中世のクロスボウ、短さの中に秘められたエネルギー
まず、この道具は「ボウガン」ではなくクロスボウといいます。
巷で (新聞やニュースでさえ) ボウガンという名称で呼びますが、これは日本で勝手に付けられた呼び名で、ボウガンと言っても海外では通じません!
そもそもガンでもありません。
恐らく「株式会社ボウガン」の社名から取られたものかと思われます。
さて、中世ヨーロッパの歴史の中で「クロスボウ」と言えば特に印象的な道具ではないでしょうか?
日本の戦ではクロスボウが使われてこなかったため我々日本人にとってはなんとなく全貌がイメージしづらく、実態があまり知られていません。
以前より常識の欠如した一部の人間による現代クロスボウを使った殺傷事件が度々とりあげられ、ついには2021年9月から銃刀法規制の対象となってしまいます。
今後日本においてクロスボウに触れる機会も射撃する機会もほとんど失われます。
そして中世のクロスボウはその全貌が謎につつまれたまま、日の目を見ることもなくなり想像の世界の産物になっていくでしょう。
ですので、中世のクロスボウは実際にはどういう道具だったのか、この記事で実際の性能や用法、その魅力に迫ってみたいと思います。
それではHistorical Archery Club Japan (HACJ) が中世クロスボウの世界にご案内いたします。
-- 目次 --
現代クロスボウ vs 中世クロスボウ
大流行した中世の「禁じられた武器」
クロスボウを使った防衛
進化する中世クロスボウ
弦の引き上げ器具 (スパニング デバイス)
中世クロスボウのペナルティ
中世クロスボウの射程距離
ボルトの重さ > 射程距離
最大射程距離ではなく「有効射程距離」が問題
現代クロスボウと中世クロスボウの考え方の違い
重い発射体を使った破壊力
クロスボウのボルト
パンチと刺突
クロスボウ時代の終焉
現代クロスボウ vs 中世クロスボウ
映画などで銃や現代クロスボウを目にする機会がある一方、中世クロスボウは目にする機会が少なく、映画でもその描写が曖昧で、「禁じられた強力な武器」という言葉だけがクローズアップされています。
まるでライフルの様に発射体が数百メートル飛んで、遠くの敵を仕留める様に想像する方もいるでしょうが、実際は16世紀以降は火薬と銃の台頭でヨーロッパの戦場から姿を消した武器です。
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