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ほか♨いど 3

第3章(転)


シバれよわが泡沫、と毛ガニは言った



 郵便局を出て、秋晴れの下を警官に見送られながら歩いていくと、ベンチに誰か座っているのが見えた。
 スーツを着た細身の男。
 依頼者だろうか。
 だったらいいのだが、一般人なら今日は別のベンチにしよう。栗尾根が男の前へ差しかかると、男は目も合わさないうちにすっと立ち上っていた。
「あれ、網羅……寒獄院さんですか?」
 お待ちしておりました、と言ってにっこりと微笑んだ。これをどうぞ、と袋を渡された。ずっしりと膨らんだ袋の中にジャガイモ、人参、玉葱がぎっしりと。
「キャンプ場でカレーかボルシチにでもしてください」
「ありがとうございます」
 今日の寒獄院はビシッと決まっていた。ダークスーツにストライプのネクタイを締めて眼鏡もラウンドタイプからスクエアタイプにチェンジ。
 道東の小麦玉葱農家というより遺伝子組み換え作物の老舗モンサント社のエージェント風だ。
「今日はまたどうして?」
 あれからまだ一週間もたっていないのに再来日、いや再上京。
「いえ、私地区の代表をしておりまして、今日は皆の意見を持ってテケベ先生に陳情です」
 衆議院議員テケベ……本名T・G・Bテー・ゲー・ベー
 ロシア移民初の国会議員。網走市を選挙区に持ち、ロシア・CIS加盟国とのパイプを梃子に与党の実力者となりつつあるが毀誉褒貶の激しい人物でもある。
「先生はご存知ですか? よろしかったらご紹介致しますが」
「いや、それには及びません。存じております」
 前の選挙で応援演説を頼まれていた。本人はともかく周りの人間が胡散臭すぎる。はっきり言ってロシアとベラルーシの工作員。かかわるわけにはいかない。
 今日は時間がたっぷりあるのでじっくり話ができるとのこと。この間のメールのやり取りで、寒獄院はすっかり乗り気になっている。
「タイトル案が出そろいました。チーム内では、この『黒いピラミッド~天士&蘭の蝦夷アトランティス伝説~』が一押しですが」
「ああ、いいですね。かっこいいと思います」
「でしょう? でしょう?」
 作家は乗り乗りだ。
「ただ、問題も発生しまして……」
「問題?」
「蘭様の設定です」
 ばんえい競馬の協力は得られそうだが、「室蘭蘭」及び「ベンケイゴー」の使用は難しいとのこと。道内の蘭アレルギーはまだ治まっておらず、特に室蘭市が難色を示している。「室蘭」の姓を出すのは控えたい。
「で、男装の麗騎手「毬杜蘭丸まりもりらんまる」ではどうかと」
「蘭丸?」
「はい。馬は「ノブナガゴー」で」
 義経伝説も権利が錯綜しているため、今回の話からは外す方向で考えている。
「蘭様には女性ファンも多いのです。そっち狙いもありかと」
「うーん。それは蘭ちゃんに訊いてみないと何とも……」
 あっちこっちのあとは、そっちか。
 それにしてもたった一週間でここまで話が進んでいるとは。栗尾根はチーム網羅を甘く見ていたことに気づいた。
 火がついた想像力に加えて、薄野鰐顔負けの行動力。
 よくない傾向だ。
「製作資金のほうはどうなんですか?」
「はい。それが一番の問題でして……」
 道内に拠点を置く企業数社に持ち込んだが、残念ながら出資する余裕はないとの返事。
 比較的業績のいい家具屋チョコメーカーも断ってきた。それはそうだ。こんな大スペクタクル、まともに作ればハリウッド級のスタッフが必要となる。
 スポンサーが現れるわけがない。
「まあ、粘り強く交渉していこうと思います」
「そうですか。蘭ちゃんの件は、任せておいてください」
「よろしくお願いします」
「あたしの件て?」
 蘭がうしろから二人の間ににゅっと首を突っ込んだ。
 あっ、蘭様! と驚く寒獄院。
 栗尾根は驚かない。ぷにの反応から近くまで来ていることは察知していた。
「あの本、すんごく、よかったです。ありがとうです」
「いやー、あんなものでよければいつでも……本当にお会いできて光栄です。寒獄院が感激院なんて、ははは……」
 こいつやはり蘭マニアだった。栗尾根は一歩引いて見ていた。
 打ち合わせは終わったので後半はファンの集い(1名だが)となった。
「監獄院さん」
「あ、寒獄院です。紛らわしくてすいませんが」
「でも、すんごい才能ですね! あんなおもしろい作品を次々とリリースするなんて」
「いやー、しょせんは素人に毛が三本というところでしょうか。溝海みぞうみ先生〔*5〕とかちゅう先生〔*6〕のようにはいきませんよ。蘭様は沖先生の『ひげくじら』は読まれましたか?」
「それ、熊出てきますか?」
「いや、残念ながら。クジラとイルカは出てきますが」
「今年は台風、来ませんね」
 栗尾根はブロンズ像のツダさんと天気の話を始めた。
「道東生まれなもので、実は台風は未経験です。「観測史上最大」とか「首都圏を直撃!」って憧れます。週末はキャンプ生活なのでおかげで助かってはいるのですが、一度見てみたいなあ、台風」
「寒獄たん、喉、乾きませんか?」
「はあ、多少……」
「じゃあ、女神からスペシャルドリンク。あたしの飲みかけのアクエリアス!」
「えっ、いいんですか!? 本当に?」
 こらーっ。栗尾根は五歩から六歩引いて目をそむけた。これで蘭が芸能高校で何を学んでいるのか、だいたいわかった。
「大変名残惜しいところではありますが、そろそろ陳情に行ってきます」
「寒くん、ファイトです! テケベなんかやっつけちゃえ」
「よし、やってやる! って、やっつけちゃまずいでしょう。味方になってもらわないと。ははは……では!」
 妙なステップを刻みながら去っていく寒獄院。(クイッククイックスロースローな男が通過……)
「蘭ちゃん、サービスしすぎ」
「そう?」
 久しぶりにもてはやされてアイドルとしての本能が目覚めてしまったのか、ファンを見送る蘭の横顔は高揚していた。
 しかし、こちらを向いた顔はすでに真顔に戻っている。
》》》しっかし、気持ち悪い男だね、あれは》》》「こっちでは、キモイ、だけど」
「えっ?」》》》蘭ちゃん……黒すぎ……》》》
「口から泡飛ばしてしゃべるから」》》》カニかよ》》》「顔が唾だらけ。マジ勘弁してほしい」
「一応、ファンなんだから」》》》甲殻泡を飛ばす……》》》「大事にしようよ、ね」
「そういうタカシもサービスしすぎじゃないの?」》》》おやじギャグか? ゴラッ》》》「あの事件、ぜんぜんやる気ないくせに」
「アクションシーンばっかなんだもの。おれはハリウッドスターじゃねえっつうの。でも、乗ってあげるふりをするのもファンサービスのうち。これは、まっとうな営業活動」
「だって、本気だよ。あの人」
「まあ、万が一、実現したら実現したで、そのときはそのときで、ということでさ」
 そういう蘭だって、かなり乗り気のふりをしていた。
「あたしは馬に乗りたいだけ。話は別にどうでもいい」
「でも、馬鹿にできないよ。こういう地道な活動がのちに大きな花を咲かせるかも。蘭ちゃんだって、関係者との付き合いは大切だろう? プロデューサーとか……」
「プロデューサー……」》》》殺》》》「ゴラッ」
 栗尾根の頬を風が擦り抜けていった。
「うん?……アツっ!」風が触った頬がひりひりと痛み始めた。
「あ、ごめん。つい手が」
「今……パンチが見えなかったんだけど」
 最近道場で習得した「総統を倒した右フック」とのこと。
「蘭ちゃん、もうあてないでね。マジで死ぬから」
「わかった。なるべく寸止めにするね」
 ちょっと、顔洗ってくるわ、マジ汚ねぇ、あのカニ、と図書館へ駆けていく蘭。
 彼女、アイドルになる前に格闘家として成功するな、と栗尾根は思った。


