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WBCの「光と影」~3つの魅力と3つの難しさ~

今回ほど、WBCを真剣に見たことはありません。
 でも、性分で、つい分析してしまいます。
「素直に楽しめよ」
 と、ダルビッシュ選手に叱られそう。
 でも、面白さを追求していくと、運営する側の苦労や大変さが、垣間見えてきます。
 そこで、『光と影』という観点から、WBCにメスを入れてみました。

面白さ ① オールスター選手の出場

 日本人選手は、ほぼオールスターの出場。
 プロ野球ファンとしては、たまりませんね。
 シーズン半ばのプロ野球オールスター戦とは違って、大谷翔平やダルビッシュ有といった大リーグからも、大物選手たちが集まってのチーム編成です。各国も同じでしょう。
 各国の超一流選手が一つのチームを作っているのです。
 スーパープレーが堪能できるのも当然です。
 世界各国の代表選手の対決が、WBCの基本のコンセプト「世界一を決める」大会になるわけです。

面白さ ② 世界の『甲子園』

 断崖絶壁。
 アマチュア野球の原理。
 あの『甲子園』高校野球のように、負けたら終わり。
 まさに、短期決戦、死に物狂いの戦いになります。このプレッシャーは、日本シリーズとは、また違ったスリルがあるわけです。
 村上選手をはじめ、各選手たちが、シーズンとは別の次元で、緊張しまくるのは当然です。
 プロ野球というより、アマチュア野球の基本的な「勝ち抜き戦」の設定が、WBC特有の高血圧になりそうな、興奮しまくりの試合になるわけです。

面白さ ③ 各国との多様な交流

 各国のお互いに異なる野球スタイル。
 それでいて互いの美しい交流。スポーツマンシップ。称え合う素晴らしさ。ファンの温かい声援。
 プロの試合では、時に乱闘になりかかったりするのに、WBCは、逆に相手の健闘を称え合い、時に励まし合い、実に後味かよいのが特徴ですね。
 野球を通して、国と国が野球への認識を深め新たにして、互いに交流できる場。スポーツマンシップに溢れる戦いの場、これがWBCですかね。

難しさ ① 開催時期が問題

 いつ開催すべきか。
 これは、悩ましい問題です。
 プロ野球のある国にとって、シーズン前の大試合は、コンディション作りに苦労します。体調を崩すこともあるかもしれません。ピークをWBCに合わせたら、シーズン開幕時に調子を落とすことになりかねません。 
 プロ、アマの各国選手にとって、いつがWBC開催に適当なのか。国によって事情が違います。
 短期決戦とはいえ、この3月くらいに、選手をなんとか集められないかというわけで、これが開催の困難さでしょう。
 毎年は無理。
 ということで、きっと3年に1回なのでしょうね。
 苦肉の策でしようか。
 各国の実情はわかりませんが、日本一つをとっても、開催時期の難しさがよくわかります。

難しさ ② 人材の選抜方法

 ファン投票とか、実績とか、色々な選出方法がある中、「監督中心」に、あくまでもWBC必勝の基準で、選手を選抜していくわけです。
 面白さ①で、オールスターという書き方をしましたが、それは結果です。あくまでもWBCのために、監督の判断で、適切な実力と都合のつく選手を選抜していくわけです。
 本当は、野球ファンには、わからにくい専門的な分析で、選手は選ばれているわけです。
 ヌートバー選手が典型ですね。
 私も、日本に知られていない選手が入ってきたのには、びっくりしました。結果は素晴らしいものでしたが。
 選手の絞り込みは、諸般の事情から、非常に難しかったと思います。
 この選び方は、今後も同じで、常に選んだ根拠が問われることでしょう。

難しさ ③ 各国の条件の違い

 これも、面白さ③で、各国との交流と書きましたが、国によってはプロ野球がない国もあり、野球自体も盛んではなかったりします。
 大きな環境の違いがあります。
 その差が大きいのに、これだけの試合ができたのですから、凄いことです。アマチュアのチームでも、プロ中のプロと対決して、それなりに試合して時には苦しめているのですから。
 各国の伸びしろは、大きいとは思います。
 ただし、開催にあたり、この事情の違いでも本当に同じ土俵に上がれるかは、随分議論のあるところでしょう。試合してみないと、分からない面があります。
 大敗してしまうと、かえって、やる気をなくしてしまう国だって出てくるかもしれません。
 その意味でも、今回、各国からは、本当によい選手が出場してくれたと思っていまます。

WBC発展の条件

 こう分析してみると、WBC発展の課題は「難しさ①②③」への対策の充実にありと感じました。
 伸びしろは大きいですね。
 野球の面白さ、奥深さ、精神の充実、人間観の変わるような交流の素晴らしさを、参加した各国とそのファンから、学ぶことができました。
 選手たちの真摯な姿勢が、そのまま野球の伝道師となっていく。
 WBCのステイタスを、選手の極限の活躍で高められていく。WBCの権威となっていく。
 参加してくれた国で、野球の普及がまだまだだった国も、今回の大会の国内への影響は、大きかったのではないでしょうか。
 各国の野球が、今後、大いに盛んになってほしいものです。選手が全力でプレーしてくれる限り、可能だと思ったものでした。

「日本の野球人口は減っている」追加の考察

 テレビで、「日本の野球人口が減っている」と繰り返しコメントされていました。
 何でだろう。
 ついでに、考察をしてみました。

①草野球がなくなった

 すぐに思いつくのは、子供たちの遊びとして『草野球』がなくなってしまったこと。昔に比べて空き地が少なく、フェンスで立ち入り禁止になってもいます。道路の車の往来も増えて、走り回ることはできません。こうして、町から『腕白』がいなくなったことは残念です。

②ライバルスポーツの発展

 ボール一つですぐに楽しめる「サッカー」に、身体能力の高い人材が流れているようにも思えます。世界大会の規模も、サッカーの世界的な普及も、野球とは比べ物になりません。

③子供たちは忙しい

 子供たちは、塾や習い事が多く、ゲームにも熱中しています。忙しくなっていますね。野球どころじゃない子供たちが多いのではないでしょうか。

最後に

 こんなことを書くと、「昔は良かった理論」になってしまいますね。今の時代に合った野球の楽しみ方があってもよいのでしょう。
 昔ではなく「今」
 野球界の発展が、新たな野球の魅力を引き出すことに。
 結果として、WBCの「未来」につなかればと思った今回の大会でした。
 選手と関係者の皆様、お疲れさまでした。


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火山竜一  ( ひやま りゅういち )
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