ヒストリカル アーチェリー クラブ ジャパン

ロングボウなど歴史的/伝統的な弓矢をスポーツとして楽しみながら、それに伴う歴史の研究を…

ヒストリカル アーチェリー クラブ ジャパン

ロングボウなど歴史的/伝統的な弓矢をスポーツとして楽しみながら、それに伴う歴史の研究を行うクラブです。 現代スポーツアーチェリーや和弓道の技術、精神、文化、作法に最大級の敬意を払いつつ、両者とは似てるようで異なる「歴史的な古洋弓」について深めてゆきたいと思っています。

最近の記事

東のコンポジットボウと西のセルフボウ - 2

前記事「東のコンポジットボウと西のセルフボウ - 1」 東西の弓の運用の違い ではセルフボウが強い弓で、コンポジットボウは弱かったのでしょうか? そんなことはありません。 先の例に挙げたメアリーローズの弓は、イングランドが御家芸として戦術的に運用していた、特に強力な弓矢部隊が使うヘヴィー ウォーボウで、近代戦で言えば野戦砲の様な存在です。 2〜3千人の長弓兵を横並びにして、クロスボウや騎馬突撃の届かない長距離から仰角で一斉射撃繰り返し、敵部隊が接近するまでの間に損耗させ

    • 東のコンポジットボウと西のセルフボウ - 1

      歴史的な弓には大きく分けて三つの種類があります。 セルフボウとラミネーテッドボウです。 セルフボウとコンポジットボウそれぞれどんな特徴があり、いったいどちらが弓として優れているのでしょう? そもそもセルフボウとコンポジットボウとはどんな違いがあるのでしょうか? 今一つわからない、セルフボウとコンポジットボウの世界をHistorical Archery Club Japan (HACJ) と一緒に旅してみましょう! 削り出しの弓と接着の弓 セルフボウとは一本の木から削り出

      • 第一回ヒストリカル アーチェリー キャンプ

        2021年の6月にHistorical Archery Club Japan (HACJ) のメンバーで山梨県の農場へ行ってキャンプしてきました。 その農場は、知り合いが良く行ってキャンプで使っている場所で、ダメもとで「弓矢のキャンプやっていいか聞いてみて」と、連絡を取ってもらったところ、「動物たちに気をつけてくれれば自由に使って大丈夫!」と快く了承していただき、最近流行っているという「ゆるキャン△」というまんがに便乗して通称「弓キャン」と名付けられたヒストリカル アーチェ

        • 中世のクロスボウ、短さの中に秘められたエネルギー

          まず、この道具は「ボウガン」ではなくクロスボウといいます。 巷で (新聞やニュースでさえ) ボウガンという名称で呼びますが、これは日本で勝手に付けられた呼び名で、ボウガンと言っても海外では通じません! そもそもガンでもありません。 恐らく「株式会社ボウガン」の社名から取られたものかと思われます。 さて、中世ヨーロッパの歴史の中で「クロスボウ」と言えば特に印象的な道具ではないでしょうか? 日本の戦ではクロスボウが使われてこなかったため我々日本人にとってはなんとなく全貌がイメー

          有料
          300

        東のコンポジットボウと西のセルフボウ - 2

          弓の正しい保持は、垂直か傾斜か?

          先日練習の時にメンバーが言いました。 「今さらだけど、弓は垂直に構えたほうがいいのか?それとも傾けたほうが良いか?違いはあるのか?」 どちらだと思いますか? 両者にはどんな違いがあり、どんなメリットがあるのでしょう? 果たして垂直保持と傾斜保持、どちらかに正解はあるのでしょうか? 「自然な」弓の傾斜保持 弓の傾斜保持は伝統弓を扱う人や、弓矢を扱った歴史映画などでよく見かけます。 もしあなたが何の指導も受けずロングボウを渡されて構えた場合、おそらくは自然に弓を傾斜して保

          弓の正しい保持は、垂直か傾斜か?