 黒曜石ピラミッド。別名十勝石とかちいしピラミッド。必勝を祈願すれば十戦して十勝するという魔法の石を積み上げた、人の意思を物質化する装置。
 秘教島エゾテリック・アイランドアトランティスの人々はそれぞれの思い、願いをこのピラミッドにかけ、それぞれの夢や希望を物質へと変換した。アトランティスは「思考=現実」という特異な文明を発達させていた。しかし聡明な古代人もまた欲望の僕だった。際限のない思考の物質化の果てに、ピラミッドは暴走し大爆発。繁栄を極めた人々はアトランティスの中心地もろともこの世から消滅した。
 世界各地に点在する通常のピラミッドは、消滅したアトランティス人の技術を部分的に復活させたものにすぎず、主に王族の繁栄と権力の維持に用いられた。
 一瞬のうちに都市と人々を時空の彼方へ吹き飛ばした本物の「黒いピラミッド」は、その爆心地に傷一つなく今も残っていた。そこは室蘭沖三十五キロの海底。噴火湾の中心。
 一八世紀末、噴火湾を見た英国艦の艦長は「これはカルデラだ」と言った。大規模な火山の噴火によってこの円形の湾は誕生したのだと。だが直径五十キロを超えるその巨大な陥没に見合うだけの堆積物は存在しない。カルデラ説は否定された。噴火湾に噴火はなかった。しかし爆発はあったのだ。大地は眩い光とともに、まるごと世界からえぐり取られたのだった。

