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帝都本郷下宿屋あさぎり ~貧乏公家と刃無し~
あらすじ
世は徳川将軍十七代目家清の時代。第十四代家茂とその御台所和宮の子が将軍職を円滑に継承した江戸幕府がなんとか体制を立て直した日本は、幕府主導のもと文明開化の時代を迎え、現在近代化の道をひた走っている。
開国から時は流れて半世紀が経つ泰清時代、ここは江戸から東京府東京市と名を改めた新都の学生街・本郷。あまたひしめく下宿屋のひとつ「あさぎり」にご機嫌な二人組が住んでいる。武士の息子で妖刀
狼の子と猫の子のアルフライラ 第9夜:おかえりなさい
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投石によって破壊され、内部の壁掛けや絨毯を露出した状態だが、それでもなおワルダ城は城内にいる者たちを守らんとそこに存在する。
しかし今日も日が昇ってしまった。この地に照りつける太陽は苛酷だ。まして今のワルダ城は一部屋根を失っている。
ザイナブは、崩れた壁にもたれながら、先日城内で産まれた赤子を抱いていた。城下町から避難してきた庶民の女が産んだのだ。とてもおとなしい子でなかなか声を上
狼の子と猫の子のアルフライラ 第8夜:僕たちの価値
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ファルザードの予想どおりだった。
怒風組の背後には、宮廷で絶大な権力を握っている人間がいた。
大宰相ウスマーン――この国で皇帝に次ぐ政治的権力を持った男だ。
政治に疎いギョクハンでも知っている大物だ。
検地をし、台帳を作り、徴税する。諸外国の王や諸侯と渡り合い、外交手腕で帝国を守る。軍事的な活動をしているという話は聞いたことがないが、ある意味では最強だ。
しかし、ケレベクに連
狼の子と猫の子のアルフライラ 第7夜:誰かが定義した自由
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「おばあちゃん、ありがとう」
ファルザードがそう言いながら老女の手に一金貨を握らせた。途端、老女は顔をくしゃくしゃにして半泣きで声を震わせ始めた。
「いやね、なんだかいろいろ話をしちゃったけど。怒風組もみんながみんな任侠だってことに誇りを持っているわけじゃないから、本当に気をつけなさい。変なのに捕まったら、あんたみたいに可愛い子、どこに売り飛ばされるかわかったもんじゃないよ。アシュラフ
狼の子と猫の子のアルフライラ 第6夜:正義は我にあり
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ヒザーナはイディグナ河の西岸に築かれた都市だ。
計画的に造られた街中には、運河が網の目状に張り巡らされている。人々はその運河を利用して移動したり物品を運んだりすることができる。目で見て涼むこともできる――今のギョクハンとファルザードのように、だ。
二人は、運河のうちの一本を見下ろす高級飲食店の二階の個室に通されていた。窓から遠くに目をやるとイディグナ河も見える。
これからジーラ
狼の子と猫の子のアルフライラ 第5夜:帝都ヒザーナにご到着!
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何の困難もなく二日半で帝都ヒザーナについてしまった。
まだジーライルをいぶかしんでいたギョクハンだったが、こうして事件事故もなくヒザーナに案内してもらうと、警戒して緊張しているのが間違いのような気がしてくる。
騙されてはいけない。まだほだされるには早い。
しかし、ヒザーナの一番大きな隊商宿、中でも追加料金を取られるほどの上等な食堂に案内されて「おごるよ」と言われてしまうと、食べ
狼の子と猫の子のアルフライラ 第4夜:化け物退治
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こうして、ギョクハンとファルザードはようやくワルダとヒザーナの間にある街シャジャラにたどりついたのであった。
「じゃーねー! また明日の朝迎えに来るからいい子にしてるんだよー!」
隊商宿の一角、旅人用の寝床がある部屋に二人を放り込み、ジーライルが手を振る。彼はシャジャラでも指折りの大きな商館の近くに定宿があって、そちらに泊まるらしい。ギョクハンはほっとした。今夜こそ静かに眠れる。
狼の子と猫の子のアルフライラ 第3夜:100万ディナールの超高級奴隷
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夜明けとともに出発した。涼しい朝のうちに移動して次の緑地に向かうつもりだった。
行けども行けども砂の海が続くばかりだ。
そのうち自分たちがどこにいるかもわからなくなってきた。
ワルダを出てからは太陽を目当てに南下していればよかったが、途中わけのわからないところで東に行ってしまった分、距離感を失ったのだ。
まして目の前に広がるのは果てなき砂漠である。ギョクハンはだんだん自分が本当
狼の子と猫の子のアルフライラ 第2夜:ザイナブ様の大事なお手紙
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朝が来てしばらく経ってから、ようやく小さな緑地を見つけることができた。
ギョクハンは休憩することにした。馬に水を飲ませつつ、自分も寝ようと思った。
この先は、次の街まで、日光を遮るものは何もない砂漠が続いている。名前がつくほど大きな緑地はない。見つけたところでこまめに休んでいくしかない。
まして今はファルザードというお荷物を抱えている。
井戸のそばに辿り着くと、白馬はファルザ
狼の子と猫の子のアルフライラ 第1夜:いってらっしゃい
あらすじ
ワルダは豊かな都市国家だったが、ライバル国ナハルに襲撃され、城を包囲されてしまう。城主ハサンは討ち死に。城主の娘のザイナブが城内にいる人々を鼓舞しているが、このままでは無謀な籠城戦に突入するのは明らかだった。そこで、ザイナブは帝都ヒザーナの皇帝に援軍を求める手紙を書き、ひとに届けさせることを決意する。使者として選ばれたのは二人の少年、ギョクハンとファルザード。ギョクハンは十五歳にして最