日記 2022/10/02-08

10/02(日)

本と電子書籍のどっちが好きですか、と訊かれたことがある。
まず書くことで人は思考する。書こうとする時間のなかで考えを巡らせ、ときには想像を働かせたり、人生の経験と知恵から文字を紡ぎ、それを人に伝えるために整理しようと試みる。この行為によって生み出された中から他人に向けて価値あるものが商品として売り出され、僕たちの志向に合うものが買い物かごに入ることを許される。
その意味でこう答えた、"どっちも好きですけど、電子書籍ではコミックしか買ったことないです。"
(もちろんくだらない本は数多あるが、それは僕にとってくだらないだけだ)

10/03(月)

踊る字に冷めた。。

10/04(火)

とにかく経済を回すために企業は余計なものをどれだけ売るかということに専心し、マーケティングを尽くして賃金の上がらない労働者に訴求していく。
労働者は自分のテリトリーをさらに居心地のよいものにしようと決して集めているつもりのないものを買ってはまた似たようなものが欲しくなり気づけば立派な蒐集家。
いまこの世の中は総体として人口が減っていくことを余所目に生活に余計なものがなければいまのこの生活を維持することができなくなっている。

10/05(水)

最近少しばかり課長のSさんに口答えしてしまっている。
他部門を巻き込むような仕事を進めるのに二度手間になるようなアクションを辞さない姿勢や、準備よりもとりあえず動こうとすることで後になって揉める可能性について熟察できていないように見えて、僕は苛立っている。
効率や生産性、標準化から遠いところにいたいのに、組織のなかではそれを推進せざるを得ない。しなければ家に帰れない。きっと彼らは会社にいること自体が苦ではなくなっている。
僕は玄関すら開けたくないのに。僕の仕事へのモチベーションは "さっさとケリをつけて家に戻ってくる" それだけだ。

10/06(木)

終電近くで帰って少し寝て朝一から会議がある状態でいったい日記に何を書くのが自分らしいだろうと考えたら、そんなことを考えていることが本当に自分らしくて途轍もないバカだなぁと思いつつも、やはりそれを書いている今に至っては息が続いているうちにというか、息を整えることができているうちにここを去ることを優先事項として検討しなければならないということと、明日の会議ではまずさっきのデータから何をエビデンスとして採用し、どういう根拠によって検証基準の妥当性を説明しようかということを順繰りに考えている。

10/07(金)

管理職は経営層から尻を叩かれ、僕は管理職から尻を叩かれ、作業者の尻はしかし叩くことが嫌なので彼らがなるべく考えなくてもいいよう作業に落とすことをしなければならないわけだが、今の開発スケジュールのなかで改善活動など計画したところで絵に描いた餅になるのは目に見えているし、そんなモチベーションは消え去った。
要件定義、テスト設計、計画起案、リソース手配、スケジュール管理、試験実施、報告書発行、審査会。
さらにマネジメントもやれと?

10/08(土)

"食卓で待つ手があるから、いそいそと料理に励む。同じような思いをこめて勉強するのだ、人間全体に供するように、全部が愛情の対象であるように。"
というようなことを書いた詩人がいた。そのひとは定年まで家族を給料で支えていたから、組織で働くことを隷属ではなく、愛だと言った。
僕はいま、自分の外にある諸問題について、遠くから願うのではなく、言葉で祈れるひとになりたい。


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