創作「黒いピラミッド」設定資料より


「すいません。もう一度お願いします」
「はい。あの資料は事実です」
「えーと。どこからどこまでが、ですか?」
「キャラクター表以外全部ですね。でも、わかりません。クリオネさんと蘭様以外もそのうち現実に現れるかもしれません」
「あの……確認しておきたいのですが、あの話は、チーム網羅さんの創作ですよね?」
「創作です。正確には合作となりますが」
「それがなぜ「事実」になるのですか?」
「私たちは創作物にリアリティーを持たせるため、できるだけ史実や記録を参考にしています。これは科学的に検証されたものに限りません。実証不可能な伝説や伝承の類もまた人間の社会生活に大きな影響を与えるリアルな存在だからです。もちろん、他人の創作物もリアリティーの源となりうるものは積極的に利用させてもらっています」
「『黒いピラミッド』も最初はそうした創作物の一つでした。しかし、調べながら筆を進め、新たな裏づけを求めてまた調査を続けているうちに、奇妙なことが起こりました。私たちの創造力の進む方角に、それと対応する現実が点々と、千島列島のようにすべて存在しているのです。私たちは気づきました。これはもはや創作ではない。発掘なのだと」
「それはわかります。ストーリーに北海道の開拓史やアイヌの伝説を巧みに取り入れておられて、いつも感心しています。でも、肝心のピラミッドは存在しないじゃないですか。あれがなければ、他のすべてがそろっていたとしても「事実」にはなりえないでしょう」
「それが……あったんです」
「は?」
「黒曜石ピラミッドは存在します。プラトンの言う「アトランティス」はこの世に実在しました。謎の鉱物「オリハルコン」とは十勝石のことです。この北海道こそ、幻のアトランティス大陸だったのです
「えーと。……すいません。突然のことで、頭がよく回りませんが、今必死に考えております」
「無理もないことです」
「ピラミッドは存在するとおっしゃいました。それは、どうやって確認できたわけですか?」
「この目で見ました」
「海に潜って?」
「映像です」
「映像?」
「もちろん、実写です。さる信用できる方から特別に拝見させて頂きました」
「つまりその方は、社会的地位のある信用度の高い人物ということですね」
「はい。この地方では間違いなく一番です」
「もしよろしければ、お名前を聞かせて頂けますか?」
「クリオネさんもよくご存知の人物ですよ」
「というと……テケベ?……ムネオ?」
っちゃ、さんです」
「爺っちゃ、ですか……」
 網走北見紋別で「爺っちゃ」と言えばあの人しかいない。道内でも「アバシリの爺っちゃ」で通じる。
 山口 正男
 来年か再来年には三ケタを迎える道東の長老。
 民族学。民俗学。文化人類学。考古学。歴史学。政治学。経済学。数学。生物学。医学。……その他いくつの学位を持っているのか本人も正確には把握していない。しかし、彼は博学の徒としてよりも、その学説の応用性、汎用性で注目を、いや一世を風靡、我が国を暗黒へと導いた。
 彼の思想の根幹にある「その他→真ん中←その他」理論が大東亜起用圏の思想的根拠となったことは疑いえない。環太平洋戦争〔*7〕の実質的なイデオローグとして活躍したにもかかわらず、戦犯の咎は受けず、戦後は北海道学殖大学の学長を長く務める傍ら、「ポプラ政治経済学習塾」の塾長として多くの反動的な政治家、実業家、高級官僚を中央へ送り出した。
 現在は、出身地である網走市で旧網走刑務所をそのままテーマパーク化した施設、網走監獄博物館・名誉館長に納まっている。公にはされていないが、網走という街自体が爺っちゃの地所の上に建設されたようなものだという。そのため、この人が一言「のぉう……」「のぉん……」「にえっと……」とつぶやけば市長、市議会のどんな決定も覆される。
 こんな反民主主義的な存在にもかかわらず、市民から「爺っちゃ」の愛称で呼ばれ敬愛される反面、対峙した者は誰でも、鬼神、祟神を前にしたように恐れおののくという明治大正の妖怪大百科、昭和の死神博士、道東のスカル&ボーンズ&スキン、ザ監獄の怪爺、リアル外道皇帝。
「ついでに十勝石石工組合ブラックメーソンの理事長もやっていそうだ。おれ、やだよ。こんな人とかかわるの……」
「かかわっちゃったんだから、しょうがないじゃん」
「だいたいおれのケータイどこで調べた? なぜ勝手に網羅に教える?」
「爺っちゃに法律は関係ないっしょ。もう刑務所入っているし」
「そういえば蘭ちゃん、爺っちゃと仲よくなかった?」
「結構、世話になったかも。イベントの場所とか貸してくれたり」
「おまえまさか、爺っちゃの……くまノ一?」
熊手素手で暗殺されたいか? ゴラッ」


