記事一覧
正しい顔は変顔よりよっぽど変だ
「はい、チーズ」
カシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャシャ…
「何枚撮るんだよ!」
ケタケタと腹を抱えては空を仰ぎ、馬鹿みたいに笑う。そんなワンパターンの繰り返しを、飽きることもなく私達は繰り返している。
いつもの校舎やコンビニやファミレスやラウンドワンとは違い、旅先のテンションが後押ししてくれていることももちろんあるが、このメンツなら大抵いつもこんなもの。いつでもどこでも同
身の毛もよだつ怖いエレベーター
嫌いなわけじゃない。むしろ職場では頼りになる存在だ。
難しい仕事にも嫌な顔せず、粛々とこなしていく姿には尊敬の気持ちもある。ただ仕事以外で会話をするような機会はあまりなく、他の社員からもプライベートな話は聞いたことがない。
ビシッと整ったスーツ姿と、物怖じしないポーカーフェイスも相まって、なかなか砕けた感じにはなれない雰囲気があるだけ。
エレベーターの中である。
昼休み明け。いつものようにオフ
ジャングルジム・チャレンジ
息子がジャングルジムから飛び降りたとき、私はその姿を落下点から見上げていた。
空に飛び立とうとする息子の顔は、希望に満ちていた。
彼が何を見ていたのか、それとも何も見てなどいなくて、そのときの衝動のみに突き動かされていたのか。少なくともその目だけはただただ真っ直ぐであった。
彼が着地で倒れ込むまでのその瞬間、世界はスローモーションだった。見上げる私と、おそらくは彼自身もそうだったであろう。私た
夏山雪男がやってくる
教室脇の掲示板。誰の仕業か学級通信とともに、怪しげな鋭い視線をこちらに送る男の姿が貼ってある。選挙ポスターの様相を呈したそれは、オールバックの色黒男。
「亜紀は行く?ふれあいホール」
机の上からむくりと立ち上がる顔に、おかしな線の跡が間抜けについている。
「ああ。あれ、夏山雪男?どうしよっかな。遥香は?」
二人の視線は、オールバックの色黒男と合っていた。
「あたしはね、別に好きじゃないん
口を噤んでグッドラック
「今年も4月になりまして、新しい生活が始まられた方も多いのではないでしょうか」
いつも爽やかな朝のニュース番組から、より一層の晴れ晴れしさを誇張しようとする声が聞こえる。
「春は出会いの季節でもあれば、別れの季節でもあります。今朝も急なニュースが飛び込んできました」
そんな桜色のBGMの中、ただひたすらに続けてきたルーティンをこなし、いつもと同じ背広を着て、いつもと同じ時間に家を出る。
「