小説「遊のガサガサ冒険記」その14
その14、
重畳たる山並みが果てしなく続く。大空は青く澄み渡り、高見山の尾根筋の樹氷が朝の陽光に煌めいている。身を切るほどの寒風にさらされながら、遊は磨墨の背にしがみつき、眼下の森の中に目を光らせている。
「この辺にいると思うんだけど。あっ、いた、いた」
岩場に疾風の姿が見えた。お座りの姿勢で、両耳をそばだて周囲に注意を払っている。森の中の一瞬の動き、些細な物音、微かな臭いも見逃すまいと、神経を張り詰めているのだろう。上空の磨墨に気付き、物憂げに一瞥した。
「遊、寒いだ