柝が鳴る~蔦重と写楽~⑥
第6話
残暑のはずが、額の汗が引き、背筋さえうすら寒い。蔦重は両腕を組み、番頭・勇助の報告を聞いている。惨憺たる売り上げに耳をふさぎたくなるほどだ。
「それじゃ、擦り増しするどころじゃねえな」
「はい。中には売れてるのもあるんですが、総じて予想外に低調で」
5月の反省を踏まえ、蔦重は満を持してこの夏の興行に臨んだ。座元、役者らの不評を買い、資金提供は半減。そのため高価な雲母刷の大判は計8図に抑えた。その代わり、大判の横幅を約半分にした細判計30図、店頭価格は大判の半額で