1988 青函トンネル開通
1989 昭和天皇(87)崩御
     手塚治虫(60)死去(漫画神)
     美空ひばり(52)死去(芸能神)
     松下幸之助(94)死去(経営神)
     松田優作(40)死去(探偵神)
     田河水泡(90)死去(水疱瘡神)
     開高健(58)死去(釣魚神)
     阿佐田哲也(60)死去(麻雀神)
     シムノン(86)死去(警察神)
     カラヤン(81)死去(指揮神)
     ダリ(84)死去(超現実神)
     天安門事件勃発
     ベルリンの壁崩壊
     ルーマニアの吸血鬼夫妻処刑
     連続幼女誘拐殺人事件
     坂本弁護士一家殺害事件
1990 サハリンのコンスタンチン君(のちネオ)大やけど
1991 湾岸戦争勃発
     ソビエト連邦崩壊
     バブル崩壊
     第二次UWF崩壊
     ……
 すべてはあのトンネルの開通から始まった。
 曲りなりにも安定していた世界は消え失せた。
 時代は一気に混迷と破壊への坂を下り始めた。
 
 一万年を越えてなお癒されぬピラミッドによる汚染。
 悪しきパワーの流失を押さえていた最終防衛線ブラキストン・ライン
 津軽海峡の真ん中で道と世界を分けていた生物境界。
 しかし海底トンネルは道という名の密室パンドラの匣を抉じ開けた。
 トンネルの開通によって世界へ放たれたもの。
 それは悪しき想像力。
 悪しき想いは、人に取り憑き、人々を虜にし、やがて世界を取り殺す。
 亜都蘭手素の悲劇は再び起きる。
 次はこの惑星ほしごと異次元あの世まで吹き飛ばすだろう。
 
 世界が破滅を決定した年。
 この世に生まれた男。
 道と同じ形をした生きものの化身。
 クリオネ・タカシ
 
 かれは救世主きぼうなのか。
 堕天使だらくなのか。
 
 その答をかれも知らない。

創作「黒いピラミッド」設定資料より


「オープニングはこんな具合です」
「……」
「で、どうしましょうか?」
「どう?」
「どっちがいいですか? 救世主と堕天使」
「……」
「お好きなほうをお選びください」


 [こちらカフェ・蝦夷アトランティス]
》》》北海道ってクリオネだったんだ。マンタかと思ってた。
》》》噴火湾ができてクリオネからカスベ(エイ)になった
》》》水疱瘡神は水疱瘡先生に失礼
》》》旧漫画神で
》》》軍用犬神
》》》蘭よりかわいくて凶暴な妹の凛凛はいつ出てくるの?
》》》蘭=北海のヒグマ 凛凛=北極のシロクマ
》》》ゴスッ
》》》ゴロリッ
》》》ゴジラッ
》》》バキッ(ベアハッグで背骨折れた)



内浦湾(噴火湾)は本当に不思議なスポットです。北海道には各地に巨大アメマス、巨大イトウ、巨鳥フリーなど巨大生物の伝説がありますが、内浦湾では巨大タコ、巨大ナマコなど海洋生物の巨大化が顕著です。鯨を丸呑みにする謎の怪物「沖の長老」もいます。これはピラミッドと何か関係があるのではないかと思います。室蘭にはチキウ岬(地球岬)があるし、内浦湾はウチウ湾(宇宙湾)なのではないか、と想像は果てしなく膨らみます。

mail from チーム網羅



今日、爺っちゃさんからすごい話を聞かされました。氾村日了はんむらりょうという小説家をご存知でしょうか?伝奇ロマンのパイオニアで昭和五十年には直木R35賞を受賞しています。彼は慣れ親しんだ東京から居を苫小牧に移していた時期があります。トンネルの開通前後のことです。地元でいろいろあったらしく結局逃げるようにまた東京へ帰ってしまったのですが、爺っちゃさんが調べたところでは、かなり海底ピラミッドの謎に迫っていたようなのです。大量の資料を集め、執筆の準備を進めていた矢先、二〇〇二年ご病気のため帰らぬ人となったとのことです。爺っちゃさんは氾村先生が集めた資料のことが気になり、弟子にあたるペ・清水虫範ぺ・しみずむしのり先生や生前親交の深かった警世人類学者・栗森定住郎くりもりていじゅうろう氏にも書簡でお尋ねになったようですが、資料の行方は結局わからなかったとのことです。

