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エレナ婦人の教え第三話#7 ゆきえの存在

なにもかもダメだ。もう終わりだ――そう想うときがあります。

「何ごとも諦めないこと」そう想って必死に喰らいついてきた。

けれどもそんな努力をよそに、天はあなたを見放す。精魂尽き果てた。運もなくなった――そう想って諦めたそのとき、奇跡は訪れます。


上司からの罵倒がくり返され放心状態になり諦めたとき、救世主は現れました。すべてを手放したことでもうひとつの扉が開いたのです。

小説「エレナ婦人の教え」は実際に起きたことをモチーフに綴った物語。読んだあなたにどんな奇跡をもたらすか。では続けましょう。


これまでのあらすじ~IT企業に出向したヒロは仕事もプライベートも充実した毎日を送っていた。ところがある日のこと。あらたな上司が送り込まれてくる。

その上司は異様に計算・文書ができた。ミスをすればヒステリー気味にキレまくり罵倒――ヒロを執拗な攻撃で追い込んだ。


それまで温和だった職場は一変。皆緊張でピリ付いた。やってもやっても仕事は片づかない。誰も助ける者はいない。絶対絶命のピンチ。そのときだった――

救世主のように目の前に現れたエレナ婦人と孫のカレン。彼女たちとの出逢いを経てヒロは息を吹き返していく。


エレナ邸を訪問し徐々に自分を取り戻していくヒロ。一所懸命やっても報われない無念さを胸に必死に訴えるがサラリとかわされる。さてこれからどうなるか――? 続きをお届けしよう。

〔本小説は実話に基づいた小説(=「実小説」と名づけました。)です。

苦しい状況からでもひと筋の光を信じて前に進めば、必ず道はひらける。このことを教えてくれます。読者のあなたにも少しずつ光が射しこんでくるでしょう。)

「エレナ婦人の教え」とは?
https://note.com/hiroreiko/n/nc1658cc508ac
はじめに(目次)
https://note.com/hiroreiko/n/ndd0344d7de60

<<これまで
第6章 源三の素顔
https://note.com/hiroreiko/n/nedbaba73e51a


第7章 ゆきえの存在

屋久島の生活も半月が過ぎた。ようやくここでの暮らしにも慣れた頃、気になっていたことを思い出した。源三を手伝う女性のことだ。

源三は50代だが、彼女はどう見ても30代前半――。源三より一回り以上、下に観える。和服が似合い、わた雪のように色が白い。ふくよかな体つきで、名前をゆきえといった。

ゆきえは、岩手生まれ。厳しい冬を大家族のもとで暮らしてきた。味噌に漬け込む、にしん作りや田吾汁、天然のブリや取れたて野菜をふんだんに使った鍋料理が得意だ。涼太の話によれば、5年前ここにきて住み着いたらしい。源三を支える内縁の妻、といった感じか。

5年前まで、源三は息子さんのことでひどく荒れていたそうだ。それが、ゆきえがきてから落ち着いた。東北の厳しい冬と大家族の中で鍛えられたせいか、繊細でよく気がつく。ここぞというときは、源三の後ろ盾をする芯の強い女性だった。

すっと伸びた首が美しい。髪をきれいにたばねると、うなじの美しさがひと際目立った。

僕は彼女に、胸につかえていた疑問をぶつけた。

>>>続きはこちら
第8話 出逢い
https://note.com/hiroreiko/n/neb78ab4ef4a2


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