          知られざる世界の弓の引き方

          現代の競技アーチェリーの経験がある人から見たら「なんだこりゃ変な構え、まちがってない?」と言われてしまいそうな絵ですが、実は歴史的なアーチェリーにおいては間違っていません。 現代の日本において弓を引く方法は大きく分けて和式と洋式の二種類ありますが、弓道でも現代アーチェリーでも定められた引き方以外採用されていないために、日本ではほとんど知られてさえいません。 では他の弓弦の引き方 (ドロウイング) にはどんなものがあるのでしょうか? 古い絵画に残された射手たちの姿をから、

          伝統的な木製の矢の材質

          「木製の矢」とひとくちにいっても、木材の種類は相当な数です。 その中で実際にはどのような木材が使われているのでしょうか? 木の専門家でも弓矢の専門家でも歴史の専門家でもないので、あくまで自分が現時点で知りうる限られた狭い範囲内ではありますが、戦場で使われる矢の材質などにも焦点を当てながらざっと記してみたいとおもいます。 精密競技には天然素材より工業素材現代の競技矢について私が持っている知識はほとんどありませんが、競技アーチェリーに木製の矢が使われることはまずないと思います。

          中世の戦場の弓矢

          戦場ロングボウイングランド伝家の宝刀といえばロングボウですが、実際は戦いにおいてどの様なスペックをもった長距離武器だったのでしょう? イングランド!ロングボウ!といってもおそらく漠然としたものだと思いますので、実際のデータを元に戦場のロングボウすなわち「ウォーボウ」を見てみましょう。 ウォーボウとは呼んで字の如く戦場で使用された弓の事ですが、イングリッシュ ロングボウ、ウェルシュ ロングボウ、ヴァイキング ロングボウなどのロングボウの中でも戦争を目的として使用された、いわゆ

          ヴァイキングの弓 -1

          北の海を越えるゲルマン一派「ヴァイキング時代」と呼ばれる9-11世紀の事。 ヴァイキングは主にスカンジナビアやアイスランドなど、北欧に定住したゲルマン人の一派を指します。 彼らは船を巧みに操りバルト海周辺から東ローマまで、またはイギリスやアイルランドさらにはフランス、果てはアメリカ大陸まで進出し、略奪、交易、入植などをしていました。 彼らは略奪行為を繰り返したことから、キリスト教側から異教徒の野蛮人的イメージを植え付けられ、現代でも一般的には蛮族的印象を持たれていますが、様

          スポーツとしての中世クロスボウ射撃

          中世のクロスボウヒストリカル アーチェリー クラブ ジャパン (HACJ) では中世のクロスボウを使ったスポーツ射撃や、中世クロスボウの歴史的研究も行います。 しかし昨今、現代クロスボウを使った殺傷事件が続き、遂にクロスボウが銃刀法の対象として規制される事となったのを受け、誤解を招かない様しばらくの間中世クロスボウの競技使用を中止しております。 (HACJの中世クロスボウを使ったスポーツ射撃) (HACJのスポーツ射撃で使用するクロスボウ ボルト、競技内容によってヘッド

          スポーツとしての中世クロスボウ射撃

          今日のよき日に

          今日はとても良いことがありました。 三年間仲違いしていた私の友人二人が再び三年前の関係にもどりました。 その二人が楽しそうに歴史の話をするのを聞いてるのが私は大好きです。 よかったよかった。 さて、当クラブは「ヒストリカル ボウ クラブ ジャパン」という名称でしたが、どうも「ボウ」という言葉が日本においてあまりピンとこないという指摘を受けたので、下記の通り名称を変更しました。 「ヒストリカル アーチェリー クラブ ジャパン」 Historical Archrery Clu

          ヒストリカル アーチェリー クラブ ジャパンについて

          歴史的な弓矢の研究とスポーツとしての実践我々のクラブは西洋史における弓矢、特にロングボウやクロスボウなど中世期の古洋弓に焦点を当てた、スポーツ射撃と、歴史研究の両立を目的とした小さなクラブです。 アーチェリーの源流は中世イギリスのロングボウ?現代アーチェリーの源流には間違いなくメディーヴァル ロングボウ (イングリッシュ ロングボウ) があります。 ロングボウはイギリスのお家芸ともいうべき長弓で、中世のイングランドとウェールズのロングボウ部隊が華々しい数々の戦果をあげました

          ヒストリカル アーチェリー クラブ ジャパンについて