映画「海を飛ぶ夢」 (スペイン映画)🇪🇸
アレハンドロ・アメナバル監督の『海を飛ぶ夢』は、尊厳死という問題について焦点をあてた作品です。
意識はある。しかし体は動かない。
そんな状態にあることなど想像も出来ないが、大切なのは、その状態の自分でできうる最大限の楽しみ方を見つけることかもしれません。
同じシチュエーションを描いたのは、クリント・イーストウッドの『ミリオンダラーベイビー』。
ボクシングに己の人生を見出していた彼女が事故によっておった障害。
この状態が彼女にとって負けなのであれば、イーストウッド扮する男がとった手段もやむをえないと感じることができた。
表題作の主人公ラモンにとってこの状態はどうだったんだろう。
いろいろなしがらみがあるだろうし葛藤もあったんだと思う。
けれども彼の人生を、彼の選択を決して敗北だとは思わない。自分の命を自らの意志で、尊厳でたつことは誰にでも出来ることじゃない。その時点で彼は自分の人生をコントロールしきったともいえるのではなかろうか。
その意味では彼もまた勝者なのだ。
この映画のテーマ色は青、それも空のようにすがすがしい色。
空も、海も、彼の周りに存在するすべてのものたちが、自然が、静かな色彩で彼を見守っている。
そして音。
カルロス・ヌニェスの奏でる物悲しいケルト音楽が最後の時を静かに、やさしく彩っている。とても静かな空気があたりを支配する
しかし厳粛な空気よりもどこか温かみを感じてしまう。
人生の薄暮の時期。
そんなややもすると翳りを帯びた風景
そんな風景と
美しい海と、規則正しく打ち寄せる波が絶妙なまでにマッチしていて。
そんなことを思った瞬間、命の尊さにとたんに気づいて衝撃を受けた。
一人の命ではない。
家族や友達や、町や集落など自分に関連するものたちすべてとつながって人は生きている。
生きること。
その意味を深く、深く感じる映画でした。
ぜひご家族でごらんになってみてください。そして命について語り合ってみてください。絶対的な答えは、ないかもしれないけれど、命をテーマに話し合うこと、それ自体が今の世の中、とても大切なことだと思うから。