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本音は有料
「本音を知るにはお金が必要だよ」
店内の席が近かったからか、さほど大きくもない声が鮮明に聞こえた。
10代くらいの女性の言葉は、目の前の中年男に向けられていた。
「さっき1個食べたじゃない」
頭を掻いた男の前で、女はメニュー表に赤く輝く苺パフェを力強く指さしている。
「でもパパ、話、聞きたいんでしょ?」
男は仕方なく店員を呼んでいる。
それから少しして、女の前には苺パフェ、男の前にはコーヒーのおかわりが届いた。
話の内容までは聞き取れなかった。
盗み聞きはよろしくない。お金が必要なら尚更だ。
それよりむしろ二人の関係性の方が気になって仕方がなかった。
レジに近い席だったこともあり、二人の帰り際に声が聞こえた。
「さっきの話」
「ママには帰ってから話すから」
男がため息をつくと、電子マネーの決済音が明るく鳴った。
「ママはタダでいいなあ」
「ママは家族だもん」
出口の扉を開けながら振り返る女の顔はおどけて見えた。
「じゃあ俺は何だよ」
男がつぶやきながら店を出ると、二人で笑った。
お金も払わず、家族でもない私は、彼女の本音を知ることはない。
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