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小説『ほか♨いど』

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2010年 第23回早稲田文学新人賞 受賞作 この賞に応募したのは選考委員である哲学者・東浩紀氏が「応募してきた作品すべてを一人で読んで一人で選ぶ」という新人賞としては異例のコン… もっと読む
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ほか♨いど 1

ほか♨いど 1

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*道民とは?〔編集中〕

純道民・現道民・元道民・心の道

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ほか♨いど 2

ほか♨いど 2

第2章(承)

『組曲』

『ホカ』『ホカ』『道画』

『流氷群』にノってみた

 郵便局を出て、歩き始めてまもなく(緑色のリュックを背負った男が通過……)どこからともなく声がする。
 自分のリュックがモスグリーンであることが頭をよぎった。
 誰だ?
 監視されている。
 右肩は無反応。
 つまり、声は耳から入ってきたようだ。
 犯人はすぐにわかった。
 警官だった。
 小さなゲートの前で、小声で

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ほか♨いど 3

ほか♨いど 3

第3章(転)

シバれよわが泡沫、と毛ガニは言った

 郵便局を出て、秋晴れの下を警官に見送られながら歩いていくと、ベンチに誰か座っているのが見えた。
 スーツを着た細身の男。
 依頼者だろうか。
 だったらいいのだが、一般人なら今日は別のベンチにしよう。栗尾根が男の前へ差しかかると、男は目も合わさないうちにすっと立ち上っていた。
「あれ、網羅……寒獄院さんですか?」
 お待ちしておりました、と言

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ほか♨いど 4

ほか♨いど 4

第4章(結)

おめでとう、
ありがとう、
さようなら、
いいのかよ、カイゾクたち

 細く薄い果物ナイフが丁寧に熟れたマンゴーの皮を剥いていく。
 剥き終わった黄金色の果実を白く長い指が捉え、薄い唇の奥に白すぎる歯の並んだ顎のほうへ運んでいった。
「それ、おれに剥いてくれたんじゃなかったんですね」
「あたりまえだろう。沖縄産だぜ」
 旨そうに果実を頬張る鰐を横目で見ながら栗尾根は溜め息をついた。

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