mail from チーム網羅


 [こちらカフェ・蝦夷アトランティス]
》》》氾村日了、懐かし……南北自衛隊おもろかった。海自が南朝について、陸自が北朝。
》》》◇▲♨Ω(蝦夷は、ピラミッドを、爆発させ、内浦湾ができた)
》》》じっちゃが黒幕か。栗、ヤバくね?
》》》中山口正男「学狼馬鹿一代」好評絶版中!
》》》氾村が手本なら「黒曜石ピラミッド」じゃなくて「黒光城」(くろみつじょう)のほうが。
》》》↑おまえが直せ 直せるものなら
》》》クロテルジョウ、黒耀城、黒輝城、黒照城、
》》》くろかがみじょう「黒鏡城」
》》》いっそのこと「黒幕城」
》》》黒船城、黒潮城、黒澤ア城ラ、黒川起城、黒木瞳城、黒田アーサー王の城
〉黒歴史城
》》》↑非ぷに発見
》》》今日栗見た。国会図書館の前に本当にいてびびった。
》》》俺も。今日一時ごろツダさんの横に座ってた緑のリュック、誰だよ
》》》青アニ
》》》ツダさん見てドキドキするのって俺だけ?
》》》ツダさんに話しかけてるのって俺だけ?
》》》蘭、眉毛そった?
》》》↑にえっと。ぼりしょい眉毛。
》》》蟹抗戦のカニってズワイたん?
》》》蟹工船よりも葉山嘉樹「セメント樽の中の手紙」を読むべき
》》》↑よりも山田正紀「薫煙肉(ハム)のなかの鉄」を読むべき
》》》ツダさんと大津事件津田三蔵の関係は?
》》》↑沈黙の理由が
》》》ゲドー皇帝ってゲド戦記と関係あり?
》》》外道皇帝は氾村「妖屯田」の黒幕。道外の皇帝、つまり天皇の隠喩。
》》》ふざけるな。「妖星伝」だろが。
》》》KW
》》》SKW
》》》KW せめて「腐鮭るな」で
》》》KI(すーはー……深呼吸)
》》》地球に生まれたら妖星伝は読むべき



 蝦夷アトランティス人=コロポックルはなぜ滅んだのだろうか?
 想像力(思考)を現実化(物質)できるとは、二次元を三次元にできるということだろう。
 彼らは自分が考えた架空の物語を「現実」にしようと、ピラミッドにテキストデータをインプットしたのではないだろうか。
 そのあまりの荒唐無稽、不条理なストーリーをピラミッドは物質化できず、創造力(ピラミッドパワー)はオーバーヒートを起こし爆発したのではないか。
 アトランティスの悲劇がそのようなものだったとしたら、三次元を二次元に変換しようとネットを酷使しているわれわれもまた同じ轍を踏もうとしているのではないだろうか。

ブログ「机上の二次元論法」より抜粋


爺っちゃさんはよくあなたのことを懐かしそうに話されます。爺っちゃさんがあなたに最初に注目されたのはなんと「鎖塚ゾンビ事件」だそうです。驚いたことに、爺っちゃさんは天士&蘭の第1作からのファンなんですよ。でもさすがは明治大正の妖怪大百科。ただのファンとは目のつけどころが違います。爺っちゃさんはあなたがあの事件をホラーではなくあくまでもミステリーとして取り扱ったことに感心したとのことです。実際、あの事件はあなたが介入しなければ道警によってホラーとして処理されていました。その結果、どうなっていたでしょう。開拓時代に道路や線路脇に埋められた囚人たちの遺骸はすべて掘り起こされ霊媒師や陰陽師に手厚く鎮魂された挙句、周辺自治体は毎年慰霊祭を執り行わなければならない。全道が破産します。あなたは推理力によって道を財政破綻から救っていたのです。爺っちゃさんに言われるまで、この視点には気づきませんでした。まだまだ未熟ですね。

mail from チーム網羅



あなたは爺っちゃさんとは面識はないそうですね。不思議な話です。おらが町のヒーローと生き字引が互いを知らないなんてことがあっていいものでしょうか。爺っちゃさんは一度あなたと地酒でも酌み交わして語り合ってみたいとの希望をお持ちです。不死身の爺っちゃさんですが正直言ってもうお歳です。どうか、一日も早くこちらへお戻りください。ファンが、街が、事件があなたを待っています。

