マガジンのカバー画像

小説「遊のガサガサ探検記」

25
小学4年生の上清水遊は川にガサガサに行き、外来魚の席巻に心を痛める。ある時、ニホンイシガメを助けようとして溺れ、60年前の世界に入り込む。その世界では悪魔が人間の欲望を刺激し、生… もっと読む
運営しているクリエイター

記事一覧

小説「遊のガサガサ冒険記」その1

あらすじ  小学4年生で初めていじめを受けた上清水遊は、父に誘われ川にガサガサに行き、外…

4

小説「遊のガサガサ冒険記」その2

 その2、  砂地に身を隠し、両目で周辺に注意を払っている。長く伸びた口の脇に白っぽい髭…

4

小説「遊のガサガサ冒険記」その3

 その3、 「バケツを忘れているぞ、遊。早く持ってきて」 「そうだ、今、取って来るから」 …

8

小説「遊のガサガサ冒険記」その4

 その4、  遊は必死に自転車のペダルを漕ぐ。  長靴履きで、自転車の前かごには折り畳みの…

4

小説「遊のガサガサ冒険記」その5

 その5、  1羽の蝙蝠が緩急をつけ、身を翻しながら、槍のような鍾乳石が連なる薄暗い奥に…

7

小説「遊のガサガサ冒険記」その6

 その6、  渡良瀬川からどれほど離れたろうか。いくつもの山を越え、山の中腹に朱塗りの鳥…

4

小説「遊のガサガサ冒険記」その7

 その7、  五月晴れが続き、長旅を終えたツバメが飛び交い、大七山周辺の雑木の葉は若草色から濃緑色に変わり始めている。  そんな自然の移ろいを感じる余裕もなく、週明けの月曜朝、遊は通い慣れた道を歩きながら、週末3日間、集中豪雨のように身に降りかかった悲喜こもごも、不可思議な体験を振り返っている。  魔の金曜日だった。単身赴任中の父・イリエスと久しぶりに再会できて喜んだのも束の間、父が外国人だったことが知れて、それが原因で直也らに「ガイジン出ていけ」といじめられて落ち込んだ。で

小説「遊のガサガサ冒険記」その8

 その8、  遊の投げた石は水面を3度跳ね、水流に飲み込まれた。 「うまいねえ、得意なんだ…

4

小説「遊のガサガサ冒険記」その9

 その9、  遊の机の上に宅急便が届いている。差出人欄に父・イリエスとある。帰省した際、…

6

小説「遊のガサガサ冒険記」その10

 その10、  遊は河原の石を3個拾い上げ、左手に持った。中州手前に三角錐の形をした大きな…

4

小説「遊のガサガサ冒険記」その11

 その11、  難問だ。どこから、どう手を付けたらいいものか、端緒さえつかめない。阿玖羅命…

6

小説「遊のガサガサ冒険記」その12

 その12、  嫌な予感はしていた。  週明けの月曜日。遊は新たな1週間の始まりに淡い期待を…

7

小説「遊のガサガサ冒険記」その13

 その13、  自制神社1階の大広間、阿玖羅命は遊の書き上げた絶滅動物の調査案に目を通して…

4

小説「遊のガサガサ冒険記」その14

 その14、  重畳たる山並みが果てしなく続く。大空は青く澄み渡り、高見山の尾根筋の樹氷が朝の陽光に煌めいている。身を切るほどの寒風にさらされながら、遊は磨墨の背にしがみつき、眼下の森の中に目を光らせている。 「この辺にいると思うんだけど。あっ、いた、いた」  岩場に疾風の姿が見えた。お座りの姿勢で、両耳をそばだて周囲に注意を払っている。森の中の一瞬の動き、些細な物音、微かな臭いも見逃すまいと、神経を張り詰めているのだろう。上空の磨墨に気付き、物憂げに一瞥した。 「遊、寒いだ