マガジンのカバー画像

詩と小説

16
ぽつりぽつりと落ちた言葉を集めては歩く。 かたりかたりと睡魔の声で紡がれる物語。
運営しているクリエイター

記事一覧

横断歩道

横断歩道を渡るとき
白線からはみ出してはいけない気がする

ふつう、車道を横断してはいけないから
白線が、横断歩道を横断歩道たらしめている

その上だけが安全な空間であるかのように
錯覚するのだろう

透明な妹と、透明な私

私には透明な妹がいる。
姿は見えないし、何歳なのかも分からない。
ときどき、名前や存在を忘れてしまうことさえある。

ただ確かなのは “ 妹が最近産まれた ” ことだけ。

いつの日にも “ 最近産まれた ” と思っているせいで、今でも妹を0歳だと思ってる。
でも、もしかして、もう幼稚園に上がるくらいにはなったのだろうか?
それともまだ、言葉も覚束無いよちよち歩きの女の子なのだろうか。

他にも一

もっとみる
絵と詩とラ

絵と詩とラ

絵を描くと
眠れなくなって

詩を書くと
眠くて仕方なくなるの

絵は恋を
詩は夢を
きっとどちらも
素敵な贈り物

下書き難し

いつの間にか絵の話ばっかり書いちゃって。
うわー、ってなって下書きにいくつもいくつもnoteを溜めてる。

書いたはいいけれど、何が言いたいのか分からない文章。

それを繰り返していくうちに、書いてるのに投稿しない夜が増えた。

このまま下書きなんて消してしまおうかって。
でも、夜のしじまに生きた自分を捨てるのも、ちょっと勿体ないかも。

何度も自分の文章を読み返し、おかしなところがないか、読み返

もっとみる
『花の夢』

『花の夢』

夢を見た

学校の二階に庭園がある
どこを見ても色とりどりの花 花 花
人が養分となって花が咲けばいいのに
ふわりと香る風は、私の身体を浮かせてはくれない
人が養分となって花が咲けばいいのに
誰にも私の気持ちなんて分からないんだ
普通の人間の気持ちなんて分からないんだ
風に巻かれてようやく、手足が浮いてきた
人が養分となって花が咲けばいいのに
私のおしりはアスファルトから離れない
庭園に来た友人が

もっとみる

詩のような文体で書く日記1

体調を崩して寝込んで、睡眠バランスが崩れちゃった。
最近は毎日、ぼうっと眠れぬまま朝を迎えて、日の光と君の声に安堵して夢に落ちたの。
眠りが浅いから久しぶりにたくさんの夢を見られて、それは幸せな目覚めだった。
夢って映画を観るようで、歌声を聴くようで、小説のページを捲るようで、好き。
でも体に良くないのもわかってて、だからまた、ゼンマイを巻きなおさなきゃいけないね。

─────────────

もっとみる

無題

「 長くなっちゃったから、画像にしてしまおうと思ったのよ。
ロングスクリーンショットって言うやつらしいんだけど。
でもこれダメよ。
一文字一文字がギザギザして、とても人様に見せられたもんじゃないわよ。
こんな粗乱雑な駄文を、誰が最後まで解読できて?
……え?そんな言葉は存在しない?
やだあなた、野暮ね、存在しないものを存在させるのがあたしたちの役割じゃあないの。」

「まぁ、良いのよ、解読できなく

もっとみる
月って。

月って。

月って。月って何?
四角の中に、ある真ん丸?
遠い遠いどこかに、ある真ん丸?

月。月って。何?
どうしていつも、傍にいるの?
ほんとは地球の、どこにもいないの?

月って。月って。何?
誰かのためなんかじゃ、ないはずよ。
闇を照らすためなんかじゃ、ないはずよ。
地球のためなんかじゃ、ないはずよ。
月って私たちと、おなじなはずよ。

だけど、やっぱり。
だから、やっぱり。

月って、いったい何?

水先案内人の彼/彼女

私の頭の中には死神が居る。
別に殺されるわけじゃないんだけど、私は彼/彼女を死神と混同してる。

私は瞼を閉じて、真っ白な世界で死神の隣に立つ。
彼/彼女は私を見て「また来たの」と小さく笑う。
「今日も頑張ったね」と手を差し出す。
その手を取ると、真っ直ぐ伸びた道の左右に夢が浮かぶ。
それは目の前にあるかのように、瞼の裏にあるかのように、ゆらゆらと、私のために、ただ浮かんでいる。

夢をひとつひと

もっとみる
夜

ねむたいね
 そうだろう、それなら、眠ればいいのさ
なんだかまいにち よふかししてるよ
 何もすることは無い癖にね
あしたは はかまが とどくのだよ
かわいい あいぼりーの はかまだ
 楽しみだね、ほら、ゆっくり目を閉じて
 お休み
おやすみ

どうか奪って

私は私の中の情動を知っている。
激しさを知っている。
昔は何も分からなかったけれど、いろんな失敗を経て知ったのだ。
いかに、この心が乱れ騒ぎ攻撃的で激しいシステムのうちにあるかを。

だから常に冷静でいようとする。
辛さにも怒りにも嬉しさにも心を動かさず、ただ平坦な人間でいたいと願う。
しかし、それがどれほど難しいことかも、やはり知っている。

コントロール出来なくなる度、救われたいと空を仰ぐ。

もっとみる

短編小説『 読書家の夫婦 』

ダイニングの椅子で向かい合って小説を読んでいた妻が、パタンという音と共に深いため息をついた。

「ダメね。私、不感症になっちゃったんだわ。」

俺は手元のミステリ小説から目を離さず、ソファの背もたれ越しに生返事をする。
今、ちょうど良いところなんだ。

「ねえ、ちゃんと聞いてよ。私が2年前くらいに読んだ小説、あったじゃない。ほら、“蟻がナントカ”っていう。」

「“蟻が溺れた日”?」

「そう、そ

もっとみる
ゆるしあえる存在

ゆるしあえる存在

ぴたりとくっつく背中があつい。

シングルシーツの海にふたりなんて、嫌になっちゃうくらい狭い。
とてもとても狭い、はずなのに、どうしてかこれ以上の広さは不要な気がしている。

このベッドには、足を伸ばす余裕がある。
このベッドには、腕を広げる余裕もある。

入り組んだり、乗せたり、乗せられたり、物理的には確かに窮屈だけど、そこには心地よさすら感じられた。

本当は、余裕なんてほとんど存在しないのだ

もっとみる

隣のテーブル

「まま ストレートってなに?」
「クッキーのこと?」

「紅茶」

ただそれだけの短い会話。