mail from チーム網羅


 [カラオケ喫茶 ほか♨いど]
》》》室蘭周辺に未解決事件が多い件について
》》》あの……
》》》人口1000人あたりの行方不明者数五年連続世界一
》》》シリーズ最大の謎。天士も蘭も室蘭に行ったことがない。何故?
》》》室蘭蘭なのに網走出身(笑)
》》》室蘭、ヤバそう
》》》鉄の街。北海道のタタラ場。
》》》1907年(明治40年)日本製鋼所室蘭製作所が操業開始
》》》シャモ対アイヌ古戦場の上に製鉄所、石油コンビナート建設
》》》のけもの姫蘭の宿敵ニボシ御前の本拠地
》》》B(Bear)級アイドル蘭の宿敵安倍なつみ・麻美姉妹の出身地
》》》アイヌ殺して重化学工業で発展。ひどいぞ室蘭。
》》》室蘭=「モ・ルエラニ」=「小さな坂道の下りたところ」=坂道(坂の上の雲=近代化)が終わったところ
》》》室蘭=「ムロ・ラン」=「ムラ・ロン」=村論=村の論理(前近代)
》》》室蘭=「ムロ・ラン」=「ムラ・ロン」=斑論=論理にムラ
》》》室蘭=「ム・ロラン」=「ム・ラロン」=「ム・リロン」=無理論=論理0
》》》室蘭=「ム・ロ・ラン」=「ム・ラ・ロン」=「ラ・ムー・ロン」蝦夷アトの中で室蘭だけムー大陸
》》》室蘭=「ムロ・ラン」=「ムラ・ロン」=「ムラ・ムラ」してきました
》》》「蘭」一文字でムラムラできる俺って
》》》名童偵コタンくんですね
》》》室蘭=「室・蘭」=「至る・オランダ」=覇権国家への道=大麻解禁
》》》室蘭=「MURO-RAN」=「MOURA-RUN」=「網羅・走」=網走
》》》まとめ。室蘭は科学と神話に引き裂かれた亜空間。室蘭では推理による合理的解決は不可能。
》》》なんかありそう
》》》ピラミッド
》》》それだ
》》》形がすでに▽
》》》襟裳岬沖とインド洋も調べるべき


 栗尾根ははっとして、振り返った。
「……どうも最近、誰かに見られているような気がしてなりません。疲れているんでしょうか。確かに、疲れるようなことばかり続いてはいるんですけど……」
 おにぎりを一口齧り、お茶を一口啜った。
「蓄えが乏しくなってきました。そろそろ稼がなければやばいかも。でも、不況のせいで探偵のバイトもあまりありません。経費込みで時給900円では、ここでじっとしているほうがマシですし。どうしようかな……」


 [カラオケ喫茶 ほか♨いど]
》》》…… ▲ 海底ピラミッド発見!
》》》…… ▲ あれ? 意外と小さい
》》》…… ▲ 手のひらサイズ
》》》…… ▲ コロポックルサイズ
》》》…… ▲ 遠近法だろ
》》》サルベージ開始…… ←▲
》》》      ←▲
》》》ざばっ ←▲
》》》▲ ……おおー
》》》▲ ……やった!
》》》▲ ……引き揚げ成功!
》》》ぴかっ△ ……あっ眩しい!
》》》△ ……えっ、マジ?
》》》△ ……光ってる
》》》△ ……光ってる、光ってる
》》》△ ……そして、歴史は繰り返されるのであった
》》》△ ……五円玉。二礼二拍。室蘭栄に合格しますように。一礼。
》》》△ ……五百円玉。二百礼二百拍。室蘭蘭と結婚できますように。百礼。
》》》ゴラッまた爆発させる気か!!
》》》△ ……五十円玉。二礼二拍。世界が平和になりますように。一礼。
》》》△ ……五十円玉。二礼二拍。世界が平面になりますように。一礼。(どっかーん♨)
》》》あーあ…… ♨ → → → ▲ また沈んじゃった
》》》ゴラッ
》》》△ ……ははははは(黒幕登場)
》》》△ ……ははははは(ずおーだー大帝、古)
》》》△ ……ははははは、蝦夷地の諸君(デ総統)
》》》△ ……ですらー、生きていたのか(現代進 韓国籍)
》》》△ ……テポ動砲用意! 目標室蘭沖浮遊ピラミッド(沖田韓長)
》》》△ ……ははははは、日本人は12歳、道民は10歳(マ元帥)
》》》△ ……すーはーはははははすーはー(ベイダー)
》》》△ ……フォフォフォフォフォ(バルたん)
》》》▲ ……ははははh、あれ? 消えた
》》》▲ ……ははははは(笑)
》》》▲ ……ははははは、早く電池交換しろ
》》》▲ ……ちょっと、待ってろ
》》》△ ……ついた!
》》》▲ ……あれ?
》》》ゴラッ
》》》△ ……ははははは、消したら殺す
》》》△ ……ははははは、ルルーシュ・ヴィ・アトランティスが命じる 道民よ麻を編め
》》》△ ……げーろげろげろ、ポカペン侵略であります(エゾアカガエル)
》》》△ ……アハハハハ、間抜けな道民め(鳩野三八)
》》》△ ……オホホホホ、奴隷……道民の皆さま(デヴィる腐人)
》》》△ ……オホホホホ、ねえ美香さん(腐膿姉妹)
》》》△ ……………………俺のうしろに書くな(ゴルゴ)



