思い出したことたちへ

颯爽と歩く服着た犬
気だるそうに走る野良猫
夜と朝の混ざる午前6時
思い出すことも、思い出されることも
それほど切ないことなど、それはそれは、ないわ
気だるさの中を散歩して、吐く息に命の白さをみる
壊れていても、壊れていっても、それはそれで、いいわ
溶けた土に佇む項垂れたアネモネが首を傾げたあなたに似ていた
甘い夜の記憶に消えていった小さな言い訳
柄にもないことを死ぬほどできた
奇しくも新しい自分にご対面してしまった、それはそれは恨めしいわ
1人ではできないことも全部、ありきたりだけど2人ならって
柄にもないことを死ぬほど思った
同じ空の下で、全く違う時間を生きていると思ったら、笑えてくるけれど
必要のなかったものなんて、一つもなかった
絶対に一つも
吐き出したくなるほどの恥ずかしいことも
捨ててしまいたくなるほどの冷たい記憶も
夜に溶けて、私に溶けて、静かに沈んで全部になる
別に、私のせいでもあなたのせいでもないのなら
ただあった事実が一つ増えただけで、進んでいく道は二つに一つ
ひっそりと佇んで、そっと息をした深夜12時
一つの思い出を、台所に流したら、早朝の道をゆく

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