、みんなが無理して出社しなかったことに僕は満足して言います。

 これから先もどうなるか分からないけれど、1日パート従業員がいないだけで大騒ぎになるような会社にはしたくないなと思っています。

4-4 大きな会社でもできるのか

 大きな会社も小さな部署の集まりです。部署単位で始めればいいだけと考えます。それに僕らと同じことをするのではなく、その現場に合った従業員が働きやすい職場を作ればいいだけなので、大きさも、業種も何も関係はありません。

4-5 社員に負担はないのか

 現在社員は僕ともう一人の合計で2名。僕は工場と営業、もう一人はほぼ工場専属です。ともに土日休み。祝日はどちらか一人が2時間ほど出勤、もう一人は完全休み。有給もありますし、長期休暇もともにとっています。

 パート従業員が自由なのにどうしてそんなことができるのか。逆ですパート従業員が自由だからたまに社員がいない時は協力してくれるのです。ちなみに僕らが長期休暇を取る日はパート従業員には知らせません。無言で来いと言っているのと変わらないからです。

5、最後に

 自分なりに考え始めたことを話して終わります。

5-1 自分が決めるということ

 「フリースケジュール」も「嫌いな作業をやってはいけない」も自分が考え決断しています。やらされたり競争するのではなく、自分の生活を大事にするための 日々の選択 です。

 こんな生活に慣れると以前より他の従業員のことが気にならなくなります。人間なので全く気にならないことはないと思いますが、以前とは明らかに変わってきます。自分の意思を尊重できる生活は、自分の幸せと、人の幸せを近づけている気がします。

5-2 障がいを持った人との社会

 働くことを試行錯誤してから意識し始めたのは、障がいを持っている人とどうやってこの社会を生きていくかということでです。

 会社という視点で考えれば、どうやって一緒に働いていけるのか。ここはもう利益や効率云々ではなく、人として生きていく中で、それこそベストを尽くしあえばいいのではないかと思っています。

 まだ雇用したわけではありませんし、僕だけが突っ走ってはいけません。ともに働く従業員と話し合いながら、それこそ一歩踏み出したり引いたりしながら、焦らずに着実に進んで行きたいと思っています。

 「これこそが働き方改革」だと世間から注目を集めている僕たちが行きついたのがこの道だったのは大きな意味があるように思っています。

 本当に長くなりました。最後に一言。作り手の想いや気持ちは必ず食べものに宿ると思っている。淡々とではありますが、心地よい職場で作ったエビフライを一度味わって頂ければと思います。そこでやっと今回の投稿が完結します。ありがとうございました。

株式会社パプアニューギニア海産
工場長 武藤北斗

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