 着信拒否ですか?
 まあ、いいでしょう。
 出る出ないは個人の自由です。
 しかし、郵便は読んでもらえますよね?
 あなたはいつもどおり議事堂裏の郵便局でこの封筒を受け取るのでしょう。
いつもと同じA4の封筒を見て「ああ、またか」とか「しつこいぞ、網羅」とか舌打ちするんです。
仏頂面の警官たちの前を歩きながら、苛立たしげに封を開けてしまうかもしれません。
今度は何だ?
ハリウッドで映画化が決まりました、か?
ルーカスが興味を示しています、か?
そんなことを考えながら歩いていきます。
おとなしく小麦と玉葱を作っていればいいものを、
ど素人が図に乗りやがって。
そんなことを考えながら歩いていきます。
いつもの席に座ります。
あらためて封筒の中身を確認します。
あら?
何だ、これは?
白紙?
あの野郎、中身を入れ間違えたのだろうか?
そんなはずはない。
網羅のことだ。
これは何かのメッセージだ。
あなたはそう考えます。
考えざるをえません。
実はあなたは少し反省もしています。
ちょっとやりすぎてしまった、と悔いてもいます。
興味のない話にいかにも興味ありげに首を突っ込んでしまった。
その結果、関係各所に多少迷惑をかけてしまった。
そんな風に思ってもいます。
でもそれだけです。
どんな話を生きるのか、それはおれが決める。
だっておれの探偵人生なのだから。
登場人物は作られた瞬間から人格を持った個人となります。
生まれたあとは、誰が作ったどんな話に乗ろうとそれは自分の勝手。
自分は作家の操り人形でも、読者のおもちゃでもない。
でもそれは違うと思います。
あなたは決して完全なる自由な存在ではありません。
今のご自分を見て気がつかないのでしょうか?
自分が故郷から離れては生きられないことを。
自分が生きるべき物語は道内にしか生まれないことを。
北海道という土地はいまだに開拓というすでに終わった物語を繰り返しています。
仕方がありません。
ご存知のとおり、森の熊と海の幸のほかには何もないのです。
あなたはそんな土地を人々を活性化させるためにこの世に誕生しました。
古ぼけたつまらない物語が、あなたの手が触れることによって生き生きと蘇る。
でもあなたはその役を退屈に感じていました。
自分にはもっと重要な仕事があるに違いないと考えたのです。
あなたは新天地を求めて旅立ちました。
あなたが去ったあとの土地には苔の生えた話と朽ちかけた人々が取り残されました。
郷土の英雄を呼び戻そうと、私たちは持てる力のすべてをかけてあなたを誘惑しました。
この土地はまだこんなにおもしろい!
そう思い直してもらえるよう、私たちは想像力を結集させました。
しかし、あなたを再誘致しようとした試みは失敗に終わりました。
あなたはもう戻ってきません。
生きるべき物語を失ったあなたも都会では生きていけません。
私たちに残された選択肢はあと一つ。
それを実行してこの物語を終わりにしようと思います。
ご愛読、ありがとうございました。


》》》クリオネ、うしろ!》》》
「知ってるよ」
》》》……》》》
「ちょっと見てみなよ。怖い手紙、来てるから……」
》》》……コロス……》》》
「あら? ゴラッじゃねえのかよ」
 
