#4 教科書がないって本当?〜オーストラリアの学校現場から〜
こんにちは。オーストラリアでアシスタントティーチャーとして働く2児の母、ホジコです。
今日はオーストラリアと日本の学校の違いで衝撃的だったことの一つ、「教科書」について書いてみようと思います。
オーストラリアの小学校には教科書がない!!!は本当
こちらの子供たちは自分の背中よりも1.5倍もありそうな大きなバックパックを背負って学校へ行きますが、中身はお弁当と水筒だけ。(お弁当箱もやたらと大きい)筆記用具も教室に置きっぱなしなので、勉強道具はいっさい持ってい行きません。
じゃあ、どうやって授業をするの?と思われると思います。
正解はパワーポイントとプリントです。
大学の授業のようにも聞こえますが、この国で黒板を見かけたことはなく、低学年のうちからホワイトボードに写されたパワーポイントで授業が進み、モニター上に解答を書き込んだりします。
高学年の授業でも、ノートを取るという習慣はほとんどありません。
その場で理解し、わからない部分は先生に聞いて解消するといった感じです。そのため、授業は短い時間でも凝縮していて、生徒も皆集中しているという印象があります。
一通り先生が授業をした後は、練習問題としてプリントをします。
このプリントはドリルのように1人1冊持っているというものではなく、先生が用意する練習問題のようなものです。
終わったプリントは、真っ白なノートに順番に貼っていき教室に置いて帰るので、自宅に持ち帰るということもありません。(年度末に全てまとめて持ち帰ります。)
”子供たちが学校で何を勉強しているのか、全くもってわからない” という親御さんの叫びがあるのは、子供が学んだ形跡を家に持ち帰らないからなのです。
教科書があることの良し悪し
★オーストラリアで教科書がないことのメリット
では、オーストラリアで教科書がないことのメリットは何でしょうか?
私が感じる点は3つあります。
1つめはIT化。
ホワイトボードは先生のパソコンと繋がっているので、授業中にインターネットにアクセスしながら、教えている内容のビジュアルをシェアしたり動画を見せて子供たちにわかりやすく説明することができます。無駄な紙の削減にもなります。
2つめは自由に学び、発想を広げられる。
教科書がない、すなわち、決まった正解があるわけではない。
そのため枠にとらわれずに自由に発想したり、自分の興味で学びを深めることができきます。同じクラスにいても全員が同じ理解度を示すわけではないので、その子なりの習熟レベルでクラスに参加することできます。
小テストもオーストラリアでは日本と比べると圧倒的に少ないので、教科書を丸覚えして学んだ気になるということは少ない気がします。
3つめは授業への集中。
先にも書きましたが、教科書がないゆえに予習も復習もしずらい。
逆に言うと授業は一髪勝負。どの子も授業にとても集中していて活発に議論が起こったり、質問が出たりします。
授業のプレゼン時間は短い気がしますが、とても集中していて効率の良さが伺えます。
★オーストラリアで教科書がないことのデメリット
では、反対に教科書がないことでのデメリットを挙げてみたいと思います。
1つめは、正しい解答、考え方が残らないこと。
教科書のいいところは、やはり、「基本の考え方を、何度でも見返して習得する」ことが出来る点だと思います。
昨日やった算数の解き方がわからなくなってしまったら、教科書のページを戻ればおさらいすることができますよね。
パワーポイントでの授業の場合だと、自分だけ前のスライドに戻ってという訳にも行かず、一度つまずいてしまうと取り戻すのが難しくなってしまいます。
2つめは、各学年ごとに習得すべき内容の決定的ガイドがない。
教科書に沿って進む授業であれば、各教科の1年間で網羅する内容とレベルが一目でわかりますよね。先生たちも教える内容に抜け、漏れが出ることが少ないことと思います。
一方で教科書がないオーストラリアでは、”先生の教え方次第”に頼るところが多く(もちろん教師用のガイド的なものはあります)、教え方の良し悪し
で生徒の理解度も大きく変わってきてしまう気がします。年度末に時間が足りなくてある単元を丸ごとスキップと言うことも聞いたことがあります。
親御さんが授業の内容を把握しずらいのは言うまでもありません。
3つめは、繰り返し予習復習する機会が得られないこと。
オーストラリア流の授業の場合、授業に上手について行ける器用な子にとってはテンポよく深い学びが得られるように感じますが、実際の所そうでない子の方が多いくらいと言ってもいいと思います。
そうした子にとっては予習、復習によって反復練習することが大事だと思うのですが、教科書がないとしずらいという面もあります。ちなみに宿題も微々たる量です。
教科書をなぞったり、線をひいたり、メモを残すと言うような使い方もできないですね。
4つめは、出来る子と落ちこぼれる子の差が激しく生まれること。
これらのことを総合すると、教科書がないことが一因となって、つまずいてしまった子が救済されずらくなっていると感じます。わからない部分がそのまま放置になってしまったり、算数は苦手だからと諦めてしまうような子が出てきてしまったり。クラス内での学力の差は大きいと感じます。
所感
オーストラリアでは先生が1対1で指導する場面が日本よりも多く、授業について行けない子もよくフォローされているなと思います。かくいう私のメインの仕事もフォローが必要な子へのサポートです。
教科書がなくてもスムーズに、そして自分で考えて意見をしっかりと伝えるといったスタイルで授業が進むことに関心する一方、教科書をずーっと使って小学校時代を過ごしていた私にとっては、やはり「教科書がある」ことの有効性をひしひしと感じてしまいます。