 A4の白いプリント用紙が地面に舞い降りた。
 栗尾根は前のめりに立ち上がった。
 膝から落ちたラップトップが鰹みたいに跳ねている。
 振り向くと、うしろに男が立っている。
 見知らぬ男のように見えた。
 間もなくそれが眼鏡を外した寒獄院流氷だと気づいた。こんな目をしていたのかと驚いた。眼鏡が安物なのかレンズの反射で目つきまではわからなかった。
「コンタクトにしてみました」
「痛いじゃないですか……」
「すいません。一撃で極めてあげたかったのですが」
 流氷は手に刃物を持っている。
 刃物の先から血のようなものが滴っている。
 右肩を押さえていた左手を見ると掌が赤い。残念。やっぱり血か。肩口をざっくりとやられていた。
「すいません。じっとしていてもらえれば、今度こそ一撃で終わらせますが」
「遠慮したいのですが……」
「それはできません」
 肩が熱い。腕が痺れる。背中を汗がひっきりなしに流れ落ちる。汗じゃないかもしれない。
「この形、わかりますか?」
 流氷は語りながら動き始めた。よく見てください。そう。樺太です。鍛冶屋に特注で打ってもらいました。名づけて聖剣アレクサンドロフスク・サハリンスキー。あなたを殺すためにこの世に生まれた剣。いや、鉈かタシロですかね、この形は。
 栗尾根と流氷はベンチの周りをぐるぐる回っていた。
「本当は、隕石から刀を打ち出し、時の皇太子に献上した榎本武揚公に倣って、流星刀ならぬ流氷刀を、とも考えたのですが、氷の剣は強度に問題がありまして」
 流氷がサハリンを振り回した。栗尾根の喉元を血腥い風が擦り抜ける。
「武揚公と言えば、日本国初代逓信大臣です。郵便局のあのマーク。「」の由来はご存知ですか?」
「いいえ……」
「あれは「TAKEAKI」の「T」と「I」を組み合わせたものです。加えて「武揚」の「武」の中にも「〒」が隠れています。これは樺太千島交換条約締結の大役を終えた武揚公が、帰途シベリアの寒村で、ある少年から教えられた呪術のテクニックです。この少年こそのちの怪僧ラスプーチン。当時七歳にしてすでに傾国の魔少年。逓信次官前島密が完成させた郵政事業には、武揚公の露子悪仕込みの呪術がかけられていたのです。その前島ですが、ただの有能な実務家ではありません。名前が示すとおり、サハリンの息のかかった帝政ロシアのスパイです」
「そうですか……」
「俗に小泉劇場と呼ばれる郵政民営化とは、榎本前島に連なる白系ロシア閥の末裔vs.ボルシェビキに資金提供していた米金融マフィアの傀儡、つまり時空を超えたロシア革命の再演だったのですが、もうあまり動かないでもらえますか? そろそろとどめを刺したいのですが」
「すいません……」
 背中を伝い落ちた汗がチノパンの尻に真っ黒な染みを作っていく。栗尾根は自分の動きが鈍くなっていることに気づいた。
「これ、いつまで続くのでしょうか?」
「さあ……」
「北海道がクリオネだとすると、千島列島はミジンウキマイマイだと思うのですが、どう思いますか?」
「はあ……」
 動くのが億劫になってきた。
「誰か!」
「誰も来ませんが」
「おーい!」
「無駄ですけど」
 追いかけっこに飽きたのか、流氷がベンチの上に乗って栗尾根に躍りかかろうとした。
「何だ、こいつ?……」
 ブロンズ像が手を伸ばして流氷を捕まえようとしている。
「放せ! こらっ」
 ツダさんがベンチに上がった流氷の腰のあたりにしがみついた。
 荒い息でそれを見守る栗尾根。
 そのとき背後の植え込みから何かが飛び出した。
 ネズミ?
 流氷目掛けて飛び上った。
「うっ……何だ、これ?」
 
「ズワイたん……」
 ブロンズ像に下半身を押さえ込まれ、顔を蟹に覆われた流氷はバランスを崩して石のベンチに倒れ込んだ。
「誰か! いませんか!? 警察の方!」栗尾根は声を張り上げた。
 くそ! とサハリンを振り回す流氷。
 がんっと金属音が響いた。
 ツダさんが頭を押さえている。やられたようだ。
 えい! と蟹を引き剥がし、地面に叩きつける流氷。
 くらえ! とサハリンを振り下ろした。
「危ない!」
 遅かった。哀れ蟹は真っ二つ。
 いや。インパクトの瞬間、角虫刀牛に、左手と右手に分かれて素早く植え込みの中へ逃げ込んだ。よかった。
 流氷がこちらを向いた。
 よくない傾向だ。
 動こうとした。あれ? 足が。あれ? 上がらない。
「誰か!人殺しです!」
「クリオネは一応貝の仲間です。貝殺しですね」
「火事だ! 火事です!」
「あまり見苦しい真似はしないでもらえませんか。あなたは一応私のヒーローなので」
「おーい!」
「せっかくあなたに相応しい最期を用意したんです。終わりよければすべてよし。最期くらい作家の言うことを聞きましょうよ」
 流氷がサハリンを振り上げた。
 栗尾根は力を振り絞って腰を落とした。
ゴラッ」と、その背をヒグマが飛び越えた。
 えっ、うわっと怯んだ流氷にそのまま突進、激突。
 押し倒された男の口からはタップタップ
 押し倒したヒグマゴラッゴラッと鮭んでいる。
 地面が近づいてきた。
 栗尾根は膝をついていた。
 力尽き、横になって、目を閉じた。
 


 [最強喫茶店伝説 談話室滝沢]
 》》》続小説北海道開拓史ダイジェスト版
→凍晒冷戦始まる→
→2009/6/6網羅軍境界線を突破。脚注島へ上陸。津軽危機が勃発→
→6時間後に沈静化→
→凍晒冷戦続く→天士三文の計が成立→
→監獄博物館が談話室の会話を本文にコピペする新兵器北海道サムライコピー&ペーストを開発。網羅、青アニも使用→
→士天王に認められたい談話室芸人が跳梁跋扈する事態に→
→脚注のガラパゴス化がもはや手が出せないレベルに→
→[鮭]は登場人物たちのその後になる模様←いまここ


ほか♨いど 4



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